最後に笑い合えるように。
まずはママ様とエドを、そしてアルパパ様とバリーパパ様、最後にルトパパ様に
夫達。
「ようこそお出でくださいました。わたくしがこのキーセントシアの女王リゼッタと申します」
「あらあら、あの小さかったお嬢さんがこんなに美しく成長されてたのね。別れた時はまだ本当に小さかったものねぇ。私を覚えて居なくても仕方ないわねぇ」
「わたくしを、ご存知でしたか?」
「えぇ、知ってますとも。貴女はわたしの夫ルトの姪ですもの」
「「「え〜〜〜〜〜!」」」
「ママ様、え?と言うことはルトパパ様は王族なの?」
「とは言っても、この国に男の王位継承権は無いから血だけだがな」
「知らなかった...でも、だからなのかな?リゼッタ様にお会いした時に似てると感じたのは。それじゃあ私とリゼッタ様は...」
「そうだな、アリーお前にもその血は流れてるからな」
「アリー、わたくしは嬉しいです。この国は長生き出来ない国。それ故に親族などもう居ないのだと...叔父上様が居た事すら知らされず寂しかった。それが一変にこんなに沢山の親族が出来て...」
そう言ってリゼッタ様は嗚咽を漏らしていた。
寂しかっただろうな。
1人で必死に耐えて来たのだろう女王様は、今やっと解き放たれたんだね。
「陛下……」宰相のネステラさんも知らなかったらしい。
この世界での男の人は王族でもそんな扱いなのだね。
しばらく談笑してから私は、夫達とガレスティアの王宮謁見の間の隣の控え室に飛んだ。
最後の王様を西に連れて来るために。
部屋の扉を開け外に控えてた兵に声を掛けると、まぁいつもの反応だから慣れたけどね。
直ぐに王様に逢えるように頼み控え室で待つことにした。
少しして、初めてお会いした時のあの痩せた色白の王様が、宰相さんと王子殿下方と共に現れた。
初めてお目にかかる王子様方は王様よりはガッシリ?第1皇子様と第2皇子様は余り似ておられない所を見ると母上様方が違うのかな?
第1王子様はもう御婚姻されているそうだけど、第2王子様はまだ未婚でいらっしゃるそうだ(第2皇子様はモテそうね。黒い髭が良く似合ってる)
「事の次第はマリエッタ殿より聞き及んでおる。急ぎキーセントシアに参ろう」
(あらま、この王様思ってたのと違うんだ。行動力は有るのね。もっと情け無い人だと...あ!でも見栄っ張りさんだしこんなもんか?)
私は王様に『瞬間移動』で向かう為に来た事を告げると、目を見開いて驚いていた。(あぁ、それはママ様から聞いてなかったんだね)
「準備の方はもう宜しいのでしょうか?宜しければ飛びますが」
「あ、うむ大丈夫だ。宜しく頼む。では行ってくる留守は任せたぞ」
「「はい、父上お気をつけて」」
「はい、では飛びますね」
わたしは、王様と宰相様の手を取りキーセントシアへ飛んだ。
そして再びガレスティアに戻ると夫達を伴い再びキーセントシアに。
さぁ、これからいよいよ四国会議が始まる!王様も女王様達も納得してくれると良いのだけれど。
わたしは、ドレイドについて見てきた事、感じた事それら全てを隠す事なく告げ、このまま何もしなければきっとこの世界は無くなるだろうと。
そしてそれは決して脅しなどではなく真実なのだ。
だからこそしなければいけない事、して欲しい事も説明していった。
それぞれの国で、もしも触手らしき物が伸びた時押さえつけて欲しい。
出来るだけ中心の本体が動き回らないで済む用にして欲しいのだ。
何故ならばその間に私達は本体を突くからと。
それだけを頼み会議室を後にし、私は兼ねてから考えていた方法をママ様達に頼むべく別室に移動して貰った。
それぞれソファーに座りママ様は膝の上で寝てしまったエドの頭を撫でながら私の話を聞いてくれる。
パパ様達はそんなママ様を愛しそうに見つめていた。
優しい家族の一員なのに、この穏やかな瞬間を壊す決意を私は口にしなければいけない。
二人の夫の手を握り一呼吸し、話し出す。
私の考えは、まず『身体強化』したルトパパ様に『身体強化』したルークを本体中央に向けて投げ飛ばして貰う。
そしてルークは着地と同時にドレイドを十文字に浄化の炎を纏らせた剣で切ってもらい穴を広げる。
そこに今度は私とゼスを投げて貰う。
私はゼスと自身に『障壁』を掛ける。
ゼスは盾をドレイドの中心に差し込み、その後盾を伸ばし十文字に切ったドレイドの中央を開いて貰い、その間からわたしが『火球』をバリーパパ様が教えてくれた急所に向かって放つ。そしてその後『瞬間移動』で3人とも瞬時に離脱するというものだ。
「待って!それは余りにも危険過ぎよ。一歩間違えば貴女達みんなどうなるか」
「ママ様、それこそ遅かれ早かれです。私達が成功して逃げ遅れたとしても被害は最小限で済みます。それに失敗するつもりはありませんよ」
「貴女達だけが全てを背負いこむ必要が何処に有ると言うの!それしか方法は無いの?もっと色々考えましょう!可愛い我が子が死を覚悟するなんてそんな...私にその力があるなら私がするのに」
「ママ様、これでも色々話し合って考えた結果です。これが一番確実だろうとの判断なんです。ルトパパ様は私達を投げた後盾を張りなるべく早くママ様達の元へ行ってください。ママ様達の盾はパパ様だけなのですから」
「アリー、お前は死ぬ気では無いよな?諦めてはいないな?」
「はい、勿論です。だって私達新婚生活らしい事はまだ何もしてないんですよ。これから3人で家を建て暮らす夢が有るんですもの死ねませんよ」
「ルーク、ゼス、君達も納得しているのか?」
「はい、勿論ですアリー1人でだなんて何処にも行かせはしません。また離れるなんて考えられない!」
「俺も離れろと言われても離す気はねぇよ。どんなにみっともなくても、しがみ付いてでもアリーから離れねぇ。絶対に離さねぇ」
「そう...わかりました。でもアリー決して無茶な考えはしないと約束して頂戴。最小限で何て考えは捨てなさい!」
「はい、ママ様。最後まで足掻きます。皆んなで笑えるように」
そう、最後はみんなで笑えるように!
次回決戦の場へ




