いなか暮らしもわるくない
好奇心と張り合うとすぐに痛い目に遭う
飽きたら終いのおれさまの詩
たまには田舎の暮らしもしてみたい
この国にゃあ、静かな田舎はありゃしない
どこもかしこもキャメラマンが来て、落ち着かんわ
ネットで買った、中古のタイムマシンでいっちょう
ど田舎へ飛んでみるか…
「人影ひとつない、ど田舎にやっとくれ!」
ブオンブオン…ブロロロ──ン!
うわー!
これぞ、理想の田舎だ! ひェ……。
音の無い台風が吹いてきて……身ぐるみ全部はがされた。
「だれかいませんかー!!!」
『だれも近くにはいませんよー!!!』
『──ませんよー!!!」
なんだ、木霊かよ。
「そーですか、それは何よりです」
風さんに衣類と荷物を全部もってかれたわ。
これで誰かに出くわそうものなら
おれは息を殺して行き倒れのフィギュアと化すしか無い……。
山の中、かやぶき屋根のあばら屋が一軒あった。
そこでタイムくんに降ろしてもらった。
時代いつ? どこらへん? アナタだれ?
わて中古車センターで待機してますとタイムくんは
さーしーシュっと消えた。
目の前を一本の川が流れていた。
全裸にされたおれさまは
誰も居ないの良いことに
解放感に身を任せ、助走に助走を重ねての
コンビネーションかーらーのー
アクセルジャーンプ!
川の水は凍ってないし
どっぱーんざっぱーん、水しぶきを上げながらも
身体は、水切りの石の様に水上を猛烈に転がった。
川下に向かって転がり続けた。
背中はおろか、顔もお尻も、胸も腹も、腕も足も
全身が水の板に打ち付けられ、赤々と腫れ
満身創痍で意識が朦朧としながらも
ずんずんと川下へ流れて行った。
「おお、これは見事な桃じゃ。天地の恵みじゃろうか。
爺さんや、久々の食いもんじゃ」
ハッと意識が晴れ、ゾッと背筋が凍り付いた!
目の前に、出刃包丁もった、婆さんAがあらわれた!
「桃じゃねーよお! …ガボガボ…んごがぁ」
まずい、発声できねェよ…このままじゃ婆さんに
食われちまう…!
包丁は、婆さんが両手で頭上に振りかぶっている。
真っ二つにするつもりか…。
そんなこんなで、おれさまと婆さんは
エンカウントしちまったのさ。
サクッ!
「桃尻白刃取り!」
偶発的にそうなっただけだが、
婆さんは、おれを食いもんだと思い込んでやがる…
そろそろ…こ、肛門括約筋が限界に…おや?
何だか婆さんが色めき立っている。ヤバい!
このままでは身も心も…そう思った時だった!
おれさまに切りかかる婆さんの両脇を背後から抱え
すくいあげる様におれさまから引き離す者が。
「婆様や、良く見なされ赤ん坊じゃよ!」
そう言って婆さんを説得する爺さんらしき人の声が、
おれさまの股間を指差して言った。
「おぎゃあ、おぎゃあ…」
赤ん坊じゃねェよ! 何をもって赤子の基準値きめとんねん!
だが今は、堪えよう。
婆さんは、爺さんの説得に耳を貸して我に返った。
二人は、おれさまを家に連れ帰り、自分たちの子供として
迎えたいと申し出て来た。
「…って、さっきのあばら屋やないかい!!!」
転がる石の様だったおれさまのSTAY GOLDどうしてくれるん!?
ここに居てくれるなら、おれさまに似合いそうな
服もくれると言った。
仕方ねえ、暫く居るしかねえ様だ。
「お、サイズもセンスもピッタリの……ってコレおれさまの服やないかい!」
「服は、落ちとったんじゃ。丁度よかったの。命の恩人じゃぞ、わし」
……そっか。ええ爺さんと、A婆さんだったのか…。
てっきり、変貌を遂げてく婆サーカーに食われるかと思ったわ。
『ぽんわかにゃんにゃん、ぽんわかにゃんにゃん、ぽんわかにゃんにゃんにゃん♪』
「お、婆さんや。スマホから緊急警報が!」
もはや、便所と寝床を間違える程度の緊張感しかねェ着メロやねェ!
「雷ゾーのも鳴っとるようじゃな。こりゃイカンのすぐに迎えが来よる」
だれが雷ゾーやねん! おれさまか…。
「アナタだれ? アナタだれ? アナタだれ?」
アナタだれ? を連呼する爺さん婆さん、…てことはまさか!
『わて中古車センターから戻ってきましたー』
「来よったか。婆様や、お開きのようじゃな…」
『皆さん方、何とも申し訳ありまへんなあ。ごろね過やと言うのに、にゃぽん政府から緊急の自粛の要請がございましてなぁ……』
タイムくんが血相変えて飛んで来よったわ。
ごろ寝ウイルスが世界的パンデミック起こしてから、自粛ムードでストレス溜ってて、ごろね過でGOにゃんトラベルをやっと利用した所なのに、GOにゃんトラブルに早変わりか。
「仕方ない、少しやったけど爺さんたちとおって楽しかったでェ…」
「わしらもじゃ。雷ゾーは、どちらの出身かね?」
「関サイヤで、爺さんたちもか?」
「雷ゾーちゃんや、ババは目の保養ができて何よりじゃったぞ…ひっひ」
モロに見られたーー!!
まったくなんて日だ!
「にくきゅうスタンプも雷ゾーちゃんのお尻にぽんぽんとな」
いやあぁぁぁあああああ……
「タイムくん、早くおうちに帰ろうや…」
ブオンブオン…ブロロロ──ン!
かくして、GOにゃんトラべルは大失敗だったにゃん
マイスタンプを押せなかったにゃん……
読んで下さってありがとうございました。