シェーナ暴走
『何ですかテイムしたとか人聞きの悪い。俺は独妻者ですよ?』
{チョビヒゲで七三分けの気の弱い画学生。}
『違う!』
{んじゃけざわひがし?}
『読み方が違うわアホタレ。』
{あの語録おっさん持ってたな。}
『ありゃ70年頃に流行って古本屋で仕入れたんだ。』
{赤いちっこい本。}
『だから独裁者の話にするな。』
“で、いつ頃帰られます?”
『今ノワールさんが治して回ってるからもう少し……』
{シェーナさん、クリムの分裂シーンデータで送ろうか?}
“本当?JUNさん素敵!”
{データベースをアーカイブに移動するよ?後メインコンピューターへの移動お願いします。}
『お前他人にゃ丁寧なのな……』
“はい、ダウンロード完了です。”
『んじゃ後でね~。っと。ケンさんだっけ?街まで送ろうか?』
「いや町長に送ってもらいますよ。」
『あ!クリム、ワイン2本出して?』
[どーじょ。]
『これ積もる話の潤滑油。仕事終わってから飲んでね?んじゃ。』
「え?代官様もう儀礼艦に?」
『ほら、俺艦長だからさ……また来るからね。』
「ケン……あの人何者だ?」
「俺っちも詳しくはねぇが……ドボコン優勝者で帝国勇者で共和国准将で特殊艦の艦長で……」
「すまん、記憶容量超えた。」
「んじゃこれだけ覚えててくれ、民衆の味方だ!」
『いえっきし!』
「オレくしゃみするロボ初めて見たよ……」
「僕も……」
「どんな構造してるんですか?」
「帝都星でもやってたよ?ねぇ旦那。」
『構造的な問題じゃ無いみたいなんだ……』
{おっさんの余命はあと2年……}
「おいおい……」
『お前平気で嘘つくな。』
{アシモフサーキット入れた記憶有る?}
『抜いた記憶は有る。』
{その為にわしは未来永劫正義と悪の間で苦しみ続けるだろう。}
『服従回路付けたろうか?』
{♪いぇ~っさいぇ~っさいえっさほいさっさ。}
「旦那も結構苦労してんだね……」
『デクさん解ってくれますか!』
{自業自得だと思うが?}
『お前が言うな!で、ノワールさんどうだった?』
「怪我人集めて区域治癒成功しました。」
『うん、区域設定から人間の肉体が出てると魔力がそこから地面や空気中に逃げるからね。魔力区域下げるだけなら地べたに座ってもいいんだよ。』
「つまり今まで使えなかったのは……」
『今までも効いてなかっただけで使えてたと思うよ?魔力が逃げてたから有効魔力に足りなくなってたんだろうね。』
{おっさんも他人と話す時は違うやないか。}
『なんでアホタレと話す時と同じように喋らにゃいかんのだ?』
{ああ、それは仕方ない。}
『言っとくがお前がアホタレの方だぞ?』
{年食うと愛情表現が歪むんだな。}
「なるほど、0号が本当に気を許してるって事か。」
{ヒュードさんは勘違いしてるようだ。}
『辺境伯にも言え、お前のコピー作りたがってるから。』
「え?……JUNちゃんのコピーを?」
「見た目かわいいからな、ペットロボには最適だろうメイプルリーファー。」
「いや、この子普通に人縛り上げたりするんだぞマギコマスター。」
「それこそ帝国英雄のペットロボに相応しいだろう。」
{わし戦闘用ですから。}
『俺は元々メンテナンス用で作ったんだが?』
{そんなものに負けないと思う心がわしを強くした。
わしはもう騙す事も主を壊す事もできる。}
『……お前……キカイダー読んだな?』
{よく判ったな?}
『でもお前食卓の妖怪だからな?』
{なんでスパイユニットに摂食ギミック付けたんじゃ?}
『腹ペコキャラってかわいいからな。』
「兄さん……あれ漫才用なの?」
「いや……帰らずの洞窟じゃせっせと魔石拾ってたイメージしかなかったけどな。」
{とか言ってる間に高速流星でっせぇ~!降りる準備できてますか~?}
「おい0号、ギルドの姐ちゃん迎えに来てるぜ?」
『ああ、それは多分マイン目当てだろう。』
「オゴウさぁ~ん!新種のスライム見せて~!」
「解りやすいなあの姐ちゃん……」
『はい、神鋼スライムのマインだよ。重いから気を付けて。』
「マインちゃんかぁ……クリムちゃんとオゴウさんの娘になるのね。」
『まぁ……クリムが産んだひとつのコアが分裂障害起こしてな……魔力与えたらこうなったのよ。俺に落ち度は無い』
{いや…どう聞いてもあんたが原因やないか。}
「これは会報に書かねば!ギルドの出版部も喜ぶでしょう。」
『なんでよ?』
「会報の個人名や特定できる記述を抜いて月刊スライム生活って雑誌を出してるんですよ。それだけオリハルコンスライムのファンって多いんです。実際オリハルコンスライムを飼いたいって読者からお手紙が山の様に届いてるんですよ。無視してますけど。」
『無視してやるなよかわいそうに。』
「自分は貴族の何々だがオリハルコンスライムを寄越せとか実際に書いてきてるのも居ますよ。オリハルコンスライムは帝国勇者の所有であり全てのオリハルコンスライムは帝国勇者が認めた者に分け与えている。どうしても飼いたいなら帝国勇者に認められるしかないって弾いてます。スライムに愛情の無い人間に与えても金に困ったら売りますよ。そんな可哀想なスライムを増やす事はできません。あとはスライムのコレクターや研究者を名乗る者、コレクターなら何人か知ってますが彼らは自分で進化させたいのであってただ欲しがるのは邪道です。研究所はいくつか有りますがスライム研究で役に立つ研究は数軒のみ、それもスライムを切ったり焼いたりして素材を作るので私的にありません。」
『本当にシェーナさんにクリムの子預けて良かった。』
「スライムの為なら鬼でも悪魔にでもなります!」
『そんなシェーナさんに朗報、神鉄スライムは神鋼スライムに進化できますよ。』
「え?!」
『ダンジョン内でスライムを飼うんです。ただし何年かかるかは不明です。』
「オゴウさんこそ真のスライム研究者です!」
『いやそんなに大した者ではありませんが。』
「実際に新種のスライムを2種類発見した者は居ませんよ?しかも自分の手で進化させた人なんて。」




