表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コロンの夢のドア

作者: 倉沢トモエ

 おじさんの家の茶色い子犬、コロンはお昼寝しているときに夢を見ていることがあるみたいだ。


「ワン」

「あ、寝言だ」


 テレビの隣に寝床のかごがある。

 どんな夢を見てるんだろう。


「寝言を言ったね?」


 おじさんと僕は、お昼ごはんのお皿を片づけ終わったところ。


「ちょっと見てみよう」


 何を見るのかな?


 おじさんは、抜き足差し足、コロンのかごに近づいて、ゆっくりかごごとコロンを持ち上げる。


「あった」


 かごの下の床に、人形の家にあるような小さいドアがあった。


「床にドアがあるの?」


 ここ、アパートなのに。

 大家さん、どうしてそんなものを付けたんだろう。


「コロンが寝言を言った時だけだよ」


 おじさんがよくわからないことを言い訳した。

 よくわからないなりに、いろいろ聞いてみると、どうもコロンが寝言を言うとコロンが寝ている下にこのドアが出てくるみたい。


「ドアの大きさもいろいろでね。今日は小さいけれど、人が通れる大きさの時もあった」

「へえ」

「開けてみようか」


 どこにつながるドアなんだろう。

 なんだかこわいような気がした。

 コロンは相変わらず寝ているし、おじさんはどうしてか楽しそうだ。


「多分、コロンが見ている夢なんじゃないかな」


 おじさんは、開けて見たことがあるんだって。


「見てみなよ」


 僕はしゃがんでおじさんと並ぶ。


「ほら」


 鍵などかかってないみたい。ドアは開けられた。


「見てごらん」


 小さなドアの向こうは明るかった。

 僕は顔を近づけて、もっと見ようとしたら。


「わっ!」


 あんなに小さいのに、ひゅうっ、と吸い込まれた。


「わっ!」


 どん、と、背中を押された気がして、ぱちぱちまばたきしながら目の前を見ると。


「あれ?」


 ドアの向こうをのぞきこんでいる大きい背中が振り返った。


 なんだ、おじさんだ。


「僕、どこに行ってどこから戻ったの?」


 もといた、おじさんの部屋だ。


「コロンの夢は、ふしぎだねえ」


 おじさん、とぼけているんだから、イヤになっちゃうな。


「ワン」


 コロンはまた、寝言を言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 犬の夢の中に入っていくという発想(単に目くらましを疲労するための口実で夢とは関係ないかも知れないとしても)が面白く、そこにシュールな世界をこれでもか、と入れていて、まるで騙し絵を見ている気…
[一言] 不思議なドアですね〜。
2023/12/26 18:26 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ