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第7球 召喚の真実

「私がこの世界に来たのはさっきも言った通り、3年前だ。その時の私の他に5人居た。そして今の君と同様に、訓練を受けて魔女討伐へ向かったんだ。そして忘れもしないあの夜、城で皆が骸骨兵士(スケルトン)に殺される中、私は一人で逃げ出した」


 まぁこのお飾りならやりそうだ。それに、急にこんな世界に連れて来られて奴隷にされてじゃあ仕方ないとも言えなくもない。


「無様にただひたすら自分の命可愛さに逃げ出した。命令は成果を出して来いだったから、私は仲間が殺されている間に城の中から剣や宝石を持てるだけ持ってな。領地に戻ったら殺されるかと思ったが、むしろ歓迎された。」

 

 何故だ?確かに成果は出したかもしれないが、敵前逃亡はマズイんじゃないのか?


「持ち帰った剣や宝石の質が良かったのと、私に人族特有の魔法である時空魔法の適性が高いことが分かったからだ。お陰でこの時奴隷の腕輪も外してもらってね。その時に口の軽い兵士に腕輪について教えてもらったんだよ」


 昨日言っていた7種類以外の例外か。特定の種族って言っていたけど、人間にも有ったんだな。時空魔法って便利そうだな。時間止めたりできんのか?そんなことができたらあの自称神様に貰った能力より強そうだ。……にしても、どこにでもいるもんだな口の軽い輩ってのはさ。


「3年後にまた異界から人を召喚するからその時に役立つ為に時空魔法の研鑽に努めろと言われ、私は頑張った。あの時は日本に帰れるかも知れないと本気で思っていたからな。だが、ダメだった。あの夜から2年後、いくら極めても帰ることはできないと知った時は運命を呪った」


 その前からお前は呪われてんだろ、見殺しにした5人に。


「やる気をなくした私の待遇はどんどん悪くなった。以前は豪華な一人部屋で3食昼寝付きだったのが、今じゃ物置のような部屋に放り込まれて一日2食でしょぼいものだ」


 一度上がった生活水準は下げられないって言うしきつかったんだろうが、自業自得じゃね?


「そして1週間前ついにその時が来た。3年の研鑽の日々の成果を示す時が」


 帰れないと分かった後の1年ってちゃんと頑張ったの?


「異界からの召喚の儀式はここの領主によって何度も行われて、準備は手慣れていた。私が儀式の場へ着いた頃には、既に私は魔法を発動させるだけの状態だったくらいに。その上今回は、私が魔女の城から持ち出した宝石の中に召喚の補助に使える物があって過去にないくらい万全だった」


 どうしても自分語りでは自画自賛を入れないと気が済まないのか?あんたの評価がマイナスである以上、更にマイナスポイントが積まれるだけなんだが。しかも、あんたは準備ができた場に行っただけじゃん。


「あの時は儀式を成功させてまた豪華な暮らしに戻ることしか考えていなかった。そして、儀式は成功した。大成功だった」


 言葉とは裏腹にお飾りは悔し気に、そして恨みがましく続けた。


「だが、召喚の儀式は私の思い描いた形ではなかった。召喚に成功した飛行機は飛んでいた時の運動エネルギーを失っていなかったんだ。そのまま飛行機は地面を滑り、大破した」


 え?お飾りは()()()()()()()()()()()()()訳ではなく、()()()()()()()()()()()()のか!?じゃあ……。


「その後の私はただ呆然と、兵士達が救助に当たってるのを、何人もの人々が運ばれていく様を見ていることしかできなかった。何も……できなかった」


 つまり召喚されたのが19人ではなく、召喚されて生き残ったのが19人だってことかよ!なんてこった!そうなるとあの自称神様の対応が雑だったのも、少し納得できる部分も出てくる。100人以上の召喚される人々全員に能力を与えても、ほとんどが召喚後すぐ死ぬんじゃあ能力を与える意味がなさすぎるからな。

 俺の0.1以下だった裸眼の視力が1.0以上にはなっている上に、飛行機が大破するような事故に巻き込まれても回復できる【健康】の能力でも回復できない人が大勢出ていることになる。それじゃあ気の入れ方も雑になるか。


「その上、あの儀式の後に本来術者は死ぬはずだったらしい。だが今回は私の技量と盗んだ宝石の効果で命を取り留めたようでな。結局儀式の前と変わらなかった。いや、白髪が増えたり、3年前に外してもらった奴隷の腕輪も再び付けることになったな」


 それは運が良いのか悪いのか。お飾りは結局元のポジションに戻っただけ、だがポジションは同じでも異なるものが大きすぎる。

 お飾りは自らの手で大勢の人を間接的にとはいえ殺してしまった。奴隷の腕輪をしていたのなら、腕輪の強制力云々でと自分に言い訳もできたであろうが、お飾りは自分の地位や待遇向上のために進んで召喚を行ったのだ。生き残れて良かったで終わらずに嘆くのも当然か。



 だが、お飾りは結局お飾りだった。今度は声に怒気を漲らせて、両手の拳で机を叩きながら喚いた。


「どうして私がこの様な目に遭わなければならない!私が3年間努力し、召喚には成功した。そして成果を出したというのに!全て私のおかげで!私の力で!」


 いやいや、儀式の準備したのは兵士達だろうよ。全てってお飾りの中ではそれすら自分の手柄になってるってこと?その思考回路どうなってんの?

 

「ふぅ……取り乱してすまない。まぁ私の話はこんなところだ。時間的にもここで今日は終わりにしよう。君からの質問は明日からでいいかな?」

「“はい”」



 俺はお飾りとの時間が終わって直ぐに部屋へ戻ると、明日のどんな質問をしようか考えながらベッドへ潜った。結局考えた質問は一つもできないことなんて知りもせずに。

誤字脱字等御座いましたらお手数ですがご連絡いただけると幸いです。

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