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地獄も存外悪くない?  作者: 阜歩 茲子
第四章 日本自治区篇
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第十七話 翡翠

どうも、阜歩フブ 茲子コココと申します。

 擬似的に“日本”に訪れたカリストたち。その裏、国家中枢機関“翡翠(カワセミ)”ではひとつの計画が始動していた。

 計画を遂行するため、カリストたちの行動を常に監視している。


 至って普通に、案内人に従って歩いて移動しているカリスト。屋根の上や建物の隙間各所から、まるで忍者のように気配を消した“翡翠(カワセミ)”がいた。

「……『残白(リヴァ)』――。」

 カリストが口を開き、刀に手を伸ばし、コンマ数秒の静寂。ひとつ瞬きをしている隙に、辺り一帯、赤い液体が吹き出していた。屋根の上、建物の隙間各所。白く塗装された壁にも赤い飛沫が飛びつき、“惨状”と言って差し支えない一面が広がっていた。

「…な、何をなさっておられるのですか!?!?」

 案内人はそれはそれは驚いた様子。当たり前の極みではあるが。

「……アラード、行くぞ。」

「え、ちょっ、カリストくん!? 一体全体どういうこと!?」

「話は後だ!! 兎にも角にもこの案内人は信用できん。」

 刀を仕舞い、二人は一目散に走り去っていった。


 人目のつかない漁港まで走ってきた。アラードはひどく息切れしている。カリストはまったくその様子はないが…。

「疲れない呼吸ってもんがあるんだよ。」

「そんなことは後でいいから!! なんで…周りの人たちを殺したの?」

「村を出る直前に図書館に寄っただろ? そこで周辺地図を買ったんだ。平原の広さには絶望したが、何よりこの日本があったことに衝撃を受けた。」

 出版社以外のどこからも校閲を受けていないその本の年表には、こう書いてあった。


[七二〇年、日本政府は一般組織“翡翠(カワセミ)”に完全に乗っ取られ、体を成していない。

 “翡翠カワセミ”による独裁で国家は崩壊しており、訪日人には常に監視が付きまとう。

 十分な実力を観測されれば戦力として軍隊に入隊させられる。

 その殆んどが特攻隊として敵軍に突入し、その命を全うする。

 実力が無ければ捕らえられ、奴隷として地下労働に勤しまさる。

 その殆んどが劣悪な環境と栄養失調により数日で命を落とす。

 国民すらも奴隷として地下労働施設に入った記録が残っている。

 そして、出てきた記録は一切残っていない。]


「僕らはあいつらに目をつけられている時点で死んだも同然なんだよ。」

「…知らなかった。というか!そんな危険な場所になんで来たの!?」

 本で事前に内政事情を知っていたカリストがここに来た理由。日本を懐かしみたかった。もちろんそれ以外にもある。

「まぁ…お陰で助かった?けど…。早くこんなところ出ようよ!」

「…でも、最短50kmは泳がなきゃいけなi…」

「よっしゃ翡翠(カワセミ)ぶっ倒そ!」

 そんなお気楽で始まった“翡翠(カワセミ)”の討伐物語です。


―――――――

 国家中枢機関“翡翠(カワセミ)”の中央御殿。その最奥に位置する最高司令官執務室。

「あのさァ、全員殺されるとかどういうこと?? 少し手練れと聞いたから多めに(コア)渡したのにさ。1000はいたぜ?」

 先ほどの案内人に圧倒の圧をかける。

「申し訳ございません…。予想を超えた桁違いの手練れでございました。すべては私めの誤算でございます。いかなる処分も覚悟しております…!」

「はぁ、いいよもう。東大首席だからってお前に期待してた俺が馬鹿だったよ!」

「……処分は…?」

「去れ。俺の前に二度と姿を見せるな。」

(―…ゆ、許された…! もうこんなクソ最高司令官の前でペコペコしなくて済むぜ!!!)


「し、失礼します…!!」

 僅かに晴れた表情を零した。彼が部屋を出る一歩を踏み出すと同時に、―――

「―『(ケン)』。」

 刹那。腹に大きな正円の風穴を開け、血を吹き出し、横たわっていた。

「思っても、表に出してはいけないこともあるんだよ。」

 最高司令官―…“ヴルク”は彼の額をツンッと突いて、抉るとともに蹴って窓から外に放り出した。

「はーやべやべ、廊下の壁まで穴空いたじゃんか。期待はしないが吉か。」

 

 窓から外をぼーっと眺めている。

 

 ―漁港の方へ目を移すと、ハッと笑みを浮かべた。

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