表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

またギターを弾きたくなった

作者: みくた

 好きなアーティストのライブ映像を見てたら、ギターを弾きたくなった。


 まあ、初心者が楽器に手を出すよくある動機だが、俺の場合は少し違った。

 どう違うのかというと、俺は過去にバンドでギターを弾いており初心者には当たらないという程度だ。まあ、そんな言い訳をしたところでレベルは初心者のそれと変わらないし、俺自身ギターを始めた動機も元を辿れば前述のとおりである。

 言い訳はさておき、バンドから身を引いてからずいぶん経つが、たまにこうしてギターを弾きたくなる。いつもは放っておけばこの衝動は自然に収まるのだが、今回ばかりは衝動に従ってみようと思う。

 

 俺は部屋の隅に置かれたエレキギターの埃を払い、首から下げた。

 このギターは数年前にネットオークションで落札した有名メーカーの国産モデルだ。かつて使っていた機材のほとんどはバンドを抜けてすぐに手放してしまった。

 なぜそうしたか?バンド内の人間関係で追い詰められ、ギターに対してアレルギーにも似た反応を起こすようになってしまったからだ。それからしばらくしてこのギターを手にして気づいたのは、俺程度のレベルなら何を使ってもそう変わらないということだった。

 まあ、このギターはこのギターでいい音を出すから特に不満はない。

 気を取り直してチューニングだ。

 俺はヘッドにクリップチューナーを取りつけ電源を入れる。

 反応なし。

 どうやら放置しすぎて電池が切れてしまったようだ。チューナーのサイズからすると電池はボタン電池。そんな滅多に使わないような電池が家にあるはずがない。

 と、いうことでクリップチューナーはやめ、ACアダプタ対応のシールド接続型のチューナーを使うことにした。

 まず、一番太い六弦から・・・次に五弦、四弦、三弦、二弦。そして最後に一番細い一弦。

 久しぶりにする一弦のチューニングは正直怖い。

 チューナーのディスプレイを見ながらペグを小刻みに回し、徐々に弦を締めあげていく。

 キリ・・・キリ・・・

 ドクン・・・ドクン・・・

 弦の張りに比例して上がる心拍数。

 キリ・・・キ・・ピシーン

 甲高い音を立てて一弦が弾け飛び、跳ね上がった切断部が俺の頬に切り傷を作る。

「・・・。」

 しばしの沈黙の後、俺はギターをスタンドに戻した。

 

 やめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ