第 Ⅰ 話 始まりは唐突に Ⅴ
「なに? なんですか? あなろぐぶ???」
待って待って、理解が追い付けない。『アナログぶ』って何? 入部しろって事は、部活って事だよね。
「えーと、デジタルなんかに頼っちゃダメ♡ アナログこそが至高♡♡ って感じですかね?」
自分で勝手に予想してみたけど、いや全然意味分かんねー。何、アナログ部って。
「あまりふざけると痛い目を見るぞ」
ウザイ先輩が、睨み付けてきた。普段からかなり釣り上がっている目だけど、それが一段と鋭くなっている。目で人を刺せるんじゃないかと思ってしまう。
「ふざけてないですけど? 勝手に入部しろなんて命令する前にちゃんと説明してくださいよ」
一方的に意味不明で存在意義も不明な部への入部を強制させられたかと思うと、今度は一方的に怒られる。……理不尽だわ。
キレ気味に反論すると、プリン頭が私とウザイ先輩の間に割り込んできた。
「まーまー! 先に説明しない先輩も悪いよーっ! ごめんね蓮華ちゃんっ」
「は、はぁ……」
あれ、意外とこの人はまともそう……?
「そうだな。悪かった、松野蓮華。
アナログ部について、この黒板を使って説明してやろうではないか」
「その前に自己紹介っ!
私は代々木ミカエ! よろしくねっ蓮華ちゃんっ」
左目をバチンと瞑って、そこにピースを添える代々木さん。
「うむ。私は柳澤ルルだ。
それよりミカエ、私を先輩と呼ぶ必要はあるのか?」
「あるよーん。だって私留年してるし、学年で言えばルルちゃんは先輩だもんっ」
「いやな、そうは言っても……」
「もーごちゃごちゃ言わない! ほら、花霧ちゃんも自己紹介しなよっ」
代々木さんは、眠そうにこくこくと首を揺らしていたゆるふわ少女の肩をビシッと叩いた。
「花霧ですぅ……すぅぅ…………」
花霧さんは、再びごとりと机に突っ伏して寝てしまった。
この三人が部員の、『アナログ部』……。
絶対普通の部活じゃないでしょ!!
「取り敢えず話を聞け、松野蓮華。
アナログ部について説明しよう。
アナログ部は、人間の目には映らない特殊な惑星『アナログプラネット』を滅ぼす為に作られた部だ。
『アナログプラネット』には、所謂『神様』が住んでいる。」
「か、神様……?」
私が生きてきた中でも結構大きな存在、だがそれは誰かが作った都市伝説上の生き物(?)だと思っていた『神様』が住んでいる惑星……? それがアナログプラネット?
「そーそー。それでその神様とやらは、嘗て地球で生きていた人間らしいんだよねーん」
代々木さんが、教卓の真ん前の席に座る。椅子の背凭れに寄り掛かりながら、ギシギシと前後に揺れる。
「じゃあ、神様の正体は死んだ人間って事ですか?」
「そそ! おかしな話だよねん」
「いや、今のは否定してほしかったんですけど……」
この人達、もしかして頭がヤラレちゃってる? こんなアホみたいな話をクソ真面目な顔でするなんて、ほんとに██な人間の集まりなんじゃ?
こんな意味分かんない部活――すら怪しい集団に入らされて堪るか。
「それでだ。何故だかその元人間の神様が、地球を襲撃するという事案が発生してだな……」
「あの! 私はこんな厨二病じみた変な部活に入る気はさらさらありませんから! それでは!!」
こっちは明らかに呆れた顔してるのに、何真剣に語り出しちゃってんの。付き合ってらんない。わざとらしく大きな溜め息を吐いて、立ち上がって戸の方に歩いていく。
「あっ――もー、馬鹿な子」
戸の鍵に手を掛けると、代々木さんがクスリと笑った。
「バカって何――」
私が振り返るより、私の視界に柳澤ルルが映り込んだ。
「え。」
ダムッ!!!