第十四話 着ぐるみ
どうも、阜歩 茲子と申します。
無限の浪がカリストたちを襲う闔。シーファは浪の操作次第では即座にカリストたちを殺せる状態にある。
まさに、「絶体絶命」そのものである。
「くっ、氷で防ごうにも勢いですぐに割られる…!」
「私も同じ…。」
「諦めて僕の軍門に下るのなら、命は救ってやろう。否むのならば……殺す。」
命と平和を天秤にかけた取引。「是」と答えれば闔はすぐに解かれ、シーファの配下となる。逆に「否」と答えれば…浪に喰われて死ぬ。
「……答えよう。」
「返事が早くて助かるな。答えはもちろん、ひとつだろう?」
まさか自ら死にに行くわけがない。確実に「是」と答えられる気でいた。しかし、現実は正反対だった。
「答えは否。NOだ。お前の軍門に下るつもりは一切無い。」
「そうか、非常に残念だ。だが、僕の敵だと明々白々になった今、殺さぬ理由は無い。」
「上等だ。僕たち…いや、俺たちが先に殺すからな。」
シーファは応答することなく、本気で“獲物を狩る眼”になった。呼吸も深く、静まっている。
両手を振りかぶり、そして―
「来た!!!」
数百メートル離れた場所から、高さも数十メートルに及ぶ高浪を広範囲にぶつけてきた。
「思った以上に速いわね。だけど……」
藝術で底上げされた二人の身体能力で見事に避けきった。
「私から行くよ!!」
持っている霜太刀で斬りかかる。だが、数百メートル先の標的に辿り着く前に、凝縮された浪に横から殴られ、闔の端にまで吹き飛ばされてしまった。
「やはり、離れていたほうが防御においてはいいな。」
そのとき、右後ろの方向からとてつもない殺気を感じた。
「…振り返っているところ悪いけど、あとは奈落でやってな。」
捨て台詞を吐き、精一杯溜めた一撃を注ぎ込む。
「『嵐旋』―――」
その一撃はシーファの腹を貫通し、相応の血を吹き出して倒れ込んだ。
「…案外、闔のアドバンテージを使ってこなかったな。あ、アラードを助けなきゃ…!」
アラードのもとへ向かいながら、カリストは違和感を覚えていた。
(シーファは微動だにしないけど…消えない。闔も崩壊しない。なぜだ…?)
―後ろに口角を上げた“バケモノ”の気配を感じ、背筋が凍った。まるで生まれたばかりの赤子のようにか弱く感じる。ただ、圧倒的な存在感・威圧感。一切をセーブせずに放出している。意味不明に言葉で表せば、“世界最弱の強者”だろうか。そんな矛盾を背中全体で感じている。
「…ハァア、気付いたのか。背中にセンサーでも付いてんのかなァ。」
振り返ってみると、まるで気ぐるみのようにシーファの肌を脱いでいる奇っ怪なバケモノがいた。
「まだ…終わってなかったのか。」
「終わってないどころか、始まってすらいないだろう。俺ァまだ生まれたばっかだァ。」
つまり、先ほどまで闘っていたのは気ぐるみを着たこのバケモノではなく、正真正銘シーファであったということだ。
―――――――――
そんな闔の直上。アクトスともう一人が周辺を空中散歩していた。
「うん、しっかりジーヴァが生まれてくれたね。ねぇ、ナムサくん。」
「ああ、俺が作った着ぐるみがバグるわけないだろ?」
「それもそっか、君はその道の“プロ”だもんね。流石にこれでアイツらは潰せるだろう。」
「ジーヴァくんは自信作だからなぁ、壊されたらちょっと悲しい。まぁ、浪もあるし無理でしょうな。」
そんな談笑を交わした後、次の標的へと去っていった。
ナムサ…どこかで聞いたことがするね!!!




