殺虫剤作戦
「で?行けそうかい?」
『空間把握能力はかなり鍛えられてますね。虫倒すだけなら今で充分です。問題は友人が乗った虫を撃てるかですが……』
「脳を食われた邦友を解放してやれると思えば。」
『うん、ノワールさんやカッツさんにその心配はしてないんだよ。かといって一般兵士までその考えを徹底させると次は反乱が起きた時にノワールさん達が攻撃対象になってしまうし……』
「あの……おじさま?殺虫剤みたいなのは作れませんの?」
『殺虫剤……カオー・キスカ……いや、なかなか面白いかも。博士!ブリッジまでお願いします。』
「殺虫剤か……ネオニコチノイドかピレスロイドなら人体に影響は無いだろうね。逃すと後々面倒になるけど……それでもいいなら作ろうか?共食いの習性が有ればピリプロキシフェン使うのもいいんだけど……」
『有機リンは?』
「吸い込んだら人間が死ぬのでお薦めしない。そんなのでいいなら2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-1,4-ジオキシンを……」
『枯葉剤じゃないか!』
「人が吸入すると奇形化する可能性が……」
『知ってるから!ニコチノイドかピレスロイドでお願いします。』
「あいよ!1時間ほど待ってくれ。」
「あの……准将閣下、話が全くわからないんですが……」
『ああ、虫にのみ効く毒ガスを使おうかって話でね。最悪虫がパニクって一斉に襲って来る可能性も有るけど乗員保護で考えるならいい方法だと思うよ。回収班も危険が減るしね。』
「こちらの艇に不具合は?」
『俺たちの乗ってるのは虫じゃないよ?機械に毒ガスは効かないさ。一方的な虐殺になるけど。』
「そんな方法が……知っていれば早々に私達がやっておりました。」
『その場合ノワールさんが連邦の反逆者になる可能性が有るからね?一応今回は連邦が帝国に攻め込んで来たって大義名分が有るから好き勝手やってるけど国内の人々がやるのはお薦めできないな。』
「准将閣下は我々を敵対者として処分できる立場なんですが?」
『やだよそんなの。デクさんとノワールさんの子供が見たいからね。』
“さすが高天ヶ原の神々は慈悲深いですね。”
『本人非情なつもりなんですが?』
“いえいえ、敵対した者の立場まで考えるのはそうそうできる事では有りませんよ。”
『実はデクさんとノワールさんに任せれば連邦と平和に条約を結べるかと思ってるんですが。その為に皇帝と元帥居られますし。当面連邦を保護国家にすれば平和は保たれるかと。』
「ババァを使うとは酷い子だねぇ。」
「ゾンビを使うとは酷い人ですよ。」
『こういうときに息ぴったりだからこそお願いしたいんですけどね。こういう場合腐ってる部分はともかく下級官吏はまともな人材が揃ってたりしますし。』
「それも内情調べないとわからないねぇ。」
『ここで城野さんを投入します。』
<え?僕に何をしろと?>
『カオーくんと共に市井の調査ですよ。方法はお任せします。ボディーガードはドロンボーにお願いしましょう。』
<でも下級官吏がまともな可能性は……>
『上が好き勝手しても国としてまともなら下がしっかりしてると思うけど?』
<ああなるほど。>
『ただそれも程度次第だから下まで順当に腐ってて街が廃墟の可能性も有るけど……取り敢えずは宇宙軍潰してからだね。』
「戦闘に勝つのは当然って体で話してるねぇ。」
『現状負ける事は無いでしょう。博士の宇宙艇が優秀過ぎるんですよ。』
「でも油断は禁物だよ?相手もパワーアップの可能性は有るからね。」
『それにはノワールさんやデクさんに頑張ってもらおうかと思ってるんですが……結局虫の進化体系がどうなってるかなんですよね。それより生身で宇宙を渡る、その一点に秘密が隠れている気がします。』
「どういう事だい?」
『生物で有る以上呼吸をしています。では宇宙空間でどうやって?緑星竜は簡単に言うと息を止めて飛んでいます。あいつは肺に数ヶ月分の酸素を溜められますから。ではあの虫は?そこまでの肺は持っていません。そこで死んだ虫を博士に調べてもらいました。するとどうやらスーパーキチン質の外骨格と皮膚の間に酸素を溜めている節が有りました。そこで今回の殺虫剤計画です。』
「吸わなきゃ意味が無いように思うけどねぇ。」
『皮膚から浸透させるんですよ。ニコチノイドとピレスロイドは皮膚から浸透させる系の毒物です。苦しんで突拍子も無い行動に出るかも知れませんけどね。』
「はぁ……コースちゃんと気が合うと思ったわ……」
「コース博士が悪魔の天才科学者ならオゴウさんは地獄の軍師ですなぁ……」
『いえいえ俺は人類の為に造られたロボットですので。』
「戯言が聞こえましたなぁ。」
『ほほう……では宇宙空間に散布するのはアーモンドの香りも香ばしい青酸ガスにしましょうか?意外に即効性有りますよ?人間にしか効きませんが。』
「そういう冗談言うから地獄の軍師とか言われるのよ。」
『割と本気で言ってたりして。まぁ人間滅ぼすとおでん様辺りから文句出そうなんでやりませんが。』
“妾は核バクダンとやらが見たいのじゃが?”
『あのな?核なんか使ったら残存放射能で偉い目に遭うぞ?まぁ宇宙空間なら恒星からそれ以上の放射線出てるから放置して大丈夫だけど。』
「ああ前にΓ728で海賊潰した時のアレね。」
『原理的にはアレです。コース博士ならもっと効率的な物を作るでしょうけどね。』
「呼んだ?できたよ殺虫剤噴霧ミサイル。」
『いや……いつも異様に早いけど……』
「プラント作る訳でも無いしミサイルに言われたガスの発生装置組み込むだけだからね。ミサイルは既製品だしそんなに難しい物でもないし。今回はガスの発生装置がちょっと手間だったくらいだね。」
『これで飲まなきゃどこに出しても恥ずかしく無い天才科学者なんだけどなぁ……』
「飲んだら?」
『たちまち普通の酔っぱらいのおっさんに……』
花王キスカって販売終わってるんだな……
{元ネタそれか?}
今日は一時間前に書き終わったぞ。
{散々遅れても読んでくださる読者様に感謝せんかい!}
本当にありがとうございます。できる限り贈れないよう頑張ります。




