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Episode:アテナ

あー…俺は生まれながら家族を嫌っていた。

夜を迎えるたびに新しい男を連れ込むゴミみてぇな母と暮らしていたが…俺は売り飛ばされたんだよ。

何でも新しい男に会いに行くとかなんとか。

それで俺を少年兵ならぬ少女兵として軍隊に所属させた。

今になって思うが実の娘を売るって中々のカスだよな?

…軍隊では俺の成績は常に優秀。

腐った家庭で育ったお陰で元々の戦闘センスはずば抜けて高かった。

何せ、母のついでに俺を狙ってきた男も居たしな。自衛で訓練したかいがあったぜ。


「はぁっ!!」

「!!」

「なっ!?」


歳が離れて居ようとも戦場で武器を持てば等しい存在となる。

女だろうが子供だろうが老人だろうが男だろうがな。

俺は銃、ナイフ、兵器、更にAGにも乗って戦ってきた。

どんなものでも常に1位。

俺は軍隊最強の頂に常に君臨し続けた。


「…」


そうでもしないと…自分がおかしくなる。

家族もねぇ、仲間も信頼できねぇ。

なら自分が強くなればいい。

そう自分に言い聞かせて、な。


「…」


まぁ…頂点に立ち続けるが故の嫉妬やら妬みの視線や行動などはその時の俺は感じて居たさ。

どうでもよかったが。何せ俺以外の全員は俺の下だ。

最強に立ち向かおうとせず、唯々周りを飛び回る害虫。

…俺の母と同じ腰抜けだ。

俺はそんな腰抜け共に興味はない。

どうせ弱い。

ただ力を誇示すれば俺は俺で有り続けることが出来る。


『自由』


純粋無垢な力を誇示すれば誰にも縛れることもない。

強ければ自由を謳歌することが出来る。

今までカスの母の元で生まれたからこその渇望。

それこそが…昔の俺だ。


◇◇◇


「軍隊に…売られたのか」

「あぁ。急にお前を軍隊に売った、出て行けってな」

「…」


なんてひどい親だと思う。

実の娘を軍隊に売って男に会いに行くなんてな。


「…そんなことがあったのね、サイクロン」

「いつもの名前でいい」

「…アテナ」

「アテナ?」

「あぁ、昔の名前なんて無いに等しいからな。エースに付けられた名前が俺の名前だ」


エース…確かテンペスタ、じゃなくてジュリアスの相棒だよな?


「ということは…ジュリアスたちに雇われたってことか?」

「いや拾われた、だな」

「…何故だ?」

「あ?」

「頂にいたんだろ?」


そうなってくると疑問に思う。

何故、アテナは拾われた?常に軍隊最強に君臨し続けた奴が『拾われる』んだ?

そこはスカウトされたとかそういうのじゃ…。


「春斗君」

「ん?」

「…まだ知らないからそういう疑問を持つのはわかるわ。だからアテナの過去の続きを聞いて?」

「あ、あぁ…すまん、先走ってしまった」

「…別にいい。んじゃ続きか」


◇◇◇


軍隊最強に君臨し続けてから大体10年くらい経った。

もう俺に反抗してくるのは数えられる量しか残らなかった。

お陰様で自由を謳歌できた。

俺を縛るものは何もない、戦場で常勝を重ねたおかげで金もあったしな。

うまい物も食えた。

…だが、面倒なことが起き始めた。


「死ねッ!!」

「…!」


戦場や寮関係なしで俺を殺しに来る奴らがいた。

もう仲間だろうが関係なしで嫉妬のみで動き続けた馬鹿ども。

…上官らしき奴も注意やらなんやらしたが効果はなかったみてぇだしな。


「ふぅ…」


ある日、俺に転機が訪れた。

その日は悪天候。雨が振り続けて周囲の音も聞こえずらい日。

こういう時こそ、狙ってくると思ったが誰一人として俺の事を狙ってこなかった。


(腰抜けが…こういう時を狙わないあたり、戦場を舐めてるな)


雨が降ろうとも関係なしで外で一人で訓練をし続ける。

戦場に天気なんぞ関係ないからな。

そうしてそろそろ切り上げようと思った。

その時。


――ガシャン。


「…ん?」


近くのフェンスから音が聞こえてきた。

こう、何かを叩きつけるような音が。

侵入者の可能性もあったから音が鳴ったほうに行った。

するとそこには…やせ細った女がフェンスに捕まっていた。


「正気かよ…」


フェンスに捕まっていた理由は簡単だ。

その女の後ろには断崖絶壁が広がっていたからな。落ちれば死ぬと馬鹿でもわかるくらいのな。だが、何故ここに女がいるのかがよく分からなかった。


「おい、女。ここは軍事基地だ、悪いことは言わねぇ今すぐにここから消えろ」

「え…あ…」

「あ…?」


初めてそこで女の顔が見えた。

…このやせ細った女、それは俺の母だった。

あんなセレブに着飾っていたカスが、本当にカスになっていた。


「あ、あなた…アリス?アリスなのね…!?」

「…誰だよそりゃ、そんな名前知らねぇ」

「う、うそよ…ね、ねぇアリス?また私と暮らさない?」

「くだらねぇ、俺を捨てたお前が俺にそんなことを言うなんてな。男はどうした?またいつも通り俺を捨てて男と過ごせばいいじゃねぇか」

「そ、そんなこと言わないでよ…」

「俺は事実を述べているだけだ、さっさと失せろ」


俺は、俺を捨てた母と同じように俺も母を捨てた。

だが…。


――…ゥゥゥゥッ!!


「…ん?」


それと同時に遠くから光と轟音が俺の方に向かって来ていた。


「あれは…!?」


そして気が付いた。


――ブゥゥゥゥンッ!!


「死ねぇぇぇぇぇ!!!」

「馬鹿かアイツら!!」


俺を殺そうとしていた連中が装甲車に乗り、俺の方に突撃してきた。

俺を轢く気だろうとすぐさま理解し、よけようとしたが…俺の後ろにはカスがいた。


(…避ければいい。そうだ、捨てたんだコイツは俺を)


足が動かなくなった。

信頼できる仲間も居なければ、家族も居ない。

それが俺のはずなのに…。


(…)


そうして俺はおかしくなっちまった。

血迷った俺はフェンスを素手で引き裂いて、フェンスに捕まっていた女の胸倉を掴み、遠くに投げた。


「アリス…!?」

「二度と俺に関わるな」


と言い放った瞬間。


――ガッシャァンッ!!!


装甲車とフェンスに挟まれたが、フェンスを突き破り俺は…断崖絶壁の下へと落ちていった。


(何やってんだよ俺は…)


せっかくの自由を手に入れたのに、自らの意思で捨てた。

本当に馬鹿げた行動をした。

…だが諦められなかった、自由を。


「…ッ!!」


俺は落下していく中、何とかして命をつなぎとめるために折れて居なかった右手でナイフを取り出し、崖に突き刺した。

もちろんナイフにヒビが入っていき、ナイフも壊れかけたが勢いが少し収まった。


「…ぜってぇ…生き残る…!!」


足も崖につけ、勢いを止めていく…。

やがて下への勢いは収まっていき、俺は木に落ちた。


「がっ…ぐ…」


枝や葉っぱのお陰で勢いはある程度おさまり地面についた。

落下による怪我はなし、だが…轢かれたせいで骨は折れた。

まともに動けないまま、悪天候にさらされこのまま死ぬと思っていたが…。


「…あら?」

「どうしたのジュリア…って大丈夫!?」


俺は…二人の天使に拾われた。


◇◇◇


「俺の左側の肉体に傷があるだろ?」

「あ、あぁ…それが轢かれた時の?」

「そうだ。俺が裏切られたっていう証拠…そしてジュリアスとエースに拾われたっていう証だ」


何も…言えなかった。


「…」

「何だ?反応に困るのか?」

「…そりゃそうだろう」

「お前も裏切られれば分かる。まぁ…今のお前を裏切るバカはいないだろうが」

「そうなのか?」

「だってさ、ダーリンは世界を救ったんだよ?そんな人を裏切るなんてしたら、その行為こそ世界を敵に回すってことだしね」

「俺の存在定義について討論したくなったんだが」

「知るか」

「ダーリンはダーリンだよ?」

「…無かったことにしてくれ」


タービュランス内の討論はダメだ。

…する意味がなさすぎる。


「そういえば、アテナの元の名前は『アリス』って言うんだな」

「あぁ、俺に似合わねぇかわいらしい名前だろ?」

「可愛らしいかどうかは俺に判断できない、どちらかというとジュリアスが判断すべきじゃないか?」

「あら、私?」

「だって俺はアテナの事をそこまで知らないけど、タービュランスのジュリアスなら分かるだろ?」

「気が利く一言ね。流石、9人の女性を侍らせるだけはあるわ」

「世話はされてねぇよ…」

「実際アテナは可愛らしいわ、私の服装をみて顔を赤らめたりするし」

「なっ!?」

「だ、そうだが?」

「…けっ!」

「素直じゃないのね」


ラブラブだな。

少しほほえましいと思える。


「それで何故『アテナ』と?」

「…アリスとしての俺の最後は母をかばった、捨てるはずのな」


表情を無にしてアテナは語る。


「だが、その行動をエースは称えてくれた。それで『アリス』という名を捨てたいと願ったとき、名付けられた…『アテナ』ってな」

「…守ったからか?」

「そういえばそういう風にエースが言ってたな」


守護者のような象徴を持つ女神のアテナ。

それゆえの名付けなのだろうか…。

どちらにせよ、ジュリアスとエースのお陰でアテナは救われた。

その恩と気持ちの為に動いてきたのかもなと心の中でアテナの事を思う。


「ま、それで拾ってもらった恩と命の恩人の為に一緒に向かうことになった…俺の過去はこんな感じだ」

「なるほど、ありがとう話してくれて」

「まぁ…これで借りは返したからな?」

「借り?」

「あー…俺たちのストリームの仇討ちの借りだよ、お前がいなければ出来なかったかもしれねぇから」

「そんな気にしなくても…」

「俺は元とは言え軍人だぞ?借りっぱなしは嫌なんだよ」

「…そうか」


このアテナの発言にちょっとアナスタシアを思い出す。

元軍人という点で過去が少し似ているところはあるが、根本はかなり違う。

家族がいない。家族を嫌う。

仲間を失った。仲間を信用しない。

努力で強くなった。自由を手に入れるために強くなった。

そして誰かに救われた。

アナスタシアは俺…だよな?

アテナはジュリアスに。

…二人とも居場所を手に入れることが出来ている。

アテナはジュリアスやハリケーンと一緒に過ごしているし、信頼しているって事だろう。

アナスタシアも…笑える場所に来れたからな。


◆◆◆


「…っくしゅん!」

「アナスタシア?風邪でも引いたの?」

「い、いや…急にくしゃみが」

「そういえば…急にくしゃみが出ると誰かが噂してるっていうのがある…」

「あぁ、あるな。もしかしたら誰かがアナスタシアの噂をしているかもな」

「春斗か?」

「そ、即答ですのね…」

「あぁ、いつか私の婿として迎え入れるからな」

「多分それはこの場にいる全員が思っている事だと思うわよ?」

「分かっている…尚更負けるわけにはいかない」


◆◆◆


「…!?」

「ダーリン、どうしたの?」

「い、いや急に寒気が…」

「ふーん?」


な、なんか急に背中がぞわっとしたんだが!?

気のせい…だよな?


「ねぇねぇダーリン」

「ダーリンじゃないが、何だ?」

「私の過去も知りたいでしょ?」

「まぁ…」

「む、なんか興味無さそうな反応しないでよ」

「そういうわけじゃないけど…」

「なら…一瞬でダーリンが話に興味を示すようにしてあげる♡」


一瞬、何を言っているのか理解できなかったが。

俺はハリケーンが話した名前に驚きを隠せなかった。


「私の名前はハリケーンじゃなくて…『イル』」





「『イル・アレクサンダー』」

「――は?」

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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