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「知っているか?屋敷の幽霊の話」
清一郎が、お見合い相手と再開してから2週間程経った昼のとある大学寮。
ルームメイトである潤詞が目を輝かせながら文机で本を読んでいる清一郎に話しかける。
「幽霊って…。お前、何歳なんだ…。呆れるぞ」
清一郎は、潤詞を相手にせず、本から目を離さない。
「まあ、話を聞けって。その噂の屋敷の幽霊、お前がお見合いした所だぜ?」
「は?」
清一郎は、驚いた声を上げ、潤詞の方を振り返った。潤詞は、したり顔をしている。
「やっぱな。驚くと思ったぜ。」
「いや、そんな嘘、ありえないと思っただけだ。しかも、あの屋敷には、人が住んでいるだろう?」
「あと、その噂、聞き捨てならないかなあー。」
「げ…。従三…。ドア、ノックくらいして入れよ」
「いや、中から大きい声で興味深い話してるからつい…ね?」
清一郎と潤詞の共通の知人である従三が話に入る。清一郎、潤詞、従三は大学の寮が同室で、何かと一緒に過ごすことも多い。ちなみに、従三は清一郎にお見合いを勧めた張本人である。従三は、開けたドアを閉め、潤詞の隣に座った。
「その清が、お見合いした所実は僕の2番目の兄貴が婿入りした所なんだ。関係あると思わないかい?」
「そうなのかあ?早く言えよ、清。」
「お見合いする前に、言ったと思うんだが。まあいい。ジュン、早くその噂とやら教えてくれないか?」
「あ。僕も聞く聞く。」
「身内がいると話しづらいな…まあ、いいけどさ。」
そう言って、潤詞が噂を話す。
なんでも、大学近くの大きい屋敷は人も住んでいるが、夜になると3番目の窓に幽霊が見えるらしい。しかも、その幽霊は髪や肌が白く目が赤い。着物も白い。夜闇に映える白はあまりにも美しく、この世のものでないから、霊界の百合の君なんて言われてるというものだった。
「嘘くさいなあー。」
潤詞が語った後、すぐに否定する従三。
「同感だな。女子ならそこに住んでいる人の誰かじゃないのか?」
「ああ。かもねえ。長女か、次女か、の見間違いじゃない?」
「二人とも否定するなよ!噂だから、いいんだろ?しかも、百合の君だなんて見てみたくないのか!?絶対美少女だぜ!?」
「いや」
「僕もいいかなあ。」
「本当に二人とも浪漫がないっ!」