慕われてる女王様
もうすぐ最後の西の国キーセントシアに着きます。
物語上何もなく終わる筈は無いよねぇ!
3人での旅も慣れ始めた頃、境界線が見えてきた。
この国との境界線は木で出来た柵だった。
それでも人が跨げばヒョイっと行けてしまう程度。
もちろん、ここも誰かが守っていると言う訳では無い。
私達は境界線を乗り越えて、キーセントシア領に入った。
目の先には山が見える。
この大陸に来て初めて目にするそれは、人の足でも何とか登れそうには見えるのだがどうなのだろう?
ゼスが「ありゃ何だ?あれが山と言うやつか?」
「初めて見たな」
そうか2人とも山を初めて見たんだね。
でもここは話を合わせる「凄い、高いね」って。
私の前世の記憶については2人にはまだ話していない。
たとえ記憶が有っても転移と言う訳ではなく、私は転生者なのだから....。
それにしても、各国でそれなりの特徴が有るけれど、この国はハッキリとした特徴がこうも有るんだね。
町に着いたらあの山について聞いてみよう。登れるのかな?
それから数日歩き、やっと町に着いた。
この町は門も壁も木で出来ている。私としては馴染みやすいかな?
門の前で門番さんにカードを見せ、旅立ちだと伝えると「ようこそキーセントシアへ」と、笑顔で迎えられた。
これだけ町を旅して来たけど笑顔で迎えられた事はほんの数回。
しかも今回はルークが一緒なのだ。
やや、呆気にとられ遅れて挨拶をかえすと、「ギルドに行かれますよね?ギルドはこの町の一番奥に有ります。ごゆっくり」と、また笑顔だ...。
「ご丁寧にありがとうございます」そう言ってその場を後にした。
「ねね、この町どう思う?」
「どうとは?」
「う〜ん、今までと違いすぎて拍子抜けしてる」
「まぁ、そうだなルークが一緒に居るのに眉一つ動かさねぇのは初めてだゼ おっと、わりぃ意味じゃねぇからな」
「ハハ、解ってるよ」
「一応気を付けて起きましょうかね!」 「「だな」」
今まで色々有過ぎて嫌でも警戒心は上がってしまうのはしょうがないよね。
町の中は人通りも結構あり皆何故か笑顔。私達が警戒し過ぎなのだろうか?
ギルドに付き討伐精算をお願いし、カードを渡す。
3人で椅子に座り周りを見渡していると、40cm程の絵が飾られている事に気がついた。
立ち上がり見てみると黒髪、黒い瞳の少女の絵だった。
絵の下にはリゼッタ皇女と書かれている。
ギルドの人に呼ばれて受付に行くと、少し青味がかった顔で「あの、カードに間違いなど無いとは思うのですが、この体数は異常かと思われ...」
「あー、間違いは無いですね。3人で387体狩ました」
「ひっ」
「もしやとは思ったのですが、話に聞いていた容姿からすると、あのその...ロスタリアの?」
「あ〜どんな風に噂が流れて来たのかは解らないですけど、多分私達?」
「ヒィっ、そ、そうですか。あの、精算と、リセットは終わりましたけれど、申し訳有りませんが全額御払い出来るお金が今このギルドに有りませんで、あの、カードに貯めておく形で良いでしょうか?」
「えぇ、構いません。宿屋に泊まれる金額は所持してますから。貯めて置いてください」
「はい!あ、それと、こちらがこの国キーセントシアのマップに成ります」
「少しお聞きして構いませんか?」
「はい、なんでしょうか?」
「あそこに飾られてる絵の少女は現女王陛下ですか?」
私はさっきから気になっている少女の絵を指差して聞いてみる。
「はい、お可愛らしいでしょう?我がキーセントシアの現女王陛下のリゼッタ様ですよ14歳の時の絵だそうです。今は恩年18歳になられましたね」
「そうなんですね。お逢いするのが楽しみです」
「良いですね。女性は陛下にお逢い出来、お言葉を交わす事が出来るのですから。実に羨ましい」
「とても慕われていらっしゃる方みたいですね」
「えぇ、優しく聡明な方だとお聞きしてますよ。あれでお身体さえ丈夫なら... すみません余計な事を言ってしまいました」
「いいえ、こちらこそ長々とすみませんでした。それでは」
「はい、良い旅を」
話だと良い女王陛下みたいだけどお身体が弱いのね...。
何故だろう凄く気になる。容姿も何もかもが。
「アリー、マップで宿屋を探そう」
「荷物を一旦置かねぇとな」
「そだね、この町には2件有りそうだよ。どっちから行ってみる?」
などと、話しながら宿屋を探すが、どの店や宿屋にもリゼッタ女王陛下の絵が飾られていた。
私達はその町で一泊し、次の日にその町を後にしたのだけど、次の町も同じ様にそこかしこにリゼッタ女王陛下の絵が飾られて居た。
崇拝してるようなちょっと異常?そろそろ、オバちゃんの感が警笛を鳴らし出してるよ!
あぁ、この国も一癖有りそうだよって。
全く!まともな国は無いのかよ〜!どの国も選べなく成りそうで怖いね。
「なぁ アリー、この国はもしかしたら鉱石が取れそうだゼ、この石を見てみろよ」
「これは、鉄? あ、おいあそこ見ろよ」走って行くと、高さ20cm程の小山が所々に有り、其れはどれも鉄やら銅の塊だった。
「ねぇ、鉱石が剥き出しで地面からまるで生えてる様に見えるね」
「あぁ、そうか。この国は鉱石の国なのか?」
首都に近づくにつれ段々と空気が淀んで来てる様な気がして来た。
山もどんどん高く成って来る。
これでは気流が山に押されて首都の町に周り落ちてるのじゃ無いかしら?
だとしたら女王陛下の病弱の原因はこれ?そして私は首都キーセントシアに入り確信した。
次回町の様子と女王陛下




