王都にて2
そしてどこからともなく幽霊のように子供があらわれる。年は14~15歳ぐらいで長い黒髪に白い陶
磁器のような肌を持ったメイド服をきた子供は月明かりに照らされる。その姿はまるで月の姫のよう
に朧気で美しかった。時代が違えばどこかの国の皇帝に寵愛を受けること間違えないだろう。
子供の名前はルーナ ムーンシード カスパーディの子供で城の警護とメイドをしている。
カスパーディはルーナには目もくれず「暇潰しにもならんそれをはよかたずけろ」といいその場をた
ちさった。月明かりに照らされるカスパーディの身体には無数のキズと昔左腕を落としてまで倒した
魔界の魔物の顔が腹部にくっついているその異形な姿があらわになっても全く動じることなくルーナ
は手をパンパンと叩くと沢山の赤く光るひかる目玉をもったケルベロスやヒドラなどのモンスターた
ちが影から掃除道具を器用に持つとルーナの元にゾロゾロとやってきた。
ルーナはモンスターたちに簡単な指示を飛ばしケルベロスは三つの頭を器用に使ってモップをかけたり、ほうきを掃いたりするのを見ながらあの男に勝つ算段がないか考える。
けれどいくら考えても何も思い付かない。これはいつものことだ。何百何千回をあの男を殺しにくる
腕に覚えてのあるものを王宮に入れはカスパーディの技や魔術、戦い方などを見てきたからだ。唯一
わかったのはカスパーディは強すぎて殺しにくるモノの大半のこうげきが通用しないということだけ
だ。
なぜならカスパーディには圧倒的な魔力と魔術があるからだ。魔力はこの世界の生き物全てが持っ
ていて生き物によってその量は違う。一番多いのはレッドドラゴンでその莫大な魔力を放出すれば世
界を三回滅ぼる。人間の場合魔力は人によって違うがエルフやドワーフなどと比較的しても少な
い、魔力を飛ばす攻撃にいたってはせいぜいレンガを割れるくらいだ。
カスパーディの場合、レッドドラゴンには及ばないが人間ではあり得ないほどの魔力量を有している。さらに魔術も国一番と言われる才女であるサニーが裸足で逃げ出すレベルに魔術も使える。その魔術の腕前はこの世界で唯一未知の魔界の生物と自身を融合させ魔界生物の圧倒的な生命力を自身のモノとするほどだ。この世界の魔術とは魔力が弱い人間が魔力を増幅させるために開発されたモノだ。そのため人間しか使えない。ただし開発過程で産まれた副産物である現在の炎や雷を出すなどの魔術などは多くの種族が使えるが魔力の増幅だけは人間にしか使えない。
それらに精通しているカスパーディは自身の魔力を増幅させ魔力を稲妻のように放ったりすれば、人を爆惨させられるし、小指に火を灯す程度の魔術でさえも奴の卓越した腕にかかれば山を焼き付くせる。その莫大な魔力を増幅させるだけでレッドドラゴンの魔力総量と同等といわれている。
それなら早い話カスパーディよりも強いレッドドラゴンを連れてこれば倒せるだろうがあいにく
レッドドラゴンは十年前にカスパーディがこの王位を奪うためにその家族もろとも殺してしまった。
ふとレオンと言う剣士が王宮に父の馬鹿げた遊びの打ち合わせにきたことを思い出した。レオンを陰から見張っていたコウモリが言うにはなんでもレオンは王宮に見張りがいない事をいい事にカスパーディを殺すとか、レッドドラゴンのガキを殺して力を手に入れるなどをわけのわからない事を言っていたらしい。確かレオンたちが向かったアーミド領には元王の腹心のアーミドガンソードがいる。されに殺したモノの力を得れるヨーゼフ9世もある。
これらのことから考えるとレオンはヨーゼフを使ってレッドドラゴンの血縁者を殺して能力を得るつもりだろう。たしか元ムーラの王だったレッドドラゴンのヨーキ一世には一人娘がいたはずだ。真偽は分からないけれどヨーキ一世の子供には凄く興味がある。あわよくばウチの子にしたい。そんな事を考えてニヤニヤしているとケルベロスとヒドラが目の前で赤い目を光らせながら主人を心配していた。普段笑わない主人を見て二匹は困惑しているのだった。
それに気づいたルーナは表情をいつもの凛としたモノに戻してあたりを見る。どうやら掃除は終
わったようだ。そしてルーナと異形のモンスターたちは死者に黙とうをした。そして3分でアーミド
領に行く支度をすませた後、大鷲たちの背中に飛び乗り夜風を切りながらヨーキの愛娘を探しにアーミド領を目指した。