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地獄も存外悪くない?  作者: 阜歩 茲子
第四章 日本自治区篇
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第十八話 こんな青春、

どうも、阜歩フブ 茲子コココと申します。

 辺りは火の海と化している。建物なんてものは原型を留めず、燃え尽きて黒ずんだ木片がそこら中に散らばっている。まさに惨状というに相応しい。

 その中でカリストと若い男が対峙している。カリストは刀を構え、男は手をかざしながらカリストを見下ろす。

「その程度か、小僧!!!」

 額から流れる血と汗が混じった液体を腕で拭い、彼へ叫ぶ。

「まだまだ…俺には守るべきものがある…!!!」

 カリストの傍らにはもう虫の息のアラードが倒れている。

「いい心意気だ。だが、もうまともに動けないだろう。」

 身体の節々から血を流しているカリストには、とても動けるようには見えなかった。


 ――見えなかった、だけである。


 大きく息を吸い、唱える。


「『■』」


――――――――


 路地裏に猫が通る。

「意気揚々と翡翠(カワセミ)討伐を掲げたけど、どこに本部があるかも知らねぇぞ?」

「まぁ、そこら辺は地元の人の聞き込みで…。」

 割と無策に始まった翡翠(カワセミ)討伐物語。

「まー今は情報集めがてら、日本を観光しよー!!!」

 アラードは中々お気楽なようだ。

 案内されたため今は京都にいる。多くの国宝がある京都、カリストはそこを片っ端から案内してやるつもりだ。

「さ、行くぞ。アラード!」

「うん!」


 それから二人は清水の舞台から飛び降りたり、伏見稲荷大社へ鳥居を一基贈ったり、八ツ橋をたくさん食べたり。ひたすらに京都を楽しんでいた。

 旅館へ着いた。和食の食事を済ませ、部屋でくつろいでいる。

「日本、綺麗だね。そんなに綺麗な場所から、こんな修羅溢れる地獄まで突き落とされたんだ…。」

「まぁでも、別に悪かったなんて思ってないよ。毎日が楽しいさ、RPGの異世界に飛ばされたみたいな感覚だよ。」

「あーるぴーじー?」

「ときにはスキルを使って悪と戦って、ときには親しい人が殺されて、ときにはずっと一緒にいる(ひと)と出会って。清水の舞台から飛び降りたことなんて櫻庭世界(サクラバ)でも無かったしさ。」

 思いふけり、顔も赤くなってきたところだ。

「さ! 日本にはお風呂ってのがあるんだよ! 行こ!!」

「また新しい日本だ!」

 強引に話を断ち、話題転換。アラードは興味津々に食いつく。

 …だけど、風呂?


 ―大浴場前。

「さ、流石にまずいって!!!」

 顔を真赤にして小さな声で叫んでいる。悲鳴に近い。

「何が? お風呂なんて知らないから教えてよ! 一緒にいなきゃ教えられないでしょ??」

 まぁ、概ね予想通りに動いていただいて…。赤らめた顔を落ち着かせるために話題を変えたのに、変えた先ではさらに爆発させる原因を作ってしまったようですね。

「……じゃあ、大浴場じゃなくてさ…。」


 この旅館には各部屋に風呂が完備されています。アラードがこの態度であれば。当然混浴コースでしょう。

「それじゃあ、[よくわかる!はじめてのお風呂講座!!]を始めます。」

「初心者向け情報誌のタイトルだ! わくわく。」

「まず始めに、服を全て脱いでくださ―」

 以降、全カットです。

 はい。


 風呂場から二人、浴衣姿で出てきた。

「お風呂っていいね! 開放感もあるし!!」

「…そ、そうだな…。」

 今にも噴火しそうな真っ赤な顔をどうしましょうか。

「もう遅いし、寝ようか。」

「うん! …ベッドは?」

「これも日本、布団!! [よくわかる!はじめてのお布団講座!]をはじm」

 この夜、結局寝たのは深夜の三時だった。


 ―回想。

 この一日。京都旅行と遅寝旅館、まるで修学旅行をしたかのような青春だった。中学時代、不登校だったから修学旅行も行かなかったんだ。

「お、ケン! コース決め進めようぜ!1」

「あ、ショウ…僕全然学校来てないのに…いいの? そんな図々しく修学旅行だけ行くなんて…。」

「ハッ、何言ってんだよ。旅行なんて一人でも多いほうが楽しいだろ??」

 その笑顔に何度救われたことか。だけど、そんな笑顔をしてくれたのはショウだけだった。他のクラスメイト、班員でさえも僕を見向きもしなかった。

 聞こえたんだ。“なんでケンって、修学旅行だけ行く気なの?”って。その言葉は、ショウの笑顔以上に重く僕の背中にのしかかり、僕をぺしゃんこに潰した。

 結局、修学旅行の当日は不登校として休んだ。中学校に思い出はない。僕は中卒として引きこもりになった。いよいよ高校に進学したショウとも疎遠となり、僕の仲間は母親以外にはいなくなった。


 引きこもりになってから半年が経ち、母親の口も利かなくなってしまった。その夜、夜風に当たろうと河川敷を歩いていた。

(もう、死のうかな。お母さんも食費が浮いて楽になるよね。)

「河童の川流れ…僕は河童じゃないから、ただの溺れてる人だな。故意だけどさ。」

 最期にそんなことを口走っていると、若めのスーツ男性が話しかけてきた。

「ねぇ君、死のうとしてない?」

 まさに図星としか言えない言葉が投げられた。

「まだ君も若いでしょ? 死んじゃったら地獄行きが確定だよ…!」

 そう言われて日和ってしまい、もう少し歩き続けることにした。

 そこで現れたのが、絵に描いたような馬鹿酔い。あとはもうご存知の通り、地獄に堕とされた。


 そして、今に至る。

(こんな青春、櫻庭世界(向こう)でもやりたかったなぁ。どこで道を間違えて、不登校になっちゃったんんだろうな。)

 少しずつ意識が遠のいていく。

(でも、櫻庭世界(向こう)でできなかったこと、やれて良かったな。やっぱり、地獄も存外悪くない?)


 ―そして、眠りにつく。

書くのが下手な青春回でした。

なかなか、楽しかったです。

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