この世界の父と子
サブタイトルでネタバレすみません(*´Д`*) タイトルって難しいよね。
さっきの気配が気になるけれど、このままでは宿の人に訝しがられる。
それにルークも鍵が無いと部屋に入れないので、ケリー君を私のベットに寝かして、私とルークは一度宿近くの路地に『瞬間移動』で移動し、何食わぬ顔をして宿に入り直した。
「大丈夫だ、気配は無かった」
「うん 。はぁ〜 緊張した。 一体誰だったんだろうね」
「解らないが、警戒して置いて損は無いだろう 。ケリーを預かって直ぐなのだから多分狙いはケリーだろうな」
「私もそう思う。 一体ケリー君に何が有ったのかしら」
「さぁな、明日になれば何かしらわかるだろう。とにかくアリーは疲れてるだろうし、俺の部屋でケリーは預かるからアリーはゆっくり休めよ」
正直もうクタクタだったし、ここで見栄を張っても逆に迷惑に成るのは間違いなさそうなので お言葉に甘えてそうさせて貰う事にした。
「ありがとうルーク、ごめんね。そうさせて貰うね」
「あぁ 気にするな。それじゃあおやすみアリー。戸締りはちゃんとしろよ」
「うん、わかった おやすみなさいルーク」
ルークはケリー君をそっと抱き上げて、自分の部屋に帰って行った。
私は疲れていたけれど、シャワーを浴びて休む事にした...はずだったんだけど。
なのに何故こうなった?
今私の前には知らない男の人が正座して居る。
シャワーを浴びて出てきてみればこの状態で。
叫び声を出さなかった私を誰か褒めて欲しい。
「済まない、こんな風に現れるつもりは無かったんだ」(土下座)
「誰? 何故ここに居るんですか?」
「お願いだ、叫けばないと約束して欲しい。頼む何もしないから。話をしたいだけなんだ」
「わかりました。話ってもしかしたらケリー君の事ですか?」
「あぁ、そうだ 。あいつは俺の子なんだ」
「え!」
「どの国も子供の親権は女が持つってのは知ってるか?」
「ごめんなさい知りませんでした」
「いや良いんだ。ケリーはあの女に連れ去られたんだ。俺はあの女からケリーを連れて逃げた。そして少し目を離した隙にまたあの女に...」
「でもだからってどうして? 何処から入ってきたんですか?」
「もう宿屋の入り口は閉まってたし、入れてくれと言ってもこの宿屋の主人は入れてはくれないだろう?。だから仕方なく。この部屋の上を見たら窓が開いてたので失礼した。ケリーを探し回っていた時、食堂に入る君達とケリーを見つけて、君達の服装や聞こえてきた会話から旅立ちだと思ったんだ。だとしたら泊まりはこの宿だろうとあたりをつけた。この時期こんな小さな町に来るのはそうそう居ないし...本当は食堂から出てきた時話しかけようか迷っていたんだ。だが途中で見失ってしまって」
(あちゃーあの時の気配はこの人だったのね。ってか私窓開けっ放しだったのか! 絶対ルークに怒られるよね!注意しろよって言われてたんだから。だけどこのお父さん、この部屋が私じゃなかったらどうしたんだろう? 結構あわてん坊さん?)
「本当に済まない、ケリーを返してさえくれれば直ぐに消えるから。頼む。俺の命より大事な息子なんだ」
「明日の朝きっとケリー君のお母さんも来ます。話し合いとかは無理なのでしょうか?」
「フッ、話し合いになんか成らないよ。聞く耳なんか持つような女じゃ無いんだ。あいつはケリーを高く売る事しか考えてない」
「高く売る?」
「あぁ、ケリーは 俺に似て真紅の髪、そしてあの女に似て濃い紫紺の瞳。かなりの魔力量を持ってるはずなんだ。エテもかなり使えるものだし...だから結構な金で売れる。あの女はケリーを売るつもりなんだ」
(やばい、まさかの人身売買でしたよ)
「でも、それって認められる物なのですか?」
「その最中をとらえるなり、確かな証拠を持って実証出来なければ無理だ」
「だとしても一生ケリー君のお母さんから逃げ続けるつもりなんですか?」
「そんなの駄目だとわかってる。俺だって。でも、俺が何を言っても女の証言にはかなわないんだ。あいつが売らないと言えばそれが通ってしまう。たとえ本心じゃなくても...それだけこの世界での男の地位は低いんだ」
(この世界の事情を理解しきれて居ない私の手に負える案件じゃ無さそう)
「あの、取り敢えず上を羽織っても良いですか?!少し冷えてしまって」(バスタオル1枚とかで、出てこなくて良かったよ)
「す、すまない 風邪引くよな。着てくれ」そう言ってケリー君のお父さんは後ろを向いてくれた。
「私一人では良い案も浮かびそうもありません。もし良かったら私のパートナーの彼を連れてきても良いですか? ケリー君は今彼の部屋に居ますし」
「あ、あぁ。構わない。本当に迷惑かけてすまないがケリーに逢いたい」
良いお父さんなのね。
私は、ルークの部屋を訪ねた。
コンコン♪
「え?アリーか?」
「うん、遅くにごめん良いかな?」ガチャ♪
「一応言っておくが、夜中に男の部屋を訪ねるのはどうかと思う。しかもその格好」
「うん、まぁ言われるとは思ったんだけどね 。私一人ではどうしょうもない事案が出来まして」そう言った途端ルークの顔色が目に見えて変わった。
「何が有った!?」ルークが出て行ってからの事を話した途端、私の部屋に向かって駆け出したルーク。
慌てて追いかけようとしたけど、あ!ケリー君置いていけないと思い直し、ルークの部屋に...失礼しま〜す。
いや〜宿の部屋とはいえ 男の人の部屋に入るのはドキドキですねぇ。
まぁ、ルークは居ないけれどね。
少し自分で言ってて虚しいし、恥ずかしいね。
次回父の思いと母の気持ち




