第 Ⅰ 話 始まりは唐突に Ⅰ
ジリリリリ。
ジリリリリ。
「あーもーうるさっ!」
乱暴に腕を振り下ろすと、爆音を放っていた目覚まし時計に見事に命中する。
「朝か……」
いつものように髪を掬う。うん。今日も気持ち悪いオレンジだ。
学校へ、行かなきゃ。
『えー、現在この台風は――』
適当にニュースを見ながら、トーストを齧る。
成長していくに連れどんどんはねていく髪の毛を必死に梳かして、歯を磨いて、制服に腕を通す。ボタンは、いつも二個開けている。
「行ってきます」
私が出掛ける事で誰も居なくなる可哀想な家に告げ、鍵を閉めた。
現在、私は高校一年生になっていた。
髪の毛のせいで行きたい高校には行けなかったけど、近所の校則の緩い高校に入学した。
まあ、行きたい高校なんて特に無かったんだけど。
だって地毛だって言ってるのに染めてるだろって疑うような高校、誰が行きたいと思うのよ。もう慣れてる事だけど腹が立った。
そして、相も変わらず性格はひねくれているままだ。小学生の間は勿論、中学生になっても、私の髪の毛を受け入れてくれる人は居なかったからだ。中学受験なんて出来なかったから地元の中学に上がったんだけど、そのせいで同じ小学校出身の奴らから「松野は性格が悪いから近付かない方がいい」なんて噂を流され、見事にぼっちになった。
いやいや、確かに私が性格悪いのは事実ですけど、そうなったのは貴方達のせいですからね?
笑いが込み上げてきたと同時に、その夜は涙が溢れてきた。
中学時代までら散々な私だったけど、高校生になってから、一つだけ変わった事があった。
近所とは言え、荒れていると評判だったこの高校に、知り合いは一人も居なかった。
それにもう高校生にもなったからか、染髪が認められている学校だからか分からないが、髪の毛の事をとやかく行ってくる生徒も教師も居なかった。
まあ、この性格の悪さで友達は未だに出来てないけど。
今までずっと避けられてきたもんだから、話し掛けられても何て答えれば良いか分からないし。癖で睨んじゃうし。と言うか、話し掛けられる事自体を面倒だと思ってしまう。
友達なんて別に欲しいとは思ってないからいいけど。髪の毛の事を勝手に決め付けて煩く言ってこなければ、私は満足。
でも、今の私には一つだけ不満な事がある。