ボタンの掛け違い
長くなるので分けますね。
ケリー君を抱き上げルークの部屋を後に、急いで自分の部屋に戻ると、ルークがケリー君のお父さんの胸元を締め上げて居た。
お父さんは手を小さく振りながら、左右に首を振り、涙目だ...ルーク何してんの!
「ちょ、ちょっとルーク、やめてってば 。ケリー君の前なんだよ」
[こいつアリーの裸見てたらただじゃ済まないからな]
「本当だな、嘘言ってないな!」「みへまへん ほんほうへふ」
「お父さ〜〜〜〜〜ん」 「へヒィー!」
「一応夜だしみんな静かに話そうよ...ね、ルーク 。ルークの部屋鍵かけて来て。取り敢えずこのまま私の部屋で話し合いましょ」
「わかった。けどアリー 、お前上に何かもう一枚着とけ!」
(えー、これ以上はさすがに暑いのに...逆らわない方が今回は良さそうだねぇ)
「わ、わかった」
それから私達はケリー君のお父さんに詳しく聞く事にした。
お父さんの名前はロッシュさん 。そして問題のお母さんの名前はリンダさん。
ロッシュさんの話だと、リンダさんは良くロッシュさんを借りて討伐しに行く仲だったし、ロッシュさんはリンダさんの事を愛していた。でも急にリンダさんが来なくなった事を心配したロッシュさんが、リンダさんの家を訪ねたらもう引っ越していて、そこに彼女はもう居なかった。
ロッシュさんはリンダさんを探して歩き、やっと見つけたのは六年も経ってからだった。
リンダさんの家の外窓から中を覗いてみると、自分の子供の頃によく似た男の子が1人で遊んでいた。
見た瞬間 、間違い無く自分の子だと解ったらしい。
ところが、その横でリンダさんと見知らぬ男が話していた内容を聞いて思わずケリー君をその場から連れ出し逃げて現在に至る。
「それで、その内容は何だったんです?」
「ケリーを売るって言ってた...」
「それは確かなんですか?」
「間違いない、俺はこの耳で聞いたんだ」
確かにあの人はケリー君を物扱いしてたし、あの顔を見ると...。
ただ、前世のオバちゃんの感が何か引っかかってるんだよね。
「とにかく今日は遅いので明日私達も立ち会いますから一度ちゃんと話し合って見る気はないですか?」
「おい」
「ルーク乗りかかった船だし」(意味わかったかな?ルーク)
「ったく。人が良いのも程々にしないとその内に痛い目に合うぞ」
「ふふッ、でも、その時はルークが助けてくれるでしょ?」
「あ〜もう!当たり前だ 」(何だかんだ言ってもルークは優しいんだよね)
取り敢えず今日は寝ようと言う事になって、ルークとロッシュさん、私とケリー君で部屋割りし寝る事にした。
次の朝、ルークとロッシュさんが私の部屋にやって来て、リンダさんが来る前に朝ご飯にしましょうって事になり階下に降りて行く。
追加で二人分頼み四人で食事。しっかり宿泊費も追加されたよ...仕方がないけれど。
それにしても2人ともお腹すいてたんだね。朝から見事な程の食べっぷり。
昼近くにやはり強面のまま、リンダさんがやって来た。
「どうぞ入ってください」
「あぁ?何でこの男がここに居んだよ!」
「お前こそ良く来れたな」
(早速始まったか)「ストーップ!はい!そこまでで。ここは私の部屋なので、私の言う事は聞いて貰いますからね!じゃ無いと即警ら隊呼びますよ!」
「チッ」 「はい」
「まず、リンダさんに聞きたいのですけど」 「何さ」
「ハイ、喧嘩腰は辞めてくださいね。穏やかに話し合いましょう!昨日の夜ロッシュさんから聞いた話だと、リンダさんとロッシュさんは最初の頃、結構仲が良さそうな感じを受けたんですけれど、何故急にロッシュさんの前から消えたんですか?」
「ふん、それはそいつが子供が出来たら売るって話をしてたからだよ」
「え?そうなんですか?ロッシュさん」
「俺はそんな話はしてない!」
「ハァ?あたしはこの耳でちゃんと聞いたんだ。あの日あたしは子供が出来た事をロッシュに話す決心をしてロッシュのテントに向かった。そしたらロッシュが友達のアールと、もし子供が出来たらどうするって話してて、アールが俺なら女でも男でも魔力次第で高く売れそうなら売るぜって。愛情も持てないしって。そしたらロッシュがお前もかって言った!間違いなく言ったんだ!お前もかってね。だからあたしは何も告げず逃げたんだ 。だってそうだろ?ロッシュに解ったら子供は売られちまうんだから」
「おい、待て。俺はそんな事思った事も無い!」
「じゃあ何かい、あたしが嘘ついてるとでも言うのかい?」
「あぁ、そうだ。子供を売るって話はお前こそしてただろ?」
「はぁ?あたしはそんな気は無いし、そんな事思った事もないよ!それにそんな気が有ったら一人で産んで育てようとは思わないさ」
「お二人とも落ち着いてください。ケリー君の前なんですよ?」
「ッ....」 「すみません。つい熱くなりました」
「今聞いてたらお二人の間に掛け違いが有るような気がするのですけど」
「あたしは嘘はついてないケリーに誓ってさ」 「俺もそうですケリー誓って」
(成る程この世界は神信仰が無いから大事な物に誓うのね)
「えぇ、私もお二人とも嘘を付いてるようには見えないんです。そんな悪い人には。それどころかお二人共ケリー君に対する愛情を感じます。何かはまだわからないけれど、どこかくい違いがあるような気がするんです。だからもう少し詳しく話して頂けませんか?」
何処か大きくボタンを掛け違ってしまってる気がする。
お互い意固地に成ってしまってるのね。
さぁ、オバさんの記憶を使って冷静になって考えてみましょう。
次回 お互いの思い違い




