コロンの夢のドア
おじさんの家の茶色い子犬、コロンはお昼寝しているときに夢を見ていることがあるみたいだ。
「ワン」
「あ、寝言だ」
テレビの隣に寝床のかごがある。
どんな夢を見てるんだろう。
「寝言を言ったね?」
おじさんと僕は、お昼ごはんのお皿を片づけ終わったところ。
「ちょっと見てみよう」
何を見るのかな?
おじさんは、抜き足差し足、コロンのかごに近づいて、ゆっくりかごごとコロンを持ち上げる。
「あった」
かごの下の床に、人形の家にあるような小さいドアがあった。
「床にドアがあるの?」
ここ、アパートなのに。
大家さん、どうしてそんなものを付けたんだろう。
「コロンが寝言を言った時だけだよ」
おじさんがよくわからないことを言い訳した。
よくわからないなりに、いろいろ聞いてみると、どうもコロンが寝言を言うとコロンが寝ている下にこのドアが出てくるみたい。
「ドアの大きさもいろいろでね。今日は小さいけれど、人が通れる大きさの時もあった」
「へえ」
「開けてみようか」
どこにつながるドアなんだろう。
なんだかこわいような気がした。
コロンは相変わらず寝ているし、おじさんはどうしてか楽しそうだ。
「多分、コロンが見ている夢なんじゃないかな」
おじさんは、開けて見たことがあるんだって。
「見てみなよ」
僕はしゃがんでおじさんと並ぶ。
「ほら」
鍵などかかってないみたい。ドアは開けられた。
「見てごらん」
小さなドアの向こうは明るかった。
僕は顔を近づけて、もっと見ようとしたら。
「わっ!」
あんなに小さいのに、ひゅうっ、と吸い込まれた。
「わっ!」
どん、と、背中を押された気がして、ぱちぱちまばたきしながら目の前を見ると。
「あれ?」
ドアの向こうをのぞきこんでいる大きい背中が振り返った。
なんだ、おじさんだ。
「僕、どこに行ってどこから戻ったの?」
もといた、おじさんの部屋だ。
「コロンの夢は、ふしぎだねえ」
おじさん、とぼけているんだから、イヤになっちゃうな。
「ワン」
コロンはまた、寝言を言った。