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魔王とドラゴ  作者: スケロク666
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魔王様の手作りクッキング前編

 



 小川の流れる音、春の日差しのような柔らかい光、カビ臭いにおい、ザラザラした感触、がヨーキの五感に飛び込んできた。それらに気付いてヨーキは目を開けると突貫工事で雑に作られたボロボロの土で作られた天井が見えた。ゆっくりと体を起すと木の窓のあるボロボロの部屋にいた。そして自分は長椅子にもテーブルにも使える素人が作ったであろう奇妙な家具の上でツギハギだらけの毛布を掛けられて眠っていたらしい。


 部屋の内装は生活に必要なベッドやタンスなどは一切いないことから洞窟を探索する冒険者たちによって作られた休憩場件より深く探索するための拠点として使われたり、冒険者の保養所や秘密基地としても作られる建物のような場所にいるらしい。この建物は内装が簡素なことや部屋に匠ごっこをしたモノたちのパーティのロゴや製作者の名前などの自己主張の激しいモノがないことから前者の休憩場のようなモノである可能性は高い。けれどこの場所について考えるよりこの場所まで誰が連れてきたか考えないと必要がある。



 ここにはあのクソ土竜が出てくるため並みの冒険者が入れるような場所ではないし、ましや勇者一行が自分を助けてくれたと一瞬考えてみた。かりに助けにきたとしてもこんな風に寝かせてはくれないだろう。お尻を蹴られてまた馬車馬のように働かされる毎日が想像できた。いったい誰がとヨーキは少し考えていると外からグツグツと音がした。窓から柱のような大きな水晶が優しい光を発する幻想的な風景にいてはならない地獄の魔王が使い古された鉄ナベでグツグツと緑色の液体が紫色の煙を出しながら何かを煮込んでいた。


 恐らく何かのポーションだろう今は考えないでおこうと思った。ヨーキは意識を取り戻してから上手く体を動かせずにしばらくはボーっとして悪魔の宴を眺める事しかできなかった。なぜなら勇者一行に拉致監禁されてから一日も心が休まる時のなかった事によって緊張の糸がほどけて体に上手く力が入らなくなっていた。いまはあいつらが死んでくれたと思ってよう。




 そんなことを考えていると自称魔王は意識を取り戻したヨーキに気付き、窓を突き破りヨーキ目掛けてろくろ首みたいに首を伸ばしてきた。「エルよ起きたか、疲れておるだろう。今はゆっくりと休んで英気を養うといい、もうすぐお前の為に作ったメシが完成するからな、吾輩と一緒に喰って英気を養おう」と首が伸びた事よりも料理をつくっている事にヨーキは驚いた。また料理?の作られているナベに視線を向けた。なんとなく弱弱しい声で「あのぉ」ヨーキは恐る恐る悪魔に対して声をかけてみる。「どうしたもしかして吾輩の与えた名前が気に入らないのか?それならマリーはどうだ良い名だぞ、いゃエリーも捨てがたいな」どうやら先ほどのエルと言うのは自分のことだと気づいた。



 正直素直に女の子の名前で呼ばれるのはうれしかった。けれど本音を言うともう少しだけ可愛い名前が良かったミミとかズズが良かったが、もしここで私はあなたの付けたくださった名前が気に入りませんと言えば間違えなくドクドクしい鍋の具材になること間違えなさそうなので「そんなめっそうもございません。わたくしは魔王様、いいえハルドゥーン様に助けて頂いた。お礼を言いたくて」と気絶する前の記憶を必死に思い出していたら自然と言葉がスラスラと口から出た。悪魔は少しムッとした顔で「エルよ」と大きな声で呼ばれた。ヨーキは悪魔の機嫌を損ねてしまったと思った。「すみませんでしたと」と体から悪い汗をだらだらと流しながら頭をさげる。けれど悪魔の返答は以外のモノだった。


 魔王様曰く「吾輩とお主の間に礼などい不要なものだ。上が下を助けるたり、手を貸す事は当たり前のことだ。使いたいのであれば使うでよい。無理は言わんよ。ただ吾輩がほんとに困った時はお主に助けを呼ぶからその時は助けてくれよ。約束だからな」と優しい声色で諭すように言って食事の準備に戻った。少し経ってから変な煙を出している液体の入った鍋と茶碗を持った悪魔がやってきた。今回は窓からでなく部屋に入る前に3回もノックしてくれた。そして茶碗を長椅子にも机にも見える奇妙な家具の端に置くと鍋の中に入っていたオタマでウンコみたいな色をした液体をドバドバと茶碗に注ぎこんだ。そして牙と目をギラギラと輝かせながら一言「飲め」と悪魔は囁いた。



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