参上! おむすびのすけ
好奇心と張り合うとすぐに痛い目に遭う
飽きたら終いのおれさまの詩
◇
むかしむかしの事だがの
爺すけの子供の頃の話だが
おむすび持って山に行ったのさ
お昼ご飯に致そうと
おむすびひとつ 手に取った
でっかいおむすび 旨そうだ
口をあんぐり 空けたらの
カツオのだしが 目に染みて
お口をあんぐり 空けたまま
天を仰いで 息を吸う
息を吐いたら 一気にのう
海苔巻きおむすび 頂きます
ところがおむすび 逃げ出して
爺すけ ベロを嚙み掛けた
おむすびころころ 転がって
七転八倒 ばっとうさい
おむすび穴に はまります
爺すけ生唾 飲み込んで
穴をじっと 睨みます
穴から不思議な声がした
「おむすび転んで福と成る…」
「おむすび転んで福と成る…」
何だか縁起が良さそうだ
爺すけニッコリ微笑んで
海苔巻き もひとつ転がした
またまた穴に入り込み
「穴は海苔巻き大好きよ…」
「穴は海苔巻き大好きよ…」
ほう、ほう。
良いこと聞いたと爺すけは
急いで山を下りてった。
子供の頃の爺すけは
何をやってもヘタレでの
涙なしでは生きられぬ
母が握った おむすび持って
山へひとりでピクニック
それで 泣くのを止めたのじゃ
父も母も年老いて
爺すけもまた 老け込んだ
村も 年寄りばかりでの
だが不思議なことに 爺すけは
山から帰ると元気での
ちかごろ自分でおむすびを
作ってスキップしながらの
登山下山 おまるでターザン
おむすび逃げたあの日から
足腰だけは孫悟空
山の上では何やら声が
わんさか赤坂 東京どーむ
ムードは ちょいわる 宵の口
多くの歓声上がる中
「参上! おむすびのすけ!」
あの穴向けて まだおむすびを
まるで賽銭するように
ぱんっぱんっぱんと 手を合わせ
指一本 天に向けてファイティング
ポーズの爺すけ 良い格好…
おやおや 爺すけどうしたの
顔をなにかで覆ってる
いやいや それそれ どうしたの
覆面なのかと思いきや
いやいや まさか ありえない
「参上! おむすびのすけ!!」
さらなる雄たけび もういっちょ!
おやおや 爺すけどうしたの
顔をなにかで覆ってる
いやいや それそれ そんごくう
覆面なのかと思いきや
いやいや いやも すきのうち
あの穴からの 声なのか
いやいや いやよ あなただけ
いやいや いいよ そんなこと
おやおや なにか 揉み合って
いやよ いやでも すきにして
おやおや 爺すけどうしたの
顔をなにかで隠してる…
ソレは巷で流行りのVRゴーグルだ!
少年の頃におむすびを転がした
その穴から聞こえた声は、その後
落ちていたVR機だと判明した
誰にも取られたく無い爺すけは
ずっとこの場を独り占めし続けた
どんな夢を見ているのかは
誰の知る所でも無いが
この世から泣き虫わらべが、また一人
夢想の俺TUEEEE列伝を
伝承している
読んで下さってありがとうございました。




