ドラゴのお手伝い
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自称魔王様ことハルドゥーンはドラゴンを煮込んだ鉄鍋を河原でゴシゴシと金属のたわしで洗っていた。ヨーキも同じように自身の使った茶碗を洗っていた。二人は洗っていた。無言のままなんか気まずい空気が漂っている。その沈黙を破ったのはヨーキだった。「ハルドゥーン様はどこから来て、何の目的があってムーラ国のアーミド領内にあるここにいらっしゃつたのですか?」震える声でいきなり何個もの質問をぶつけられたハルドゥーンは鍋をたわしでこすりながら「エルよ、ちと質問が多すぎるぞ、吾輩は魔界からやってきた。なぜかは知らんがここにおった。そしてこの世界の全てを手に入れる魔王になるためにここにおるぞ」少し間が空きヨーキは少し強く問い詰めるような口調で「ハルドゥーン様、つまり魔王になるために伝説の魔剣を手に入れて魔剣の力で人々を支配するおつもりなんですね」ハルドゥーンは目をキラキラさせながら「魔剣なんだそれは凄い武器なのか、吾輩に教えてくれないか」ヨーキは黙っている。
ハルドゥーンは鍋から目を外しヨーキの方に目を向ける。ヨーキは余分な事を言ってしまってしまったと思う顔をしていた。何かを察したハルドゥーンは「すまないエルよ。魔剣については言わなくともよい。吾輩は貴様を怖がらせてしまったようだ。許してくれ」ヨーキは自身の立場としてハルドゥーンの素性を知っておく必要があった。けれどハルドゥーンが冗談なのか、話をはぐらかしているのか分からなかった。しかしハルドゥーンに謝られた事で一方的な思い込みに気付いた。そして命の恩人であり、ご飯も作ってくれた相手に対して必要だったとはいえ無礼を働いた自身が恥ずかしいと感じた。
ヨーキはすぐに「滅相もございません。ハルドゥーン様、わたしこそあなたにたいして一方的な思い込みで不快感を与えてしまい本当にごめんなさい」と深々と頭を下げた。しばし沈黙のあとハルドゥーンは「これはお互いに悪かった。それとエルよ。吾輩の事をこれからはハルと呼んでくれ、どうもハルドゥーン様と呼ばれるのが慣れていなくてな、それかハルで言いにくかったらハル様 あるいはかっこいいハル様と呼んでくれても構わないぞ」
ヨーキは少し悩んでから「じゃあハル様で」ハルは少しガッカリして「かっこいいハル様」がよかったなと寂しそうにいった。「かっこいいとつけなくともハル様はとてもかっこいいですよ(大嘘)」ハルは多いに喜び「ホントにそうだな、アッハハハハハ」と笑った。ヨーキはハルについてほとんど何もわかってないけどハルが思ったよりも信頼できる事だけは分かった。少しは自分の素性について話してもよいと思った。「ハル様あのね」ハルは「エルよ、何か変な音がするぞ。早く吾輩の後ろに隠れろ」
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