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付与魔法使いは迷宮へ  作者: 灯絵 優
付与魔法使いと海底神殿
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第十一話

 めぼしい植物や初めて出会うモンスターや鉱物を瓶につめ、一行は進んでいく。

 目的の五階層を超え、迷宮八階層までの黒門を見つけて記したシャリオスは、迷路のような城下町を見回して嘆息した。

「何か心配事ですか?」

「うーん、階層主(アートレータ)がいないのが気になってる。一般的な迷宮なら何度も出会うでしょ? なんか、こう……喉に小骨が刺さったような違和感するし……まさか少ないぶん強かったりしないよねって不安が」

「ひえ」

 両手で自分を抱きしめたミルは、あり得そうな予感に身を震わせる。

 そんな雑談中にも鯱鋸(オルカフレッサー)の群れを障壁で拘束し動きを止め、サシュラとシャリオスが止めを刺していく。

「なんでイソギンチャク持ってるんだろう」

「わからないです」

 八階層の黒門を過ぎた辺りから、新たに加わったヒキョウガニと言うモンスターは、何と説明すればいいか困るような生き物だ。手の平サイズで、後ろ足を使って速く泳ぐ。そして、手に挟んでる色とりどりのイソギンチャクで攻撃してくる。

「つーか名前の由来なんだ? 猊下知ってますか?」

「こちらのイソギンチャクは、ヒキョウガニの鋏に捕まってモンスター化したと言われています。死ぬまで暴れ回るのですが、どうも無差別なようで。眠っているヒキョウガニに攻撃し、喧嘩になったという逸話を耳にしたことがあります」

「なんすかそれ……」

「ちょっと待って。あの鋏に捕まったら僕達もモンスター化するって事?」

「存じ上げませんが、可能性はあるかと」

「ウォ、<障壁(ウォール)>! シャリオスさん、どうして一匹残してるのですか? 危ないですよ!」

 瞬く間に殲滅したものの、一匹だけ生け捕りにしたシャリオスは、大きめの瓶に素早く詰め込むと蓋をしミルに差し出す。

「詳しく調べてもらおうよ。あ、眠り薬も入れて……イソギンチャクが寝ない」

 ヒキョウガニは薬で眠ったというのに。

「生け捕りにしなくても、どこかに資料があるかもしれませんよ」

「そうだと思うけど、もらえないかもしれないし。……この子はカニちゃん一号君と名付けとこう。ストップかけてくれる?」

 半目で見ていると、はやくと急かされて魔法をかける。

 もしかしたらユグド迷宮のときも、こうやって未確認モンスターを持ち帰っていたのかもしれない。

「もうすぐ十階層につく。気を引き締めて行こう」

「それお前が言う? いや、いいけどさ……」

 だんだん慣れてきたサシュラはぼやき、ミルはユグド迷宮と全く違うモンスター事情に戸惑いながらついて行く。

「ふむ。……知能の高いモンスターがおりませんね。酷い事にならなければよいのですが」

 その後ろでスールが小さく呟いた。


 十階層へ近づくとクラクライカが出始めた。親指ほどの丸みを帯びた半透明のイカで、小さな外見が女性に好まれそうな外見をしている。実はこのモンスター、体内の雷で攻撃する厄介な敵なのだ。

「対電用の指輪はあるけど、心許ないから戻ろう。威力知りたいから生け捕りにするね」

 素早くクラクライカを水槽に入れ、蓋を閉めると専用の手袋を外す。

 ガラスに向かって雷を放っていたクラクライカは、しばらくすると諦めて中を旋回し始めた。

「何か食物を入れていただけますか? 気になることがありまして」

「かまわないけど、たこ焼きでいいかな」

 最初は警戒していたクラクライカだが、そのうち食べ物だと気付いたのか、小さく千切り始めた。

「平等社会ですね」

「小さいのにご飯譲ってる。優し、い……」

 その小さなクラクライカが膨らみ、かと思うと分裂した。

「親個体ですね。食事を取ると分裂する話は本当だったようです。よいものを見ました」

「スールって、もしかして詳しい?」

 何とも言えない表情をしたシャリオスが、素早くマジックバッグへ収納する。

「年の功です。新種など、まったく知識がありませんし」

「そっか……やっぱり聞かないとだめか」

 残念そうな顔をした後、探索続行の合図を出した。

 十一階層へ続く黒門を発見したのは、その日野営するかどうかの微妙な時間帯だった。

 リトルスポットは少なく、見つけただけで二つ。

 周辺の分布図と地図を照らし合わせた一行は、その三日後に迷宮から帰還する。少々早い帰還だったが、じゅうぶんなデータを受け取る事ができた。

 しかし疑問が一つ残る。

 なぜ海軍は十一階層で足踏みしているのだろう。



「潜水艦が使えなかったからじゃねぇ?」

 拠点に戻って疑問を零すと、そのような返答が帰ってくる。

 冷たい水の入ったカップを傾け、すっかり寛いだ様子のサシュラ。風呂上がりでほかほかしている。

「ずっと神兵の服着てるけど、暑くないの?」

「暑い。けど仕事中だからな」

「……真面目だ」

 もしかしてギャップ萌えではと関心するシャリオスだが、誰も間違ってることに気付かない。

 夜遊び大好き不良神兵は、軽薄そうに笑う。

「潜水艦が使えないって、つまり狭い階層ってこと? 歩きだと大変なのかな」

「まともに戦えねぇんだろ」

 そんなまさか、と見ると肩を竦めて続ける。

「考えてみろ。やつら出入り口で小物狩りばかりだ。十階層付近で戦ってるのを見たか?」

「ないですけれど……。もしかしたら私達と出会い頭にならないためかもしれませんし」

「“潜水艦も無しに降りるなど正気の沙汰ではありません”だったか? あいつら、安全パイ踏んでるだけだ。しかもレベルだって五十いってるかわからねーよ。実戦経験低すぎて攻略が進まないんだ」

「そっか……そっかー」

 納得したように何度も頷いている。

 未だに疑問符を浮かべるミルに苦笑いで答える。

「どう見ても全員前衛職。……パーティバランスがかなり悪い。冒険者が迷宮に潜らないから、防具類の発展もしてないだろうし。隊列を組んでもバランスが悪ければ、効率も落ちると思う。仮説だけど」

「ですが、国庫の中身を稼いでいるのですよね? 投資しても回収できるので、予算は多いのではありませんか?」

「これが変に聞こえるかもしれねぇが、死人を出したくないんだろ」

「え、ですが……」

「おう。出てる」

 頷いたサシュラは水差しを傾ける。レモン水からスッキリした香りがして、体の奥から冷やしてくれる。

「落ちてた装備見ても、少なくない数が死んでる。だが奴ら、戦争中じゃねぇし、大体はこの国の出だろ? 他の土地なんざ知りもしないし、レベル差で無理矢理進んでる節がある。そのせいで死ぬんだろーよ。装備品が迷宮内で放置されるくらいには切羽詰まった状況でな」

 ミルは絶句した。

「装備を充実させてレベル上げして……堅実に進む方法ならいくらでもあるよね?」

「この国は観光と迷宮資産で成り立ってる。てことはだ、他国の迷宮事情も知らない次男だかは大抵軍に入る。で、軍は受け皿だ」

 財政は健全で、真珠も値崩れしているがよく売れる。

 過度なリスクを背負わなくても民を養え、軍は安全に兵士を動かせば事足りる。

「海軍の奴ら、本当は攻略する必要がないのさ。ハーバルラ海底迷宮ができた経緯が特殊でもあるし、王は外交を上手くこなしている。平和なもんだよ。だから王と将軍の考えに乖離があるし、俺達が付け入ることができた。【遊び頃(タドミー)】の事がなくても、教会が要請すれば入れただろう」

「陛下は、もっと財宝がほしかった?」

「おうよ」

「あの、どうしてですか? 財政は健全なのですよね」

「実は漁業が壊滅しかかってんだ」

 二人は顔を見合わせる。

 店に魚は並んでいた。とても漁業が壊滅しているように見えない。

「売ってんのは、モンスターのな」

 これにはシャリオスも驚く。

 二人の顔を見てにやりと笑ったサシュラは、もう一度カップを傾ける。

「漁獲量が突然減った。理由は不明。漁師は失業か冒険者へ転職。食い詰め一歩手前で、傾きだした。保てていたバランスが崩れた。おお、こりゃ大変だ――てな感じが今な」

「どこで聞いてきたの?」

「酒場の女」

「破廉恥!」

「いって!?」

 こんな感じ、と胸の大きさを両手で表現したサシュラの脳天に拳骨が炸裂する。神兵といえど、吸血鬼の一撃は避けられなかったようだ。

「まったく、子供の前で!」

「……。もしかして私のことですか? ねえねえシャリオスさん」

 突然悟ってしまったミルが服を引いたが、黙殺された。



 探索の査定に一日かかるとのことで、休みをもらって観光に来ていた。海岸沿いの岩場は潮風が心地よく、足を投げ出すように座っている。

 海軍が足踏みしてる理由が腑に落ちた。

 攻略する気がなく、のらくらと躱していたのだろう。王も認めていた、というよりも黙認していたのかもしれない。

 しかし状況が変わり、より多くの収入が必要になった。

 漁業がどの程度打撃を受けているか知らないが、失業による治安悪化を防ぐ必要がある。魚が捕れなくなった原因調査も必要だ。

(お金のやりくりはどこも大変なのね……井戸掃除のプロじゃ食べていけないかもしれないわ)

 そもそも相場を知らないことに気付き、ミルは思い悩む。

 と、砂浜で貝を掘ってパクついていたアルブムが顔を上げる。

「キュフブ? キュアキュ。キュー?」

「フーッ!」

「えっ」

 誰もいないと思っていた所に鳴き声。

 慌てて振り返るが、そこには何もいなかった。

「近所の動物でしょうか」

「キュ……」

 遊ぼうと声をかけたアルブムは、しょぼんとしてしまった。なにやら素敵な白い生き物だったらしい。仲間かもしれないと言うが、高貴なる女王狐(クイーンテイル)は寒いところにいる生き物だ。常夏の国にいるとは思えない。

「キュブブ。クル……」

「また会えたらいいですね。気分転換に、遠くへ行ってみましょうか」

「キュフ!」

 歩き出したアルブムに続く。

 転々と続く足跡が可愛らしい。

 頬を緩めていると、海岸沿いからますます人がいなくなっていく。

「ちょっと海を見てきますね」

「キュ」

 遠くへ行っちゃだめだよ、と言う風に鳴かれ、釈然としないながらも頷く。

 靴を脱いで爪先を波に入れると指の間に砂が入ってこそばゆい。

 アルブムはヤーシュの木下で休むことにしたようだ。落ちていた実を叩き割って吐息で凍らせると、囓り始める。

 確認したミルは、深い場所を探して泳ぎ始めた。潜ってみても魚の姿は見えない。迷宮へ向かう道すがら見つけたモンスターは、この辺にはいないようだ。

(普通の魚が見当たらないわ)

 透き通るような幻想的な景色が不気味に見えた。


「アルブム、お客様ですか?」

「キュン。キルルルル、キュキューン」

 戻ってみると小さなお客さんがいた。

 真っ赤な胸の海鳥だ。手の平ほどのサイズだが、胸を膨らませると倍くらいに見える。

「ピヨ」

「初めまして。ミルと申します。ここに住んでる鳥の方ですか?」

「ピヨ!」

 まあね、と海鳥が頭を動かす。なかなか人なつっこい鳥のようだ。もう少し警戒心があった方がいいと密かに思う。

 海鳥とアルブムはしばらくヤーシュの実を一緒に囓っていた。いくつかヤーシュの実を取ってあげると仲良くなって、真っ赤な胸を触らせてくれた。友好の証らしい。

「なんだかここ……石がありますよ。飛ぶとき重くないのですか?」

「ピヨ」

 まあねと言うように首を振っている。

 お前はなかなかの触り方をするからと石をもらう。石は宝石のように綺麗で赤く輝いていた。

「そういえば、魚が減って困っていませんか?」

「ピヨ。ピッピッ。ピ……ピヨヨ」

「そ、それは……」

「キュー……」

 アンニュイな雰囲気で毛繕いを始めた海鳥が言うには、余所の海流から来た外来種が、この辺の魚を食べまくっているのが原因のようだ。それからと言うもの、食い詰めた漁師が海鳥達を乱獲し始め、地元漁師と海鳥との関係が冷え込んでいるらしい。

 以前は共存していたのだが、これではどちらかが滅びるしかない。自然の定めとは言え、あまりにも惨いと言うような感じに海鳥が鳴く。

「キュアキュ。キュン、キュアア?」

「思った以上に大変な事になっていたのですね。そういう事でしたら、お力になります! 外来種を持って帰れば他の人も原因がわかって、駆除ができるのではないでしょうか」

「ピヨ!!」

 嬉しげに体を震わせて、海鳥は頭上を旋回すると海岸沿いを飛び始めた。アルブムの背に乗って後を追う。

「それにしても外来種のせいだと気付かない理由は何でしょうか? え? いつもは他の魚や岩に化けている? ……それはモンスターなのでは」

 そんな風に思ったのだが、海鳥は首をかしげていた。



 その日の夕食時。

「と言う事がありまして、明日御領主様のところに報告したいのですが、スールさん、付いてきていただけませんか。出発も遅らせていただけたら助かるのですが……」

 夜遅く、くたくたになって帰ってきたミルが経緯を語ると、サシュラは「ツッコミが追いつかない……」と悲愴な顔をした。

「かまいませんよ」

「僕も。というか査定が終わらなくて、明日も待機になった。終わったら頼まれていた素材と道具の注文書を一緒に送る予定。まあ、遅れるのは海軍がごねたせいだけど」

「すみません、そんな大変なことになったとは知らなくて」

 ホットミルクを飲んでいるのに、腹の底が冷えるような心地を味わう。

「ううん、あいつらが悪いんだから。海鳥はどんな感じだった? 僕も会ってみたいな」

「賢いですよ。お礼にいただいた石はこちらです」

 石は海鳥によって微妙に色が変わっていた。親指ほどの大きさだが、一抱えほどある瓶のフチまで入っている。まるでお菓子のようだ。

「たくさんあるね。他の海鳥もいたの?」

「だんだん数が増えまして」

 本日の成果報酬と友好の証を見下ろす。

 死んだ外来種を啄むついでに石をもらったのだ。複雑な気分になりながら、当初の問題を思い出す。

「こちらが問題のモンスターなのですが、名前がわからないのです」

「メメバですね。この国にはいない種類だったかと。確かに外来種です」

 死骸入りの瓶を出すと、感心したように突くスールは「ずいぶん遠くへ来たようですね」と独りごちる。

「透明なジェル状のやつだね。まだ海にいるの?」

「海鳥はそう言っていました。仲間が減ったので今は隠れていますが、明日になれば出てくるかもしれません」

「やっかいそうだな……」

 岩や魚などに擬態するメメバは、大量発生すると生態系を壊す危険な生き物。普段も透明なので海水の中で漂っていると見分けがつかない。切っても分裂するという。

 海鳥の言うまま障壁で釣ったのだが、擬態を解除するまで半信半疑だった。

「なあ、普通の鳥が見分けられるっておかしくねえか?」

「賢い鳥だったので」

 先祖代々海岸沿いに住み着いている、由緒ある海鳥と言うのは本人談である。

「にしてもよく倒せたね」

 攻撃力は低いが、ミルもユグド迷宮三十階層を攻略した身である。多少のモンスターには負けないが、今回は相手が悪いように感じたので、シャリオスは不思議に思う。

「ドーマさんのレシピを参考にしてですね……お塩をかけたら死にました」

「……海にいるのに塩で死ぬんだ」

「……はい」

 謎めいた生態である。もしかしたら濃度が関係しているかもしれないが、詳しいことはわからない。

「ふむ。その海鳥はトットかもしれません。聖下、この石は高価なお品物ですよ。滅多に取れない貴重品です」

「え」

 トットは気性が穏やかで頭がいい。胸部で自然生成された石は高値で取引されている。殺したり無理矢理奪うと石がくすみ価値がなくなるので、専門に飼育する業者もいる。漁師達も石を狙ったのだろう。

 乱獲されて大分数を減らしたので、野生は特定の地域にしか生息していない。

「この石は透明度が高い物で、宝石にもなりましょう」

 物知り博士が指先で石を透かし見ながら言う。

「そうだったのですか。なんだか悪い事をしてしまった気がします」

「とんでもない。よいことをしたお礼なのですから、いただかなければ失礼に当たりますよ。気が引けるならば、少々売り払ってメメバ対策の費用に回せばよいのでは? それならばトット達も喜ぶかと。もちろん、わたくしの方から領主へ提案させていただきます」

「でしたらお願いします」

「それにしても聖下は不思議ですね。動物の言葉がわかるのですか?」

「いえ。でも身振りとか鳴き方でわかりませんか? 我が家の領民もこんな感じですし」

 全く判らない面々は首を振る。長く一緒にいた相手ならまだしも、ミルのように初対面の鳥相手に会話はできない。

「サンレガシ領は不思議な場所ですね。一度訪れてみたいものです」

「僕も! 僕も行きたい」

「では、そのときはご一緒しましょう」

 なんだか目を光らせているような気がして、ミルは冷や汗を流す。

「そ、それにしても、海鳥と友達になったアルブムはお手柄です! 事情がわかったのもそのおかげですし、大活躍でしたよ!」

「キュフッ。キューッキュッキュッキュ!」

 あからさまに話をそらす。

 アルブムはそうとも知らず、嬉しそうにくねくねした。


 翌朝、領主家へ事情を伝えると、困惑した領主に「実際に掴まえるところを見たい」と言われ海辺へ行くこととなった。暇なシャリオスも一緒にいるが、サシュラは精神的な負担を感じるから、とよくわからない事を言って二度寝している。

 昨日仲良くなったトットが旋回していたので事情を説明すると、頭の上に着地した。協力してくれるらしい。

 トットの指示でメメバを釣っていく。

 隠れた個体も一日経って出てきたようだ。

 領主は「特殊技能持ち。漁師に同じ事が……」と悩んでいる様子だった。

 肥えに肥えたメメバにせっせと塩をまく。なかなか地道な作業である。その死骸を集まったトットが食べ、お腹をぱんぱんに膨らませ帰っていく。子供に分け与えるのだそうだ。

「聖下、トットはメメバを見つけるのが得意なようですので、助力を頼めますでしょうか?」

「私からもお願いできないかね」

 そう領主が言ったのでトットを見ると、

「ピヨ」

 まあお互い様だしな、と言うように囀ったトット。

 今後は地元の人達と協力して事に当たることになった。

「ありがとうございます。それでは宝石の一部を教会へ寄付していただいても? テイマー系の冒険者を雇えば円滑に進むでしょう」

 残りのお金は海鳥の保護と、漁師達の生活保障へ回すため領主へと流れる。

 トット達にお別れの挨拶をしたミルは、いい感じの呪物探しのため商店街へ。シャリオスはトットの子供を見せてもらいに、巣へ付いていった。

「……今回、望外の幸福が訪れておりますが、少しの手間を惜しみ幸福を手放すのは、馬鹿らしいと思いませんか」

 囁くようにスールが問いかける。妙な迫力があった。

「ええ、猊下の仰る通りですとも!」

 領主は脂汗を流し、そう返すので精一杯だった。

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