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付与魔法使いは迷宮へ  作者: 灯絵 優
付与魔法使いと願いの代価
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第十三話

「ひい」

「……。なぁ嬢ちゃん、尻にバネでも付いてんのか? いくら何でも浮きすぎだろうが」

「す、すみません」

「いや、怒ってねぇけどよ」

 この子どうなってんの、という視線を浴びせかけられながらミルは揺れる辻馬車にしがみついている。最初に岩を乗り越えた時は、油断して天井近く飛んだので、ゾッとした。

 まさか、辻馬車がこんなにも揺れるものとは。

 とにかく尻が痛い。

 涙目で震えていると、左隣の女性が「あんた荷物少ないんだから、膝に乗せてやんなよ」と困惑顔で言う。

「いえ、そんな……とんでもないです!」

「最初は面白かったけど、だんだん目障りになって、哀れに思えてきたの。とっととデカブツの上に乗って。あとさっきから当たって地味に痛いのよ」

「すみません!」

「気にすんなよ。たまに俺もケツ浮くし」

「じゃ、空いた分詰めるわよ」

 気さくな二人組の親切さが心に染みる。けれど、実年齢より下に見られてる感は否めない。

 情けなく思いながらしっかり固定されると、浮き上がる気配が全くない。

(やっぱり筋肉なのね……)

 帰ったあと胸筋を鍛えたら、一石二鳥なのでは……と密かに考えていると、馬車はゆっくり停止する。

「何かしら」

 すると、御者の話し声が聞こえた。

 と思えば入り口の扉が開かれる。

 冒険者でいっぱいな中をジロリと見たのは、騎士とおぼしき鎧姿の男と、教会の白い制服を着た者達だった。

「この中に子供はいるか!」

 一瞬にしてミルに視線が集まる。

 分厚いコート類は全て脱ぎ、マジックバッグにあった革鎧姿なので魔法使いとは一見わからない。嫌な汗が背中を湿らせるが、彼らは一瞥しただけで扉を閉めた。

 遠くで「家族連れだ、該当者無し!」と聞こえてくる。

 二人は顔を見合わせたが、ミルはユグドにいる親戚のところに行く途中だと説明していたので、とくに追求はなかった。

 馬車が動き出す。


――検問だ。


 背筋を寒いものが這う。もたもたしているうちに追いつかれたのだ。

 あとはユグド領に入る時の関所だ。

(シャリオスさん、入り口で待ってたりしてくれないかしら)

 そうすればこっそり入れるのにと悪い事を考えていると、再び馬車が止まる。

「今度は何だ」

「どっか貴族の子供が家出したんじゃないの?」

 嫌そうに女が呟いたとき、嘶きと共に馬車が転倒した。

「なんだ!?」

「きゃあ!」

 揉みくちゃになった冒険者達は、一斉に外に出た。

 瓦礫の下敷きになった者達は呻いている。

 何が起こったかわからない。

 立ち上がったミルの背後で、馬車の側面が一瞬で吹き飛ばされた。

「つまらん。囀らぬ小鳥、お前はいったい何だ?」

 失望した声音は、細い枝の上に立つフードを深くかぶった男から聞こえてきた。黒いズボンに大腿部まで覆う革鎧。足背部までの靴は柔らかい布製で、指先を出したグローブをはめている。

 出で立ちは暗がりに溶け込むような輩が好むと直感的に悟り、マジックバッグから長杖を取り出す。カンデラ木を使った、自前の杖だ。

「どなたですか」

「質問に答えろ。お前のような輩、すぐに捕まるだろうと思うていたのに、無事に帰還するだと。俺はな、お前が攫われ、犯され、売り飛ばされ、希望を失い、または捕まり、その瞳が陰るのが見たかった。お前のような不用心な子供が逃げ出せるほど世は甘くないのだと、俺に愉悦をもたらすはずだった」

 だから見ていたというのに、と自分勝手なことを言いながら、その男は指を回す。気付けば短杖が左手に、長剣を右手に持っていた。

「これでは余興にもならんではないか」

「どなたか知りませんが、引いていただけませんか」

 目にも止まらぬ速さで馬車を横転させ、側面を削ったのがこの男なら、勝ち目はない。

 すると、フードの奥から感じる視線が強くなる。

「くヒャ、ヒヒヒヒ、ヒヒヒヒハハハ――怯えたな」

 底意地の悪い声音に奇妙な含み笑いが続く。

 背後の冒険者達は何が起こっているかわからず、けれど各々武器を構えている。

「ゲームをしよう」

 楽しげに言われ、全身が悪寒に泡立つ。

 これは駄目だと本能が叫ぶ。

 フードの奥から見えた目が弓なりに歪んでいく。

「半日だ。半日俺から逃げてみろ! 勝てば全ての者を見逃してやろう。負ければ皆殺しだ! クヒャヒャヒャヒャ!」

「<障壁(ウォール)>!」

「遅い遅い遅い」

 展開された十六枚の障壁が、剣の一振りで砕け散る。


――あれはゲームをしようと、この魔法契約書を投げ寄越したのだ。


 ファニーは何と言っていた。


――首に鬼灯の刺し印がある、恐ろしく強い魔法剣士であった。


 直ぐに追加された三十二枚の障壁も、杖の一振りで弾かれる。

 それでもミルが生きているのは、相手がいたぶるつもりだからだ。

 敵の正体を悟り、叫んだ。

「【遊び頃(タドミー)】!」

「御名答」

 変形させた帯状の障壁は細切りに、息つく暇も無く二の腕を切られた。

 ぱっと、赤い血が飛ぶ。

「襲撃だー!!」

 冒険者達が叫んだ瞬間、魔法剣士は杖から二本の指以外を離し、下から上へ掬い上げるような動作をする。

 草や岩、木陰からぬるりと現れた人形達はトンカチやノミ、ノコギリなどを持っている。町工場に居るような繋ぎ服の男の人形ばかりだった。

 人形達は獲物を大きく振ると一斉に振り返り、冒険者達に襲いかかる。

「逃げてください!」

「させぬさせぬよ」

 とっさに屈んで横薙ぎを避けるが、繰り出された蹴りが腹にめり込む。鞠のようにはねながらがら背をしたたかに打ち付け、肺の中の空気が無理矢理吐き出された。体の両側から来る痛みに息すらままならない。

 かすむ視線の先に、勿体ぶるように剣を掲げる魔法剣士がいた。

 これは悪いものだ。

 フードの下から覗く目を見上げながら思った。

「なんだ? 最後の悪あが――カッ!」

 杖が光る。

 呪文無く放たれた<浄化(ソーンメス・ルクス)>が魔法剣士を焼いた。

 一瞬で後ずさった魔法剣士は全身から煙を上げている。腹を押さえたミルはゆっくりと杖を回した。

 通常、浄化魔法に反応するのは精神汚染などの闇魔法系統だ。暗黒魔法の余波もこれに当たると考えられている。

 人体に有害な要素は基本的にないのだ。

 つまり【遊び頃(タドミー)】に使われた禁術の類は闇魔法系統である可能性が高く、ならばミルにとれる行動は一つだけだ。

「<光障壁(ウォール・ルクス)>!」

 現れた光る障壁が瞬時に二十枚に分かれ、矢のように襲いかかった。

 魔法剣士は横に避けざま杖を振り、水の弾丸を発射する。障壁をずらし馬車の影に逃げ込んだミルは、一枚の障壁に乗ると、浮かび飛び上がった。

「こしゃくな!」

 魔法剣士は水魔法の使い手だ。詠唱無く杖から魔法を発射させている。もしかしたら、杖自身が魔導具で魔力を変換させているだけかもしれない。それでも飛来する弾丸一つ一つが必殺で、当たればただではすまない。

(上にも逃げ場はないけれど、地上よりは!)

 背を向け更に高く飛ぼうとしたときだった。

 何かが足首に巻き付いた。

 はっと振り返れば蔦が足に巻き付き、その先に魔法剣士がぶら下がっている。

「<浄化(ソーンメス・ルクス)>!」

「二度はくらわん」

 半身を反らしただけで浄化魔法は避けられる。思い切り足を引かれ、ミルは障壁からずり落ちた。

 木に引っかかって何とか一命を取り留めたが、足がじんと痺れて動かない。

「以外にも健闘したな」

 それも終わりだ。

 このまま終われないと放った光障壁を切り裂きながら、魔法剣士は勝利を確信した。欲を言えば死ぬほど怖がらせて殺してみたかったが。

 だから油断しきったその背が蹴り飛ばされるのは、必然だったのかもしれない。

「やっと見つけた!」

 汗で湿った前髪が頬に張り付き、肩で息をしたシャリオスが、そこに居た。

「魔法剣士の【遊び頃(タドミー)】です!」

「わかった」

 投げ寄越されたポーションを飲み干したミルは、足の感覚が戻っていくことにほっとした。

(違うわ、本当はシャリオスさんが来てくれたから……)

 シャリオスは双剣を構え赤い目を向ける。

「ずいぶん、いたぶってくれたみたいじゃないか。変態が」

「あまりにも鳴かぬのだ。なぶって確かめるのは道理というものだ」

「そうか」

 閃いた切っ先が、一つの迷いも無く魔法剣士の心臓へ吸い込まれていく。

「もういいよ」

 それを皮切りに戦闘が始まった。

 シャリオスの一撃を長剣が弾く。逆の手で切り上げた短剣は仰け反って避けられた。フードが切り裂かれ、目元が明らかになる。青とも黒とも付かない曖昧な目が加虐心で光っていた。羨み妬むような、嫌な目つき。

「避けたと思ったが」

 額から流れた血が時を巻き戻したかのように治っていく。

 ススルと同じだ。物理的な攻撃で【遊び頃(タドミー)】を倒すことはできない。

「お前はいいなぁ強くて。さぞかし良い思いをしたに違いない。諦めるという事を知らぬ獣よ。なぜお前、自らの王を滅ぼした光魔法使いの手を取った」

「答える義理はない」

「苦難の時代をお前の父母は生きたろう。なぜ恨まん」

「歴史を語るなら、もっと勉強しろ。僕らを助けたのはいつだって、光魔法の使い手だった! それに彼女は別人だ!」

「偽善者めがッ!」

 左手の杖から、予備動作無く魔法が放たれる。

 はじき返したシャリオスは言った。

「ミルちゃん、他の人形を避けて! こいつは僕が何とかする」

「わかりました!」

 はっと立ち上がったミルは、奥歯を噛んで杖を回す。

 魔力は減り、半分もない。それは動揺しながら戦ったせいだ。無駄に減らしてしまった。

 青ポーションを一本飲み、口を拭い唱えた浄化魔法は人形達に痛手を与えた。腕や足が動かなくなり、コロリと転がっていく。

「<魔法攻撃強化魔法(アルメナーラ)>、<攻撃力増加魔法(アタックアップ)>、<鈍足魔法(スロウ)>、<光障壁(ウォール・ルクス)>!」

 底上げしても光魔法の威力は小さい。それでも唯一ミルが持つ、禁術と戦う術だった。

 この小さな一撃が、立ち続けるための力なら倒れるまで使い続けるだけだ。

 すり減る魔力を押さえ、最小を探していく。魔法の精度が上がり、一撃で一つから二つ三つと倒す人形の数が増えていく。それでも格段に動きが鈍るのだが、全滅には足らない。

「シャリオスさん! 撤退を!」

「でき、ないッ!」

 大きく叫ぶやいなや、後退する。背をミルに預けるような格好で、顎を伝う汗を拭う。

「隙がない」

「こちらは地面から人形が後から後から湧いて出ます。……一帯に浄化魔法はかけられませんし」

「僕が昇天しそう」

 例えそうなったとしても人形を滅ぼすことはできないだろう。

 傷ついた二の腕から血が染みている。

「俺が逃がすと、そう思っているなら勘違いだ」

 魔法剣士は大きく口を開け短杖を丸呑みにする。唇を舐めて嚥下した瞬間、目の色が深い青へと変わり、指先から水が蛇のようにあふれ出た。

「死に様だけ選ばせてやろう。特別に苦しく」

「<暗黒炎(ダーク・ダーク)>!」

 黒い炎が端から端まで水を飲み込み燃やしていく。それでも押し寄せる波は止まらい。シャリオスはかけ出した。ミルの障壁が後を追い、飛来する水魔法を叩き落とす。

「<大いなる光よ――」

「その魔法は駄目だ!」

「でも」

「駄目だと言ってる!」

 強い叱咤に呪文が切れた。なぜと問いかける間もなく理解する。(ルーメン)の魔法は敵を滅ぼすまで一切の攻撃魔法が使えなくなる。それはミルを残して撤退するという事だ。

 シャリオスは勝てないと思っている。

 飛びかかって振り下ろした双剣と長剣の刃が交わった瞬間火花が散る。体を反転させ下肢を限界まで捻って膝を叩きつける。頬にめり込んで飛ばした刹那、置き土産のように太股を貫かれた。

「ぐあぁっ」

 木を抉って土埃を上げた魔法剣士は、それでも無傷だった。――いや、折れた首も、切られた喉も、砕いた頭蓋も再生していく。

 何度殺しても死なない。

 手元に禁術を砕く魔導具がない。

 たったそれだけの事実が、こんなにも苦戦させる。

 引き抜いた剣を投げ捨てるのと、氷でできた剣が何千と飛来するのは同時だった。

「<止まれ(ストップ)>!」

 シャリオスに触れる刹那、時が止まったかのように停止した剣は、それでも震えながらじりじりと進んでいく。

「どうした小娘。その程度では一分も保たんぞ」

「――ッ! <空間収納(バッグ)>!!」

 苦し紛れに叫んだ瞬間、大量の剣が消え失せた。マジックバッグと同じ事ができる魔法。だが、常時魔力が吸い取られていく。酷い頭痛に膝から崩れた。

 そのときにはシャリオスが躍りかかっていた。

 横薙ぎの一閃が胴体を切断し、振り下ろした剣先が縦に。四分割された魔法剣士は、それでも生きていた。

「<これを人は幻影と呼ぶだろう>」

 右手を伝い全身から黒い炎が吹き出した。

 視界に捉えきれないほど速く、彼らは一瞬で何合も打ち合う。鉄の擦れる甲高い音だけがすさまじさを物語る。

「<しかしそれは手招き。天上から最も遠く、闇よりもなお濃い影となる>」

 どれほど打ち合っても魔力に一片の揺らぎも見せない。<魔力暴発(アナリプシ)>は起こらず魔法は完成すると悟った魔法剣士は喉の奥で笑いながら、叫ぶ。

「<何者かと問う者よ、聞け。答えは、ありはしないのだ>!」

「<流る形無きことが勝者なり。装う者共の悉くを削り取れ>!」

 魔法剣士から染み出した水が一瞬で濁流となって流れ出した。地形を変えるような水流に押し流されながらも、完成した闇が広がった。

 恐怖が腹を割いて中身を覗くように、全てを蒸発させていく。手も、指も蒸発し霧散するのに、魔法剣士はまだ存在していた。

 これでも仕留められないとシャリオスは知っていた。

 だから、こう唱えた。

「<邪悪なる王は顕現す。それは純粋な黒である。世界はこの名を囁けない>」

 先ほどよりもずっと短い呪文が、世界を恐怖で満たしていく。

 視界が白黒になったかのような喪失感。全ての幸福が絶えたような虚脱感。絶望と言うにはあまりにも不明な何かの囁きが蛆のように耳に溜り、思考が溶けていく。

 何かを取り零したのを、ミルは感じた。

 それは引きつれた悲鳴のようなシャリオスの息づかい。

 自分の制御を失った魔法の存在。

 耳障りな残像に意識を奪われたのは一瞬だった。

 その間に【遊び頃(タドミー)】は人形もろとも逃げ帰った。

 冒険者は息つく暇も無く、自我を失ったかのように棒立ちになっている。瞬きもせず、呆けたまま。

「――ぅアアアアアアアアアッ! 熱い、熱いァアアアアア――!?」

 弾いていたはずの日光が、シャリオスをチーズのように溶かした。

 むわりと広がる湿った水の匂いと悲鳴に、ようやく自我を取り戻したミルは、杖を振る。

「っ、そんな嘘っ!」

 体はおこりを起こしたようだった。

 震えが止まらず、焦るほど制御を失っていく。

「しっかりして!」

 自分で自分を怒鳴りつけ、ようやく制御を取り戻した魔法がシャリオスを守った。マジックバッグから取り出したポーションをありったけかけていく。

 再生した皮膚はそれでも赤く、痛々しかった。魔法剣士にやられた傷は思いのほか多く、痛ましさに涙がにじむ。

「シャリオスさん、ごめんなさい」

 必死に謝りながらミルはポーションをかけ続けた。

「ぼ……グの、中に、荷物」

 慌てて足にあるマジックバッグの中を探ると、ミルのリュックが出てくる。それをひっくり返して、ストラーナから貰ったオレンジ色の試薬品を取り出す。

 飲ませると、みるみる傷が回復していった。

「ありがとう。もう、大丈夫……それより、他の冒険者に浄化をかけて。一種の、呪い状態になってるから。……君が、自力で抜け出せてよかった。ごめんね、何の心構えもできなかったでしょ? だから……ね、謝らないで」

「少し離れます」

 ポーションの染みた水グミを二つ口にねじ込んだミルは、棒立ちのままな冒険者達に浄化魔法をかけた。

 目に光が戻り、バタバタと倒れていく。額を押さえ、青ざめながら震えていた。

 彼らに聖水を飲ませ、急いで涙をぬぐう。

 シャリオスの体を助け起こす。

 と、

「ゲームはゲーム。ルールはルール」

 呟いたのは魔法剣士。口だけを再生させ、辛うじて生きているという有様なのに、心臓が縮み上がる。

 去ったのではなかったのか。

「お前は逃げ切った。結果は結果。今は手を引こう。他の【遊び頃(タドミー)】は知らないがな」

「……貴方に課せられた脚本は何なのですか」

「小娘。お前を見ていると……どうしようもなくグチャグチャに踏み潰し、命乞いをさせたくなる。我々は【遊び頃(タドミー)】。この世界を遊び尽くすための人形(どうぐ)。それ以上でも、以下でもない。次は仕留めるぞ。俺の生まれた意味を見るために」

 再戦を誓う言葉を残し、泥のように消えたときだった。シャリオスの体が、何の前触れもなく縮んでいく。時間を巻き戻したかのように服がぶかぶかになり、輪郭は丸く、三歳くらいの小さな男の子のようになってしまう。

「――っ!? シャリオスさん、しっかりして!」

 混乱するミルに、シャリオスは笑いかける。けれど、声が出ないようだった。小さく口を開け閉めしたあと、諦めたように目を瞑る。


――大丈夫だよ。


 唇はそうかたどったが、本当かわからない。

 揺すりもできず、震えながら抱き上げたとき、

「――いたぞ、あの魔法使いだ!」

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