第十八話
空が白み始めた頃、浮遊クラゲの襲来は止り、溶けるように姿を消す。
万華鏡の森は明るい内が比較的安全で、殆どのモンスターは夜に活動を開始するという。いくら歩いても端が見えず、ぐるぐると回っている事から、一つの独立した空間のようだった。空から見えれば縁の中に丸く広がる世界に見えるが、降りてみれば別の姿を見せている。
少しだけ眠ったミルは目を開けて、シャリオス達を探すことにした。
ファニーも同行し、ユリスは眠りにつく。彼女を守るためにズリエルが一人残った。
「入り口から降りてすぐ弾かれたのか。ふむ、我々の時と同じだ。おそらく、なにかいたのだろうな。それがわかれば迷宮脱出の突破口となるだろう。この階層は時間の経過で様々に姿を変える。出現するモンスターもだ。ゆえに万華鏡と名前を付けたのだが」
なにげに忘れているが、十年もの間、迷宮に住み続けるのは正気の沙汰ではない。興味深そうに微笑む彼女は「弟には苦労をかけたな」と呟いた。婚約者が来ているので、他に言うべき事は多いと思うが、本人も受け止めきれていないようだった。
周囲は恐ろしいほど静かだった。
森の中は虫が飛び交い、小鳥のさえずりが聞こえる以外は一階層に似ている。しかし危険度は格段に跳ね上がっていた。
「足下に気をつけろ。草に擬態しているモンスターだ。踏むと囓られる」
「まるでトラバサミのようですね」
投げた石ころに噛みついているモンスターを一刀両断したファニーは「そうだな」と続けた。
「この時間帯は罠をかけるモンスターが多く、一つ一つは大したことはない。にもかかわらず、いざ窮地に立たされれば死の罠と化ける。葉の裏に隠れるモンスターも、木々の間に住まう者共も。我々を食らいつくす瞬間を逃しはしないのだ。どれほどの同胞が食われて死んだか」
「グロリアスさんの事が心配ですか?」
「うむ。……諦めが悪いのは昔からだが、まさか来るなど誰が予想できる? 親の決めた結婚だ。家の都合で変わる事も珍しくないというに」
「ご本人は死ぬはずがないと仰っておりました。とても好かれておいでなのですね」
「や、やめてくれ……」
狼狽したようにファニーは目元を覆いかけ、すんでの所で離す。迷宮内で一秒でも視界を覆えば、殺してくれと言っているようなものだ。恋愛話に頬を染め、きらきらとした瞳のミルをチラリと横目でみやったあと、口元を歪めながら言う。
「私は、なんというか……自分で言うのもどうかと思うが、出来がよくてな。故に魔剣ゼグラムも使い手として選び、後継者となれたのだろう」
「魔剣?」
「おや、知らぬのか? 我がアルラーティア侯爵家は魔剣に選ばれた者が家名を継ぐこととなっているのだ。――話はそれてしまったが、とにかく後継者となったからには婿が必要となる。あやつはそのとき一番条件がよかったのだ。かなり生意気だったが」
今でも鮮明に思い出す。
貴族にあるまじき舌打ちの多さ。口の悪いグロリアスは、そのまま大人になっているのだろう。
「いろいろ譲ってやれば良かったのだが、私も子供でな。コテンパンに伸してしまったのだ。それからは事あるごとに勝負を挑まれ、無敗。あやつはそれで意地になってしまったのか、ますます挑んでくるようになった」
「なんだか想像が付きません」
「ふむ、そうか? 意外と泣き虫であったぞ」
それは言わない方が良いのでは、と思ったが、礼儀正しく聞かなかった振りをする。触らぬ神に祟無しとも言うが。
「まぁ、何が言いたいかと言うと、好かれているわけではないだろう。勝ち逃げは許さないといつも言っていたのだからな。……会ったら話をせねばならん」
しかし十年も探し続けるほどの理由とは思えず内心首をかしげる。
憂鬱そうに息を吐いたファニー。目元にできた影が色っぽい。
なんとなくドキドキしていると、何か感覚に訴えるものを感じて立ち止まる。自然と前方にいたファニーも止り、周囲を警戒する。
「どうした」
「魔法の気配がします。……私がかけたものだわ!」
「待て、走るな!」
転がるように進み出したミルの腕を掴み、ファニーはできるだけ小さな声で叱咤する。
この階層には別の冒険者達も潜伏している。まともな奴らばかりでないことはファニーが一番良く知っている。
「大丈夫です! あちらも私達を見つけたみたいで、近づいて来ます!」
言う間に地鳴りが響き始めた。ドン、ドンと間の空いた振動が四度続いたかと思えば、眼前に何かが降ってくる。
土埃を上げて着地したシャリオスは「うわ。ここだけ土が柔らかに……」と半分埋まった体で藻掻く。
「キュキュー! キュアッ」
「あ、アルブムだ。よかった」
引っ張ってほしそうに両手を伸ばしたシャリオスは、大きくなったアルブムに咥えられて抜け出した。その背中に張り付いたミルは、頬を擦りつける。
「ご無事で良かったです!」
「うん、そっちも。ズリエルは? 近くに落ちたよね? あと、この人は誰? 領主様にそっくりなんだけど……」
「ファニー様ですよ!」
「うわっ、本当に生きてた!?」
剣を構えていたファニーは鞘に収め、手を差し出す。
「そなたの話を聞いている。よくぞ無事にたどり着いた」
「ど、どうも。シャリオスです」
気後れしたように握手をしたシャリオスは、背中のミルを下ろし、バイザーを舐めてくるアルブムを「汚れてるから」と押しやった。
「ズリエルさんはユリスさん――ファニー様のお仲間と一緒にいらっしゃいます。他のお二人を見ませんでしたか?」
「一人で飛ばされたから。襲撃者以外に会ってないな……」
「数は」
「二十七人。全員奴隷の首輪をはめられてた。言っておくけれど、全員意識混濁で会話はできなかった。どういう状況になってるか、説明がほしいんだけど」
息を飲んだミルは、シャリオスの鎧から血臭がすることにやっと気付く。
「わかっておる。ここは迷宮。人の世の理で計れぬ事も多かろう。そなたがやってきたのは大クラゲの周辺であろうか? であれば、奴らの本拠地が近い」
「奴ら?」
「我々は村人と呼んでいる」
地上を諦め住み着くことを選び、人数を増やすために周囲を襲っては奴隷を作っているという。頂点に君臨するのはデトニと言う男で、女を重点的に狙ってくるのだという。配下に魔導具師を従え、奴隷の首輪を作らせている。
「うわ、聞いただけで何してるかわかる。絶対会いたくない」
「昨日、そなたらが縛り上げた者もそうだ」
ミルは縛ったまま放置していた冒険者の事を思い出し青ざめる。しかしファニーが合流する前、とどめ刺したと聞き、口を引き結ぶ。狙われ、危険になる事はわかるが、何とも言えない思いが腹の底に宿った。
「この辺の冒険者は全員最悪なのか?」
「そうとも言えん。自衛のために集落をつくり、纏まる者。少人数パーティのまま隠れ住む者、様々にいる」
昨日出会った村人だけで三十人近い。規模を考えると、六十階層にどれだけ大量の冒険者が閉じ込められているのか、目眩がしてくる。
「去年聞いた話では、二百名に増えているようだ。……子供も多いと聞く」
「わあああ、はやく脱出しよっか!?」
聞きたくないと両耳をふさいでしゃがみ込んでしまうシャリオスに「気持ちはわかる」と肩を叩くファニー。
「ここまで増長したのは、戻れないと思っているからであろう。突破口が見つかれば、奴ら正気に戻る者も出ようが」
「よしんばそうなったとして、自分がやった事に怖くなって凶暴化したら目も当てられないんだけど。……ここで話してもしかたないか。夜になったら僕が二人を探しに行く。ズリエルの様子も見たいし、拠点へ連れて行ってくれる?」
「手があるのか?」
「僕は吸血鬼だから、夜になればどこへでもいける。まずは居場所を知らないとだし、狙われやすそうな女性二人を歩かせる方がまずい。押し寄せられても困るし」
「そうだ、シャリオスさん。ズリエルさんがこの階層にいるの、とてもお辛そうなのです」
「アルブムは平気なのに?」
「キュー?」
話して聞かせれば、首を捻って「獣人は大変だな」と考え込む。
拠点へ帰ると、顔半分を覆うように布を縛ったズリエルがいて「重傷だな」とシャリオスは呟く。いつもピンと立っている耳が、力なくしおれている。
+
薬師は投げやりに走った。
「アンタ、本気でいっぺん死んでこいってんだよ!」
背後で上がる怒号。
牢屋の魔法を全て鑑定したグロリアスは、一瞬で脱獄を果たした。襲いかかってくる連中全て完全鑑定でスキルやレベル、名前などを丸裸にする。当然噛まれた連中は怯み、その隙に昏倒させた。姿を消す魔導具を奪い取った後、あろうことか薬師を置いて行こうとしたところ、叫んで牢屋の鍵を開けてもらったのだ。
涼しい顔をしているであろうグロリアスの後をつける。
掘っ立て小屋のような建物は以外に広く、館ほどの規模だった。どれほど足音を潜めても軋むのは、床が薄いせいだろう。しなっているのを見ながら、少しでも暴れれば倒壊するのを予想できる。
不揃いな板の隙間から外を見れば、三人一組の冒険者がぞろぞろと歩いている。ちょうど見張りと同じ人数だ。組織だった動きに内心舌打ちしながら進めば、出入り口の見張りが顔を上げる。
「中はどうだった? ――いってぇ!!」
「どうした!? いてっ」
噛みついたグロリアスに額を覆い、薬師は「どうにでもなれ」と半ば諦観を抱いて走り抜ける。その背後では殴られて昏倒した男達が地面に伏すところだった。
「いちいち噛みつくんじゃないよ! 病気になりたいのかい!?」
最後に残った一人を吊し上げ、股間に膝蹴りをかますと、ゴミのように投げ捨てている。
「てめぇ、女はどこだ。集めてんだろ。今すぐ言えば潰すのだけは勘弁してやる」
「あひぃ!?」
ぐりぐりと踵で踏み潰すと、男は脂汗を吹き出して仰け反った。
「汚ぇ悲鳴上げてんじゃねぇよ、グズが」
「ギャア!? に、西の小屋だ! やべ、やべでぐれよぉっグベ!?」
「……男のくせに何てやつだい」
同性だからこそわかる痛みもあるだろう。
想像するしかない薬師は、あまりにも慣れきった脅し方に「こいつは常習犯」と冷汗を流す。パーティを何度か組んでいたが、さすがにここまでは見たことがない。
昏倒した可哀想な男を一瞥して、後に続く。完全に他のパーティと合流する気は無く、婚約者を探すつもりなのだろう。
「可哀想ってのは、撤回しようかね」
西の小屋に顔を入れた薬師は、げんなりと息を吐くと袖で口を覆う。中には牢屋と草のベッド。異臭を放つ女達が無造作に転がっていた。どの女性も裸か、申し訳程度に布が服に引っかかっている。幼児の鳴き声が心臓を冷やすようだ。
「おい、ファニーはいるか」
しかし、そんな状況も気にもとめていないのか、周囲を見回したグロリアスは手前の女達を無造作に転がしていく。ここまで目的一筋の男を見ると、逆に称賛したくなってくる。もちろん、悪い意味でだ。
「ちっ。どいつもこいつも喋りゃしねぇ」
「こんな状況で酷なこと言うんじゃないよ。<回復魔法>」
足下に転がってきた女性に緑色の光が染み渡るように広がる。
「だめだね、こりゃ」
瞼は開いたが、死んだように反応が無い。どこを見ているかわからない虚ろな目にため息を吐く。自分も人ごとではないが、こうなってはやれることはない。
騒ぎは既に知られ、近づいてくる物音がしていた。
建物の外から攻撃してこないのは中の女が惜しいからか。碌な動機ではないだろう。
「仕事をしろ。俺は手勢を増やす」
「はいはい、ったく」
グロリアスはいつの間にか短刀を持っていた。おそらくぶちのめした男共から抜き取っていたのだろう。
ポーション類がないため、薬師の魔力が命綱だ。目の前に居るのは、全員一級冒険者なのだから。
闘いは長く続いた。
それこそ二日ほどに。
モンスターの横やりもあり、犠牲は恐ろしいほど増えていく。婚約者が巻き込まれるなど欠片も心配していないのは、どうも捕まっていないと確信しているかららしい。
「ね、これどういう状況なの?」
削り取られたかのように破壊された小屋、高レベル冒険者による魔法でえぐれた地面に巨大なクレーター。空を舞って落ちる死体に欠損が無いのを見つける方が困難だ。木に引っかかっている者もいる。
阿鼻叫喚の地獄絵図という様子に辟易とした質問が入ったのは、グロリアスが獣人の頭蓋骨を踏み潰しているときだった。
視線だけ横にやったグロリアスは「遅かったな」と言い、脳髄の貼り付いた靴底を地面に擦り付ける。が、血が染みていて、余計に汚れただけだった。
「見つけたと思ったら何でこんな事になってるの? そこら中死体だらけじゃないか」
「うるせぇ、手伝え」
「はいそこ! 僕がリーダーです」
「チッッッッ!」
契約書を掲げたシャリオスに、盛大な舌打ちが入る。
「そんなグロリアスにお知らせです。ファニー様見つけたから」
その瞬間、シャリオスは屈んで足払いをかけた。突撃してきたグロリアスが胸ぐらを掴もうと手を伸ばした体勢のまま転がる。
このとき、遠くで就寝準備をしていた彼女は悪寒を感じたのだが、シャリオスに気づきようがない。
「この辺にして行こう。地上に戻って完了報告したいし」
早く終わってよかったな、と呟いた言葉を聞き漏らさないように周囲の冒険者達は囁きあう。誰もが六十階層に足止めされているのだ。鼻で笑う者もいる。ただ、奴隷の首輪をはめられた者達の目はギラついていた。
「あ、あんた、この階層から出られると思うのか?」
肩を竦めたシャリオスは薬師とグロリアスの手をとって、影に潜る。
消える直前、振り返りながらこう言った。
「出るに決まってるだろ」
魔導具も見に行けないし、と呟いた言葉は相手に届かなかった。
+
絶命したモンスターが地に落ちる中、その声は聞こえてきた。
「ックソ! マシな着地をしろ」
「あんた人の事言えるほどなのかい? 牢屋から出たときの話でもしようかね」
「喧嘩するのやめてよ」
不機嫌な声はグロリアス。そして薬師だ。
「ご無事で何よりでした、皆さん!」
硬直するファニー。衣服から土埃を払ったグロリアスが目を向けた――瞬間。
ミルは両目両耳を塞がれて別の意味で硬直した。
「えっ。何ですか!? 何が起こったのですか!?」
「見ちゃいけません」
「アウリール様、聞こえていないかと」
「そうだった」
「あんた達何してるんだい。……とにかく休ませておくれよ」
わずかな間にズリエルとミルに怪我がないか確認した薬師は、酷い目にあったと呟きながら洞の中に入ると、ユリスに簡単な自己紹介をして、ごろりと横になった。
十年ぶりの再会を果たした婚約者達は、一方が目にも止まらぬ速さで斧を振り下ろし、もう一方がそれ以上の速さで応戦している。
「てめぇ、十年もグズグズしやがって!」
「な、待て! なぜだ。ここは感動の再会ではないのか!? わ、私が悪かった! 全面的に私が! とてつもなく悪かった!! ……と思う」
「最後の何だテメェ! こっちは次に会ったら殺すと決めてたんだよ」
「いや! 心の底から、そなたには悪いと思っていた! よもや帰りを待っているなど夢にも思わず、とっとと別の者と結婚して子供も三人くらいもうけて庭で遊び転げていると思っていたのだ。だからといって帰還を断念したわけでは無く、全力で、そう全力で! 力の限り努力をしていた!」
「黙れ殺す」
「お、おちついて話をしよう。貴族の男子たる者、婦女子には優しく接するものと教わったはず。ここここここは冷静になり、お互い建設的な議論をすべきと提案したいと思う! な、なっ?」
ちらちらと助けを呼ぶように横目で見るが「僕は両手が塞がってる」「こちらもです」と男二人は無情にも答え、唯一状況を理解してる同性は、欠伸を噛み殺しながら「今夜も忙しいなー」と我関せずである。ミルは言わずもがな、目と耳をふさがれ「あの。こういうの駄目だと思うんです。除け者といいますか」と保護者達を説得している段階である。
間に合わない。
「弱くなったじゃねぇか、馬鹿女が!」
「貴様の腕力が上がっただけだ馬鹿者が! あ、待てなぜ草陰に追い詰めようとする!」
「殺す」
「ままままままま待て!」
「あのー、皆さん。何か足下から途轍もない振動がするのですが。手を離していただけると、助かるのですが」
「大丈夫、大丈夫」
「アウリール様、聞こえておりません」
「そうだよね」
最後の砦アルブムは、ちぎれんばかりに尻尾を振り遊んでいると勘違いしている。
凄まじい鍔迫り合いを制したのはグロリアス。別の意味で聞こえた殺すに赤くなるやら青くなるやらしたファニーは、必死で踵を踏ん張った。しかし腕力にはかなわず引きずられていく。
「本当に悪いと思ってるのだ。そなたを待たせたことや、約束の――痛いっ!?」
首元の鎧を引き剥がされたと思えば、思い切り噛みつかれた。慌てる仲間達に手の平を向けたファニーは、ようやく何をしたかったのか理解する。
「大丈夫なの?」
「すまん、こればかりは私が悪いのだ。甘んじて受けよう」
「僕ら、向う側に行っているね」
「重ね重ねすまんな」
食い込む所から血が滲む。
いてて、と呟いたファニーは空を眺めながら、背中を撫でてやる。いっそう抱え込まれ苦しさよりも痛みを感じた。
「悪かった」
「クソが」
「申し訳ないと思っていたのは本当だ」
「殺してやる」
「ああ」
「殺してやる」
冷たい何かが首筋に流れ落ちた。
齢十歳にして高レベル帯となっていた化け物は、完全鑑定の結果を聞いている。繰り返される結果報告に苛立ちは流れ、飼い主を見つけた犬が安心するように目を細めて。
ファニーは二百五十八レベルだ。
グロリアスの婚約者は触れても壊れない、彼をしのぐ化け物だ。
「ああ。好きにせよ。死が二人を別つとも、そなたと共にいよう」
「はいそこまで。感動の再会は終わり」
さすがに成人済み精神年齢未成年児がいる場所で、しかも迷宮内で不適切行為に及ばれるのをシャリオスは許さなかった。
盛大な舌打ちの後、グロリアスは渋々腰に縄をくくって拘束する事で手を打った。まるで散歩前の犬である。
ようやく耳と目を解放されたミルは、目を点にして呟く。
「……。感動の再会だったのでは」
「若人よ」
首を押さえていたファニーは、肩を竦める。
「感動の仕方は千差万別なのだ」
全員の合流が叶ったので、一行は帰還計画に動く事となった。