第十五話 輝く三日月の下
どうも、阜歩 茲子と申します。
いまだかつて無い急展開に、二人は油断を崩せずにいる。生まれたばかりのような赤子のようなか弱さ。数百年の鍛錬を積み、その道の極地に至ったような威圧感・存在感。常時漏れ出るとてつもない覇気は、そんな矛盾を堂々と吐き出している。
「今まで何してたか知らねェが、俺との“一対一”を楽しもうやァ!!」
(コイツ…俺より相当に格上だ…。流石に一対一じゃ無理だ。)
一見はただの人間世界でいう10歳程度の少年の様相。だが、漏れ出る覇気がその姿をすべて払拭するほどだ。
「まァ、一対一に邪魔なオマエには、さっさと死んでもらおうか。」
一瞬考えているうちに、覇気を纏う“ジーヴァ”は剣を手に持ち、アラードの腹を貫いていた。
「…ガッッッ…!!!」
「あ、アラード!!!!!」
「大事な女だろう?これで、オマエも120%の力を出せるだろう!!!」
紅葉しているザーファの横。今のカリストの脳内の十割、すべてをアラードの死が蝕み、その他有象無象については思考停止している。膝から崩れ落ち、ついには倒れ込んだ。
「…これでは10%にも満たない力だな。期待ハズレだ。」
依然として水が溢れ出る闔の中。過呼吸のカリストの肺に水が流れ込み、それでもむせすらせずにヒトツが蝕み続けている。
「ハッ、おもんないわ。ようやく生を受けたってのに、じゃあなオマエラ。もっとメンタル鍛えて強くなってから会おう。」
シーヴァは闔の壁を突き破って闇の中に消えていった。その穴から続々と崩壊していき、闔は消滅した。
雲が流れていき、輝く三日月が顔を出した。
ようやく脳のリソースを他のことに割けるようになった。何をもいとわずいち早くアラードのもとへ駆け寄った。
「アラード!!返事をしてくれ!!!」
腹から多量の出血。加えて、浪で受けた傷だろうか。身体中の節々からも血が出ている。このまましばらく経てば失血死するだろう。
依然、返事はないまま、肺の水も含んで疲れ果てたカリストは涙を零しながら眠ってしまった。
〚ジーヴァと戦って生きたのか。君たちはまだまだ強くなれるだろう。〛
複数の声が重なり、知らない声がカリストの鼓膜を振動させていた。
それが響いてから一呼吸置いてから目を開けると、アラードが目の前にしゃがんでいた。寝起きを待っていたように、ワクワクした顔でいた。
「…ん、アラード…無事だったか…?」
「うん、ほんと、さっきまでは死んでたと思うけどね…。でも急に元気になったよ!」
さっきの声の主のお陰だろうか。そんなことを考えながらも「そっか。」とだけ、笑顔で返し、烏巣山を下山していった。
村の医療場で治療を受けてから、民泊で休憩をとる。烏巣山の討伐依頼は完遂し、報告書も本部に送った。この村にはまだまだ討伐依頼がある。着々とこなしながら、二人で日々を過ごしていくのだ。
そして、新天地へ―。
これにて烏巣山篇は終結となります。
次の章を楽しみのお待ちください!




