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地獄も存外悪くない?  作者: 阜歩 茲子
第三章 烏巣山篇
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第十四話 着ぐるみ

どうも、阜歩フブ 茲子コココと申します。

 無限の浪がカリストたちを襲う(ゲート)。シーファは浪の操作次第では即座にカリストたちを殺せる状態にある。

 まさに、「絶体絶命」そのものである。


「くっ、氷で防ごうにも勢いですぐに割られる…!」

「私も同じ…。」

「諦めて僕の軍門に下るのなら、命は救ってやろう。否むのならば……殺す。」

 命と平和を天秤にかけた取引。「是」と答えれば(ゲート)はすぐに解かれ、シーファの配下となる。逆に「否」と答えれば…浪に喰われて死ぬ。

「……答えよう。」

「返事が早くて助かるな。答えはもちろん、ひとつだろう?」

 まさか自ら死にに行くわけがない。確実に「是」と答えられる気でいた。しかし、現実は正反対だった。


「答えは否。NOだ。お前の軍門に下るつもりは一切無い。」


「そうか、非常に残念だ。だが、僕の敵だと明々白々になった今、殺さぬ理由は無い。」

「上等だ。僕たち…いや、俺たちが先に殺すからな。」

 シーファは応答することなく、本気で“獲物を狩る眼”になった。呼吸も深く、静まっている。

 両手を振りかぶり、そして―


「来た!!!」

 数百メートル離れた場所から、高さも数十メートルに及ぶ高浪を広範囲にぶつけてきた。

「思った以上に速いわね。だけど……」

 藝術(テクニケ)で底上げされた二人の身体能力で見事に避けきった。

「私から行くよ!!」

 持っている霜太刀(シモダチ)で斬りかかる。だが、数百メートル先の標的に辿り着く前に、凝縮された浪に横から殴られ、(ゲート)の端にまで吹き飛ばされてしまった。

「やはり、離れていたほうが防御においてはいいな。」

 そのとき、右後ろの方向からとてつもない殺気を感じた。

「…振り返っているところ悪いけど、あとは奈落でやってな。」

 捨て台詞を吐き、精一杯溜めた一撃を注ぎ込む。


「『嵐旋(ランジン)』―――」


 その一撃はシーファの腹を貫通し、相応の血を吹き出して倒れ込んだ。

「…案外、(ゲート)のアドバンテージを使ってこなかったな。あ、アラードを助けなきゃ…!」

 アラードのもとへ向かいながら、カリストは違和感を覚えていた。

(シーファは微動だにしないけど…消えない。(ゲート)も崩壊しない。なぜだ…?)


 ―後ろに口角を上げた“バケモノ”の気配を感じ、背筋が凍った。まるで生まれたばかりの赤子のようにか弱く感じる。ただ、圧倒的な存在感・威圧感。一切をセーブせずに放出している。意味不明に言葉で表せば、“世界最弱の強者(つわもの)”だろうか。そんな矛盾を背中全体で感じている。

「…ハァア、気付いたのか。背中にセンサーでも付いてんのかなァ。」

 振り返ってみると、まるで気ぐるみのようにシーファの肌を脱いでいる奇っ怪なバケモノがいた。

「まだ…終わってなかったのか。」

「終わってないどころか、始まってすらいないだろう。俺ァまだ生まれたばっかだァ。」

 つまり、先ほどまで闘っていたのは気ぐるみを着たこのバケモノではなく、正真正銘シーファであったということだ。


―――――――――


 そんな(ゲート)の直上。アクトスともう一人が周辺を空中散歩していた。

「うん、しっかりジーヴァが生まれてくれたね。ねぇ、ナムサくん。」

「ああ、俺が作った着ぐるみがバグるわけないだろ?」

「それもそっか、君はその道の“プロ”だもんね。流石にこれでアイツらは潰せるだろう。」

「ジーヴァくんは自信作だからなぁ、壊されたらちょっと悲しい。まぁ、浪もあるし無理でしょうな。」

 そんな談笑を交わした後、次の標的へと去っていった。

ナムサ…どこかで聞いたことがするね!!!

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