表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄も存外悪くない?  作者: 阜歩 茲子
第一章 地獄取扱説明書
4/18

第四話 神話の御業

どうも、阜歩フブ 茲子コココと申します。

「―その“ヤツ”とは…私のことか?」 


 紅く眼を光らせる“ヤツ”が、アルバドとカリストの会話に割って入ってきた。

 アルバドは急いで鞘から刀を抜き、

「臨戦態勢!『迅捷(ターボ)』!!」

 “迅捷(ターボ)”。効果が切れると同時に大きなデバフを食らう代わりに、全能力が爆発的に上がる短期決戦向けの芸術(テック)獄門会(ヘル・バース)最高峰(グランド)階級に達すると、全員に渡される共有型のものだ。

「貴様は弱いのだ。“私が見える者”としては弱すぎる。」

「弱くても可能な限り抗うのが、俺の信じる道だ。“諦め”なんて言葉、俺の辞書にはない!!」

「相当ポンコツな辞書なようだな。それよりも興味があるのは貴様だ、カリスト!!!」

 アルバドを放ってカリストのほうへ向かう。

「カリストの前に俺をやれ!彼は未成熟だ。もうしばらく日を待てば、君の興味ももっと強くなるだろう。」

「……目障りだな。」

 紅く光る眼を、蔑むように細めてボソッと放った言葉だ。

「言っただろう。貴様には心底興味が無い。私の視界から消え失せろ。」

「俺は…お前を殺すまでここを退かない…!『(スプr)…」

 アクトスは腕を振り上げた。

(……!!!)

 カリストはアルバドの手を握って引き付けた。

「『界刈(アイギス)』」

 次の瞬間、アルバドの後ろにあった建物が横に両断され、倒壊した。

「……危なかった…。助かった、カリスト。本当に感謝する。」

「つまらん命を…。身を挺してまで守るような命では無い。」

「それを決めるのは僕だ。決定権は行動権を持つ者にある…!」

 ちょっと名言くさく言ってしまい、気恥ずかしさが心に充満する。

「お望み通り、僕が立ってやる。」

 カリストはゆっくりと拳を強く握り、口を開く。

「『風華流転(アネモス・フロス)』!!!」

 カリストは全身に風を纏う。足に纏い、俊敏になる。拳に纏い、繰り出す速度が上がる。

 カリストの周囲の風を操作し、自身にとって追い風、相手にとっては向かい風になるように。

「やはり……弌型(トップ)だな!!貴様が持つ藝術(テクニケ)は!!!!」

 アクトスは最高に口角が上がり、これを愉しんでいる様子。一方カリストは口角が下がり、警戒と恐怖で満ちている様子。

「ハァァァアアア!!!」

 先に仕掛けたのはカリスト。俊敏な足と俊敏な拳で一方的に殴り続ける。

「フッ、まだまだ未熟だ。あの弱き者の言う通り…。」

 僅かな笑みを浮かべた。その間も夢中に、ひっきりなしに殴り続けるカリスト。

「ここで殺せば勿体無い。『界転(ヴォスラ)』」

 カリストの拳が空振った。そこにはもう、アクトスはいない。逃げられたのだ。瞬間転移をして逃げられた。

「……逃げられた!」

「これは知らなかったから対策のしようがある。幸いはこちらにはほぼ怪我がないしな。」

 思えば向こうからの攻撃は“界刈(アイギス)”の一発のみ。それも完全に避けたから、転んだ時の擦り傷程度しか被っていない。

「ヤツの“界刈(アイギス)“は残念ながら対策のしようがない。空間自体を斬る御業で、どうガードしようとも断たれるからだ。」

(タスケゴエ!何かしらのガードには対応してるんじゃないか!?)

《アクトスの藝術(テクニケ)は空間属性です。そして、ガードの芸術(テック)もランク分けされて複数ありますが、その全てがの物理守(アンチロック)か、特殊守(マジックミラー)に分けられます。そして、その二種とも空間属性には何にも為しません。空間属性の御業には……》

「避けるが最適解ですか…。」

「そうだ。」

 結論だけ持っていかれて、タスケゴエがやや不服そうだ。

「俺はアイツに手も足も出ない。お前の協力が必要だ。良かったら、(タッグ)を組まないか?」

 2人以上のグループで相互に協力することを保証する条約のようなもの。協会(ギルド)の最小単位でもある(タッグ)

 獄門会(ヘル・バース)の言わば“最強”に(タッグ)を誘われたカリストは、もちろん困惑。だが、

藝術(テクニケ)がイマイチってことは、実力だけで勝ち上がってきた猛者…。基礎戦闘なら圧倒的。そんな人に直接指導していただけるなら…!)

「よ、喜んで!!!」

《シルシの発行が完了したようです。獄門会(ヘル・バース)本部へ赴いてください。》

 あ、忘れてた。


 獄門会(ヘル・バース)に着いた。

「すみませーん。」

「あ!やっと来た〜♪」

 290のおばあさんにしっかり覚えられていた。ちょっと嫌な気分だ。

「シルシはこちらよ♪」

 免許証やPASM○のような小さめのカードだった。身分証明書にしてはありきたりすぎるサイズ感と大きさだ。

《シルシを私が記憶し、失くしても複製発行が可能です。》

 なんというか、タスケゴエさんめっちゃ有能だね。

(じゃあ…記憶しておいて。)

《了解です。現在タスケゴエSSD 4TBのうち、2.86TB使用中です。》

 まぁ損は無いし…―めっちゃ容量食ってる!?


 

 満月が雲におおわれ、陰る。

 地獄の櫻庭世界(サクラバ)方面からの入口から、乾いた笑い声が聞こえる。

「はい、また1人。どんどん情報が集まるね。」

 ザッ

「調子はどうだ?ガグル・エバー。」

 見た目年齢30代前半の気さくなお兄さん(おじさん)の前に現れたのは、

「お久だね、アクトス。今で合計964人かな。シルシによる個人情報の収集は。」

「そうか。1000人に達したらまた弋型藝術(アルティ・テクニケ)扶ケ聲(タスケゴエ)』で伝えてくれ。」

「もちろんさ。君との(タッグ)もあるし、破れないよ。」

タスケゴエの正体、謀略とは…!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いい感じにバトルを書くな [気になる点] 俺よりもバトルを上手く書くな [一言] じごわるを読んでる読者さん。 「憧れの先輩は吸血鬼」と「女神さま!転生特典くらいはください!」もお願いしま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ