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付与魔法使いは迷宮へ  作者: 灯絵 優
付与魔法使いと海底神殿
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第十話

 情報が集まりだしたのは翌朝からだった。

 ギルドから帰ってきたシャリオスは、手紙の一つ一つを丁寧に読み込むと、新しい紙を広げ写していく。

 取り寄せた情報の中には、沈んだフラトーラ王国の文献もあり、広い神殿があったことを知る。

 当時の生き残りは寿命を終え、既にストラーナだけが生き証人だ。

 しかし彼女は森から出た事がなく、記憶も曖昧だろう。

「ハーバルラ海底迷宮の成り立ちは特殊だよね。ウズル迷宮も変だったけど、ここまでじゃなかった。最初からあった物が変化したのかも判らない。確かなのはモンスターが出て、迷宮の最下層があるってことだけ」

「未攻略迷宮は難易度もそうですが、もたらされる財も謎も格が違うと言われております。学者でも頭を捻っていますので、知らないことが多くとも、しかたないことでしょう」

 沈んだとしたらどの程度の深さか、更に続いた場合の懸念事項。空気、気圧、温度、視界、モンスターとの戦い方。全てをシャリオスは最悪の状況を想像して考える。

 幸いマジックバッグの容量があり、数年なら食料は平気だ。問題は空気。こればかりは専門家に依頼し、道具を見立ててもらわなければならない。

「装備品はどうだって言ってる?」

 同じように手紙に視線を落としていたミルは顔を上げる。

「おおよそのデザインと見立てが終わりました。性能の仕様ですが、家の方もどの程度か判らないので、情報待ちのようです。希望はありますか?」

「じゃあ、深海で生活しても食料以外は何とかなるくらいのものをお願い」

「わかりました」


 そうして金貨七千万枚という法外な値段で、全ての装備が調えられた。

 『水中ゴーグル』は視界を遮らないよう細いフレームを使ったデザインに変わり、硬化などの強化魔法が数十重ね書きされた。視界は常にモノクロになるが、岩陰でもはっきり見ることができるようになった。

 『人魚のヒレ(シレーナ・フロッセ)』も変更となった。飴からチョーカーへと変わり、魔力を込めれば半永久的にエラ呼吸ができるようになる。一度限界まで魔力を入れると七十二時間の活動が可能だ。緊急時に隠れてやり過ごすことも、逃げることに全力を注いでも何とかなるだろう。

 小まめに魔力を入れるようにとシャリオスは告げる。

 『ハーバルラ水着』も性能の低さから改造され、装飾品となった。体内を適温で保つ事もそうだが、毒などの異常状態も無効化する。

 新しく『空気清浄機(ハワープリート)』が追加され、『魔法の部屋(マギア・オーダ)』内に設置された。空気を浄化して最適な状態に保つので、万一『人魚のヒレ(シレーナ・フロッセ)』が壊れた場合、逃げ込むことができる。その間、別の者が全力で地上を目指すことになるだろうが。

「『人魚のヒレ(シレーナ・フロッセ)』の予備は各自一つ。一つでも壊れたら地上に帰還する」

「わかりました。食料の当てもありますし、状態異常系のポーションは『魔法の部屋(マギア・オーダ)』内に積み込んであります。皆さんにも一箱ずつお配りしますので、数を確認したあとマジックバッグへ閉まってください。食料は、半年分、調理済みのものがありますけれど、できるだけ現地で調達したいと思います。長旅になると思うので、水中では手に入らない食材で揃えています」

「見たことないのは『食料確認(イートチェック)』と『鑑定水晶(ア・クリスタ)』を併用して調べていこう。ところでさ、スールは何でミルちゃんの手を掴んでるの? 最近多くない? なんか変なこと考えてない??」

 掴まれ慣れてしまったミルは、はっと見上げる。

 スールは言う。

「昔、教会に入るために故郷を出たのですが、置いてきた妹が気付いたら失踪していたらしく、もうずっと会っていません。小さい子供を見ると、妹を思い出すのです」

 寂しそうに言うので、シャリオスは申し訳ないことを聞いたと謝った。

「そうだったんだ……疑ったりしてごめんね。サシュラがロリコンってしつこいから、心配になっちゃったんだ」

「子供ではありませんが、私でよければどうぞ」

「ありがとうございます」

「……。あんたら騙されてんぞ」

「失礼な。わたくしは興奮したことなどありません」

 あわよくば頭を撫でたりしたいだけである、と堂々と言うのもいかがなものか。

「構成だけど、幸いなことにパーティ内に火魔法使いいないから、戦力半減はない。僕が前衛、サシュラはその後ろ、二人は後衛で、背後の確認は後衛とアルブムにお願い」

「キュ!」

 音や匂いを拾うことが難しいので、今回は斥候役から外している。

 全員の装備品には海水による傷みや腐食軽減、水圧を受けにくくする魔法式が施された。ミルの装備はスカートをつめ、下に半ズボンを履くことになった。「お母様がんばりました」と手紙に書いてあった通り、しっかり動きやすくなっていた。

「それじゃ、今から全員で入り口まで行って帰ってこよう。地図は頭に入れた?」

 鉄板を見せる。

 けっきょく道具が見つからず、シャリオスは鉄板を買い込んで、先の尖った工具で書くことにしたようだ。ズリエルがいたら模型もあったかもしれない。

 悲しく思い出していると、出発の時間になった。

 どうもミル達は監視されているようで、海兵の姿が海辺にちらほらとある。

「行こう」

 準備は済ませた。食料も道具もフル装備。

 今日は慣らしだが、本番は近づいて来ていた。


 一日で帰ってくると、海軍は嫌な感じで冷やかしてくる。

 海の中は美しいが暗く、色が判らないとモンスターを発見するにも苦労するのを知った。

 とくに、貝と岩の区別がつきにくい。

 シャリオスに話すと「改良してもらおう」と言う事で『水中ゴーグル』の仕様変更書を入れて、実家に送ることとなった。

 次の日はサシュラの提案で技の確認。適当に切り上げてお姉さんと遊ぼうと思っていた彼だが、シャリオスが一緒だと楽しくないらしく、大人しく海辺で貝殻を拾っていた。

 世を儚むような煤けた気配だったので、ミルはそっとアルブムをひっくり返して、胸の毛を触らせてあげた。

 その後、出かけたサシュラは夜になっても帰ってこず、ミルはお吸い物をキッチンに置いて就寝。

 翌朝、お吸い物は消え、綺麗に洗われた食器がしまってあった。


+++


「本日、僕らは一階層へ進みます! 足りない物が出ると思うから、場合によっては引き返すね。今回は五階層を目指して探索予定だけど、終わらなくても二ヶ月で帰還。三人とも『水中ゴーグル』の使い心地はどう?」

「なかなかのもんだ」

「わたくしも、見やすくなって満足しています」

 シャリオスが事細かに仕様書を書いたので、いい物がそろった。

「要望書をわかりやすく書いてくれてありがとうと、父上が言ってました」

「へへへへっ」

 照れ笑いが止まらないシャリオス。

 実は海中にある鉱物をいくつか欲しいという希望が実家から来ている。必要な素材があれば強化できる魔導具がいくつかあるのだそうだ。実は不良品や低品質な魔導具でミルが死ぬところだったと、冷や汗を流していたとは知らない。

「じゃあ出発! よろしくね」

「<障壁(ウォール)>」

 泳ぐより障壁に乗った方が楽で、体力の消耗が少ないが、魔力消費量が問題だ。

 今回は様子とコストを調べるために。最初から障壁移動となっている。

 海の中だが魔導具のおかげで、不快感はない。口の中に海水が入ってもエラから出ていくので会話も問題なく行える。

 周囲は珊瑚や植物に覆われ、冒険者達が落とした装備品に、色とりどりの海藻が巻き付いていた。時折、沈んだ船が魚やモンスターの住処になっている。

 透き通った青い海は先までよく見えて、真珠貝(マハ)を探す冒険者を視認できた。

「相変わらず、美しい場所ですね。バカンスが過ぎても観光客が途絶えないわけです」

 うっとりと周囲を眺めるスールの視線の先。小魚が蛸壺(オクパー)に捕食されているところだった。蛸壺(オクパー)は海藻に隠れて獲物を待つ習性を持っているので、どこからか調達した壺にひそんでいることが多い。たまにオマルを使っている蛸壺(オクパー)がいるので、冒険者は放置している。汚そうだから食べたくないのだろう。

「あったよ、黒門だ」

 海の中に暗く底の見えない穴のごとく広がる闇があった。渦を巻く雲のようなもや――黒門だ。

 黒門は全く別の異空間へ繋がっている場合もあれば、一つの階層にいくつも存在する場合がある。黒門と呼ばれているのは、遠目で見ると閉じた門のように見え、色はそのまま黒いからだ。本当は扉などないのだか。

 周囲には進入禁止の魔法が張り巡らされている。

 潜水艦が通れるだけあって大きい。

「入るよ」

 発行された許可証が、魔法をすり抜け一行を招く。

 何人かの冒険者が指さしたが、一行は気付く前に黒門の中へ吸い込まれた。

 表面は温度の無い水のようになっており、不思議な感触がした。



 ハーバルラ海底迷宮一階層。

 黒門を抜けた先には入り口と似た風景が続いている。違うのは冒険者ではなく海兵がいることだ。彼らは五人一組で周囲を警戒しながらモンスターを倒している。通達が行っているようで、こちらを見る視線がいくつかあったが、すぐに離れる。

「話通り入り乱れてますね。警戒されている感じがします」

「我々は異物ですので、仕方ないでしょう」

「人が多いから離れて探索しよう。潜水艦の姿がないね。もっと下の階層かな」

 ぼやきながら油断なく周囲を窺い、シャリオスが示す方向へ障壁を動かす。

 海兵達の装備は体にピッタリとした水着で、口には専用の魔導具をくわえていた。エラ呼吸をするタイプではないらしい。背中の箱のような物から管が繋がっている。

「色違いモンスターばかりですね」

 入り口までに出るモンスターが白なら、ここは青いモンスターばかりだ。真珠貝(マハ)は青がつき、青真珠貝(ランマハ)と名称を変え青い貝となっている。だが、ドロップ品の真珠は価値を変える。青い物は、ほぼ青ポーションの材料なのだ。

青真珠貝(ランマハ)青棘風船(ランハリボン)青蛸壺(ランオクパー)……出現するのは話通りのモンスター、安定需要が見込める物ばかりですね」

 感心したようにスールが呟く。

 脇から突撃してきた青蛸壺(ランオクパー)を槍で一刺ししたサシュラが、無造作にマジックバッグへ仕舞う。

「かなり弱いっすね」

「慢心はなりませんよ」

「へいへい」

「はいは一回」

「へーい」

「端から探していこっか。地面歩けないのって、けっこう面倒くさいよね」

 それこそ上下左右関係なくモンスターが襲ってくる。

「足下なら障壁で防げると思います」

「じゃあお任せで」

 ミルは手足をばたつかせて泳がずに済み、内心ほっとしていた。どう考えても一番身長が低いので、同じ速さで移動できない。

 大岩の空いた穴をくぐると、上にびっしりと蛸壺や珊瑚がある。座れそうなほど大きい。

「入り口から離れるほど青くなっていくね。レベルも……よっと! 上がってる」

 倒した青真珠貝(ランマハ)に『鑑定水晶(ア・クリスタ)』を当てながらシャリオスが呟き、鉄板にかき込んでいく。

「双剣じゃなくて、銛のほうが簡単に倒せそう」

「おう、楽だぞ。けど使い慣れたやつがいいんじゃねぇか?」

「そうかも。ここはウズル迷宮でいう三階層くらいの場所だね。全部食べられるし。階層主(アートレータ)が出ないって、本当なのかな」

「条件があるのかもしれません」

 本当に仕掛けがあるか知らないが。

 探索は進み、その日中に黒門を二つ見つけ、門を起点に地図が埋まっていく。

 上層の海兵達は一日で地上へ帰還するようで、すれ違うとき魚の群れのように集まって登っていく。全員いることを確認するため、点呼を取っていた。

 時間帯で言う夜になると、岩陰を見つけ、一夜過ごす。時間経過で周囲の様子がどう変わるのか確認するためで、『あなただけの部屋(ルームキー)』は使用せず、そのまま岩の上に転がった。海藻近くはモンスターが近づいてもわかりにくい。

 砂をひたすら掘っていたシャリオスは、その中に簡易テントを張って潜り込む。

「地面は普通の生き物しかいないみたい。海ミミズみつけたけど、毒も無かったよ」

「そのうち似たモンスターが出るかもしれないですね……ひえ」

 ポイと投げ捨てると、海ミミズがにょろにょろ泳いでいく。

 順番に眠ったあとは海藻の変化がない事を確認し、探索に戻る。

 おおよその分布と広さを確認し、早朝を過ぎた頃、海兵達が再び潜ってきた。相変わらず潜水艦の姿はない。

 彼らは昨日と同じように五人一組でモンスターを狩り始めた。


 三つ目の黒門は更に進んだ先にあった。

 階層が繋がっていることを確認したシャリオスは、更に周辺を調査していく。

 小まめに『人魚のヒレ(シレーナ・フロッセ)』へ魔力を込め、注意深く周囲を窺う。

「ここの階層、情報通りだ。あそこで四つ目だから、空間が変わるのは六階層へ続く門で間違いない」

 六階層からは王国跡地となっている。

 そこからモンスターの種類ががらりと変わる。

 五つ目の黒門を見つけた一行は、周辺を捜査して地図を埋めた。

 既に二日目が終わりかけていた。



 迷宮六階層。

 黒門に顔を付けて中を確認したシャリオスが、するりと潜り込む。

 環境が一変し、廃墟が広がっていた。

「住居区かどこかでしょう。壊れた釜の痕があります」

 スールが指さす先に壊れた井戸、朽ちた教会跡に苔むした道と続き、崩れた城壁と城の跡地も見えた。今は全てモンスターの住居となっているが。

「……大きな国だったのですね」

「できるだけ戦闘を避けて、リトルスポットを探そう」

 頭上で泳ぐ鯱鋸(オルカフレッサー)が十ほどの群れとなって旋回し、他のモンスターを噛み砕いていた。

 事前に手に入れた情報では、ここも十階層までは繋がっている。

 鉄板に地図を掘りながら進めていくが、やはり広い。

 残りの期間で調べきれるか判らないが慎重さを優先する。何しろ、海軍が足止めを食らっている階層は目前だ。

 真新しい武器や防具は海兵の物だろう。戦闘の痕が生々しく残っている所をシャリオスはなぞる。

「食い残しだ」

「おい、下がれ!」

 『鑑定水晶(ア・クリスタ)』で鑑定していたシャリオスの肩を乱暴に引き、サシュラが地面深くに槍を突き立てる。水に泥が混じって視界が濁った。

 大きく後退した二人は武器を構え、ミルは油断なく障壁を張り巡らせた。

 とたん、地面から太い幹のような触手が現れる。

「噂をすれば、お出ましだ」

 絡長腕(オクトギン)は下半身がタコ、上半身が女性のモンスターだ。全身が赤くギラついた目をしており、髪も触手である。全長は三メルトを超え、牙を剥いて威嚇する様は大迫力だ。ただ美人かと問われると、タコさんウィンナーに似ているとしか言えない。

「首狙いで行くから他は牽制と補助!」

「<沈黙魔法(サイレンス)>、<障壁(ウォール)>、<鈍足魔法(スロウ)>!」

 絡長腕(オクトギン)が大量の水を吐き出す。濁った水を消し飛ばし、障壁の一部にヒビが入った。

「すみません、咆吼かと思いました。<障壁(ウォール)>!」

 足の触手を障壁で絡め取り押さえつける。

 力が強く、ミルは魔力をより込めた。

 その隙にシャリオスが飛び上がり両手を切り飛ばす。

「平気! それより鯱鋸(オルカフレッサー)がこっち来る」

 音も無く、悲鳴も無く、ただ一撃で絡長腕(オクトギン)の首が胴から離れる。着地と同時にマジックバッグに詰め込むと、一行は全力で走り出した。

「騒ぎに気付いたようです。血の臭いを追われたら難儀するかと」

「なにか策ある?」

「少々混ぜましょう」

 腕を払うと水がうねり、四方に飛ぶ。

 巻き上がった泥で周囲が濁り、視界から外れることができた。

 鯱鋸(オルカフレッサー)が上げる怒りの声を背後に、一行は退散した。



 場所は変わって無事に逃げられたあと、リトルスポットを見つける事ができなかった一行は、『あなただけの部屋(ルームキー)』の中で食事をしていた。

 新鮮な絡長腕(オクトギン)の足を使った料理である。

「一匹釣って堅さとか調べたいな……。あ、そのたこ焼きは僕が育てたやつ!」

「なんで一番俺に近いとこで育ててんだよ! もうない。飲んだ。その顔止めろ」

「……ズリエルなら食べないのに、酷い」

「比べんな」

 あしらわれたシャリオスは、ジト目で睨むと仕方なく新しいタネを注ぐ。サシュラの前に伸ばさない所を見ると学習した様子だ。

 擬似的な物でも空の下で食事をとれると心が安まるが、ミルは俯いていた。

 たこ焼きに、お好み焼きに、野菜炒め。

 その全てに食欲が湧かない。

 それもこれも、スールが絡長腕(オクトギン)は薬の材料になると助言したせいだ。バラバラの絡長腕(オクトギン)は、妙に人族に似ていたせいで、食欲が減退している。

「見た目通りの味だね。しばらくタコには困らないかも。それより全然食べてないけど大丈夫?」

「聖下は、こういった食事に慣れていないのでは? 調理してしまえば美味しいご飯ですよ」

「キュブ?」

「ひえ……、いらないので食べてください」

 食べかけ絡長腕(オクトギン)の片腕を、もしかして食べたいの、と言う風に咥えながらトコトコ近づいてくるアルブムに手の平を見せる。

「じゃあ特別に、ズリエルに供えてた、このたこ焼きを贈呈しまーす」

 ほっとしているうちに、皿の上に美味しそうなたこ焼きを山盛りにされ、言葉を失う。

「これから先もこういうことがあるから、きちんと慣れないと大変なことになるよ。あ、ソース味が飽きたらポン酢もあるよ」

「調味料が豊富でいらっしゃいますね」

「ユグド迷宮に潜ってるとき、たくさん手に入ったんだ」

 鰹節が踊る熱々のたこ焼き。

 ミルはちょっと誇らしげズリエル人形を見やると、たこ焼きに視線を戻す。食べないと大きくなれないと幻聴が聞こえた気がする。

「いただきます」

 思い切って口の中に入れ、沈黙する。

「どう? おいしい?」

「……。おいしいです」

 飲めそうなほど、中がトロトロのたこ焼きだった。

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