「恋愛に性別は関係ない」とか言うけど、皆が本当にそう思ってくれるなら、私はどんなに苦しい思いをせずに過ごすことができたのだろう。
注意!
・そこまで百合ではありません。
・そこまでノーマル臭もしません。
・「私」の過去で少し百合が入るだけです。
「好きです」
空は青くどこまででも広がり、夏の太陽が容赦なく照りつける今日この頃。後輩言われた言葉は、丁度私が中学二年生の時一つ年上の先輩に言った言葉だ。
とっても可愛くて、賢くて、強気で、脆い女の先輩だ。
彼はわかっているのだろうか。私のことを。わかるはずがない。だって、家族でもお互いの考えていることはわからないのだから当たり前だ。
「ちょっと意味がわからないな」
グラウンドのフェンスと並木の間。いくらこの樹木が影になるからと言っても、さすがに暑い。
額に汗をかく。それが胸元まで垂れて気持ち悪い。
「えっ?あぁ、恋愛的な…意味」
今まで生意気な後輩だと思っていたからその「好きです」の「です」が違和感でしかなかった。
先輩もそう思ったのかな。
「何で私?」
「いつの間にか好きになってた」
なら、いつの間にか好きじゃなくなることもあるのだろうか。
こういう考えは良くないな。
今も先輩が好きだ。かれこれ二年は会ってないけど。そりゃあ、いつもお喋りしていた同性の後輩が告白したんだ。両方共会いづらいはずだ。
先輩はもともと先輩の二つ上の、今大学生の異性の先輩と中学一年生の時から付き合っているらしい。それを承知して私は告白した。
フられた。
わかってた。
これが私の恋愛を縛り着けていることも。
「変なこと訊いていい?」
「う、うん」
「もし私が男だったら好きじゃない?」
「え?好きだよ」
「本当?」
「うん。……男なの?」
冗談ぽく彼が笑った。男じゃないよ。
本当に、本当に私が男でも告白してくれた?同性だよ?
保健の授業の時いつも苦しかった。恋バナを振られたときいつも苦しかった。先生や友達は「男と女」ということ前提で話す。それが皆の言う普通だから。私だけが取り残されているみたいで嫌だった。
今まで気にもしていなかった蝉の大合唱がとてもよく聞こえる。
もし、私があなたと付き合ったら先輩への思いを忘れるだろうか。苦しい思いをしないで済むだろうか。
「わかった。付き合うよ。好きだから」
きっと暑さで思考がいっちゃったんだろう。
蝉が五月蠅いな。