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この日が来たので妹の黒歴史を掘り返したいと思います。5

▼1-5


 しばらくシリ兄ィは考え事に夢中になっている様子だったので、私はこれ幸いにと彼のことを観察していた。

 穴が開くなら開いてしまえと言わんばかりに、シリ兄ィのご尊顔を堪能する。

 あまり趣味の無い私が唯一どはまりしていた恋愛ゲームで、最も夢中で遊んでいた「ほしはな」の世界。その中で最推しであるシリ兄ィ(幼少期バージョン)に会えるなんて、神様には感謝してもしきれない。

 オーロラのように輝く銀の髪に、木漏れ日を集めたのような金色の瞳(公式HPより引用)。

 私の推し、シリウス・スターフォール。


(悩まし気に考えている姿も推せる)


 目の前にいるシリ兄ィはどうやらお腹が真っ黒みたいだけど、それもまた最の高である。

 というか、私にはほしはなの中のキャラクターに嫌いな子なんていないのだ。

 シャウラも含め、この世界のキャラクターが親戚の甥っ子や姪っ子に見える程度には、盲目的に愛しかった。グッズや二次創作につぎ込んだ金額は、死んでも親には言えないだろう。


(いや、そんな場合じゃなくて)


 まさかフォルトに出会う前とは思わなかった。

 転生してから三日、ほとんどベッドの中で過ごしていたし、お世話に来るメイドたちはビクビクして話しかけることもできなかったし。情報が全然足りないのだ。

 だからシリ兄ィに事情を説明して助けてもらおうと思ったんだけど、それはそれでハードルが高すぎた。

 なに、暗殺されてみようって。

 あまりにもゲームとは違う展開に、頭がうまく回らない。

 だって、シリ兄ィはシャウラにもスピカにも平等に優しくて、こんな祭典の事ばかり考えているような性格じゃなかった。むしろスピカの恋路を応援してくれるようなって、いや、恋愛ゲームのサポートキャラだから当然なのだけど。

 それを差し引いても、ゲームのシリ兄ィはスターフォールの家長としての責任なんておくびにも出さなかった。


(それが、おかしいって言われたらそうだけど)


 そこまで考えてため息が漏れた。


「シャウラ?」

「あ、いや。なんでもありません」


 シリ兄ィを説得しようと考えていただけに、まさかこっちが惑わされると思っていなかった私は、何を言っていいのか分からなくなっていた。

 あ、でも。


「お兄さま。お兄さまの目的は祈りの成功でしたよね?」

「うん。そうだけど」

「だったら私がこれから死ぬほど頑張って成功させるので、フォルトがいなくてもいいんじゃないですかね?」


 ゲームの中で祈りを成功させるのはヒロインのスピカだけど、シャウラだって巫女候補なのだから、その可能性はあり得るだろう。

 けれどシリ兄ィの反応は鈍い。


「シャウラの話では、巫女はスピカなんだよね?」

「ま、まぁ……」

「シャウラが祈りを成功させる未来はあるの?」

「…………ありません」


 ヒロイン差し置いてシャウラが成功させるルートは無い。どれもこれも巫女としての選定中にシャウラに負けた途端ゲームオーバーになってそこで終わり。


「だったらやっぱりフォルトという人物を捨ておくことはできないよ」

「ごもっともで」


 私が頷くと、シリ兄ィがふっとほほ笑んだ。

 あ、これ。


「じゃあやっぱり、襲われてみようか」

「絶対嫌ですっ!」

「残念だけど、シャウラに拒否権は無いよ」


 笑って言うにはえげつない内容だな、おい。


「お兄さまどうしてそんなにお腹が黒いんですか」

「理想と現実は違うってことだろうね」

「そんなナメクジに塩をかけるような慰めはお控えください」


 よよよ、と泣いてみせるものの、シリ兄ィが撤回する様子も無く。


「本当に危ないときは助けるよ」


 なんてなんの慰めにもならない約束をして、私の髪を掬うとそっと口づけたのだった。




2021/06/27 大幅改変(2回目)

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