彼の優しさと私の思い
やっと新しい町に着きました一体どんな町なんでしょうね。
今はガレスティアを出てから5日目。流石に野宿続きでは体が痛い...
でも、普通の人達よりはメチャ楽だと思う。
なんせリュックはしょってるけど中身は何も入っていない 。みんな私のローブのポケットの中だから。
夜は桶に水を入れてから火で温める。
ママ様がしてくれた事思い出したよ。
そのお湯で二人して体を拭く。髪も代わり番こで洗う。お湯を掛け合ってね。
最初は恥ずかしかったけれど、そうも言ってられないのが野宿。
この世界の夜はとても星が綺麗だ。
都会にいる時は決して見る事ができない降る様な群生達。
大きい星、小さい星、その全てが輝いている。寝そべって見ていると星の中で浮かんでいる錯覚さえしてくる。手を上に伸ばすと掴めそうな星達...
(そう言えば、前にルーク髪を切るって言ってたのに辞めたのかな?)
ご飯はパンをポケットから取り出したものと、後はルークがウサギさんとか獲って来てくれたりしたから困らなかった。
ルークの凄いところは私が嫌だろうなと思う事は何も言わずにやってくれる事。
今もウサギさんを捌いてくれている。
ウサギさんごめんね 。調理はもちろん私がしてる 。
前世ではこれでも一応主婦歴長かったからね。
街に居た時、夜私が部屋に入ったのを確かめると、テントに行っては男の人達に旅について聞いたり、今回みたいに捌き方を習ったりしてくれていたらしい。
それもこれも少しでも私に快適に旅をして欲しいからって言うのだから、これで好きにならない人が居たら可笑しいでしょって思っちゃう。
森も中間地点まで行かない限り魔物は余り出会わなかった。
昼は3、4時間くらい狩をして、お金を稼ぎながら歩いた。
日中は森の方が涼しいからね。
ルークはほんとうに身のこなしが速い。
強化するともっと速くなるし、ジャンプ力も格段に上がる。
木の枝をうまく使いどんどん登って行く「アリー、ここからだと次の町が見えるぞ。まるで自分の身体じゃ無いみたいに軽い」そう言いながら飛び降りる。
「ルークいくら『癒し』が有るからって無茶はしないでよね。怪我した時に痛みは感じるんだから!」
そんなやり取りすら楽しい。
そして、初の町が見えてきた!まだ国境は先だけどちょっとだけドキドキ、ワクワク。一体どんな感じの町なんだろう。
しばらくすると、木枠造りの門が見えて来た。でも外に門番の姿は何故かない。
「んーこれ押しただけじゃ開かないよね」 結構重そうだし木枠の門の回りは石造の2m程の高さの壁が町をずらっと囲む様に成っている。
しばらく周りを見回して居ると、ルークが「アリーあそこ」と指さした先に野球ボール程の穴があった。
その穴を覗いてみると目が合った* 「ヒェー」思わず尻もちを着いちゃったよ。
「あ〜ビックリした〜」しばらくすると木枠の門が人1人通れるほど開かれ私達は中に通された。
何でも魔物が直ぐに入れない様にしてるんだって。
首都の街程人が居ないから応援が来るまで自分達で防衛しないとだからね。
本当はあの穴からカードを差し入れて見せないといけないらしいけど、私達は見るからに『旅立』だとわかったから門を開けてくれたらしい。
門の中にはいるとすぐ右横に3m程の高さの櫓が有った。
「お前達たった2人で旅してるのか? お嬢ちゃんとしかも男は白かよ。無謀も過ぎるだろう」
私少し カチン* 「大変申し訳有りませんが、私のパートナーはとても優秀ですので1人で3人分は働いてくれますから心配はご無用ですよ。ご心配ありがとう御座います。」(ニコリ)
少し嫌味っぽくなったけど一応言葉は丁寧に返したよ。
「お、おぅ そうかよそりゃすまん」この世界の男の人は余り強気でいつまでも掛かってくる事はしない。
町の中ではなのかもだけど、刑罰が有るからね。それに言い方は悪いけどきっと私を心配して言ってくれたのだと思うの 。
首都の街もこの町も門番は男の人なんだね。
ついでに門番さんにギルドの場所を教えてもらい ルークと訪ねる事にした。
行き交う人、皆ルークをジロジロ見てくる。
「ルーク、嫌な思いしてない?」
「いや、いつもこんなもんだったしな。それよりアリーこそ俺と一緒じゃ嫌な思いしないか?」
「私は全然平気だよ。ルークが辛かったら嫌だなとは思うけど」
(ニコリ)「俺は大丈夫だ 気にしてくれてありがとうな」
(ルーク本当に良い人過ぎる)「ねぇルーク、手を繋いで歩こう」
「え!?何言ってんだオイ」
[そんな事したら、アリーがどんな目で見られるか]
「だって魔力受渡しながら歩いてるのと同じでしょ!堂々としてれば良いよ!ルークは確かに白だけど、受渡出来るんだって思わせられるじゃない」
考えてみたら私達手を繋いで歩くなんてまだした事無いんだよね。
受渡のふりした時や『瞬間移動』の時に手を握る程度で。
そっとルークを見ると(え!!ルーク真っ赤 !それ反則 !私まで赤くなるよ)
そっとためらいがちに手を差し出すルーク。私は恥ずかしいのを隠す為にガッと勢い良くルークの手を握った。
「ルーク、これからは町の中では必ず手をつなごうね。そうしてね!」
「う、わ、わかった アリーがそうしたいなら手をつなごう」そう言いながら顔を背けるルーク。
[うわぁ、女の子の手って柔らかい。触れただけと全然違うな『瞬間移動』の時よりもはっきり、しっかり握ってるのって結構恥ずかしいな]
私だって恥ずかしいんだからね。
なんせ自分から手を繋いだのなんて初めてなんだから...そう、前世でもそんな事は無かったのだから。自分からなんて。
不思議と前世の記憶があるせいか、逆にこの世界でだんだんと押せ押せな私になりつつあるのが不思議。
この世界の男の人が女性に対して引いてるから、きっと女性の方がこれ位で丁度いいのかも知れないな。それに今まで見てきた女性達はみんな物事をはっきりと言う人が多かった気がする。だからそう思う事にした。
特にルークには、はっきり言わないといつも私優先で考えてくれるのわかってしまったから...。
ルークが私の為を思って行動してくれるのなら、逆に私はルークの事を思って行動しよう。まだ出逢って半月もしないけどそんな風に考えられる人に出会えた事が今、とても嬉しい。
次回どんな町なのかな?




