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第5球 魔法

「………“いいえ”」

「じゃあ昔は居たの?」

「……“いいえ”」

「えぇ!じゃあ今まで彼女居た事ないの!?」

「…“はい”」

「じゃあ、ヤッたこともない?」

「“はい”」


 あぁ……どうしてこうも揃いも揃って初手で同じような質問をするのだろうか。ある程度以上の世代のオヤジ共は……恐らくはまず仲良くなって、会話をしやすくしようという気遣いの心からこの話題提供なのだろう。

 奇跡的に趣味が合致していたりでもしなければ、自身の趣味の話題は白けてしまうことが多い。昔からの飲む打つ買うなんて言葉があるし、その中から若いんだから女だろうとでも思ってんのかなぁ。あるいは下世話な話こそ打ち解けるのが早いとか思って、初球から投げてくるのか?あぁ面倒くさい。しかも、こう来るとこの後の流れも……。


「そ、そーなんだー。いや~俺が若い時はな?×××××××××」


 ハイッ!聞きたくもない自分語り入りましたぁ!あーうっぜ。まぁ明確な共通の話題が無いのだからしょうがない。数ある話題の中から女を選んだのも、最近若者のアルコール離れやギャンブル離れなんかが取り上げられていたし、酒や博打が良くないこと、みたいな風潮あるしな。でも、○○系男子とかいうあからさまなレッテルだって張られてるし、取り上げられているのになぁ。んで、最後の締めに……。


「××××。だからな?お店でも良いからさ、兎に角一回やってみ?世界が変わっから」

「…………“はい”」


 散々マウント取って最後にこれだよ。何良いこと言ったみたいな顔してんだよ。どうして“自分の若いころはそうだった”に絶対の自信を持って若い奴に押し付けるのだろうか……。せめて自分が良い年になったらこうはなりたくないものだなぁ。



「まぁ雑談はこの辺にしておいて本題に入ろう」

「……“はい”」


 今更やり手管理職モードになってもおせーんだよ。もうあんたはお飾り管理職だ。


「まず君はこの世界に来る時に神様に会ったかい?」

「“はい”」

「その時に恐らく【健康】と【言語理解】を貰っていると思うのだが?」

「“はい”」


 これは素直に答えても問題ないだろう。ピンポイントで神様と2つの能力の名前が出ているし、余計な反応をして変にこっちの痛くもない腹を探られても面倒だ。


「その【健康】の効果によって、身体はこちらの世界に来るよりも強化されているみたいだ。具体的には身体能力の向上や、治癒能力の向上が見られている。【言語理解】は体験していると思うが、知らないはずの言語で意思疎通できるようになっている」


 【言語理解】はもう体験して分かっているけど、【健康】の効果はどうなんだろうな?今日起きてから感じた痛みが引くのが早かったんだろうか?イマイチ実感できてないな……。

 あっ!視力がコンタクトをしていないのに良くなってる!飛行機の中では眼鏡だったから間違いない。眼鏡はどっかいっちゃったけど、視力が良くなったならおつりがくる。

 俺が頷くとおじさんは続けた。


「次だ、君はもう自分の特殊能力(カリスマ)は知っているかい?」

「“はい”」


 俺の特殊能力(カリスマ)は【超集中力】と【観察眼】の2つだった。どちらもどういった能力なのか詳細が分かっていない。分かっているのは【超集中力】がメジャーで【観察眼】はマイナーだってことぐらいだ。


特殊能力(カリスマ)について細かい説明は受けたかい?」

「“いいえ”」

「なら特殊能力(カリスマ)について私の知る限りを教えよう」

「“はい”」

「まず特殊能力(カリスマ)には意識して使えるものと使えないものがある。前者は使おうと思えば何時でも使えるが、後者は一定の条件の下で自動的に発動するみたいだ。そして、多くの場合基本的に両者とも使用時に魔力を消費する。特殊能力(カリスマ)の効果の高いものほどそれは顕著で、消費される量も多いようだ」


 へーそのあたりはゲームっぽいんだな。あとで試してみるか。


「そして、特殊能力(カリスマ)のレベルに関してだがレベルは0~7の8段階。これは使い込むほどに上がっていくらしい。だが、上げることが必ずしも良いことではない。稀にレベルが上がると効果が格段に良くなるものがあってな、その良くなった分だけ魔力の消費量も多くなって、扱いが難しくなるようだ」


 熟練度制な上にレベルが高ければ良いってものでもないのか。これは面倒だなレベルが上がったら、逐一安全な場所で一度試さないとだな。


「私が知っている特殊能力(カリスマ)に関した情報はこのくらいだ。次に魔法に関しての情報に移っていいいかい?」

「“はい”」


 うぉー来た来た!魔法ですってよ。俺はどんなのが使えるのかなぁ?これは期待が高まりますよ。


「じゃあ、魔法についてだがまず魔法には誰にでも修練で使えるようになるものが7種類。他に特定の種族が使うことができる種類もあるが7種が基本だ。まず、火、風、土、雷、水の5種は一つずつ有利になる属性と不利になる属性を持っている。火は風に強く水に弱いのようにね。この辺は君の世代だと理解が早いんじゃないかな?」

「“はい”」


 これは直ぐに飲み込めた。風は土に強くて火に弱い、土は雷に強くて風に弱い、雷は水に強くて土に弱い、水は火に強くて雷に弱いだろう。ポ〇モン世代だからな!秒で理解できた。伊達に第一世代からやってないぜ。最近のはもう良く分からないけど。


「そして、残りの2種は白魔法と黒魔法。白魔法は傷の治療や、身体能力の向上の効果。黒魔法はその逆で、傷の治りを遅くしたり、身体能力を低下させるらしい。」


 要は白魔法がバフで、黒魔法がデバフってことか。


「次に先ほど誰にでも修練で使えるようになるとは言ったが、人によって魔法の適性が決まっていてな、これは髪の毛の色で判断できる。赤髪なら火属性、銀髪なら風属性、茶髪なら土属性、紫髪なら雷属性、青髪なら水属性、金髪なら白属性、黒髪なら黒属性といった見分け方だ。赤髪なら火属性の魔法の習得や洗練する時間は比較的短く済むが、風、土、雷、水の順に段々と習得に時間が掛かる様になっていくそうだ。白と黒は土と同じくらいの時間が掛かるらしい」


 なるほどなー。じゃあ、あの辺境伯とか騎士っぽいおっさんとかみんな茶髪だったから、土属性の適性が高いのか。その場合、白と黒魔法は水魔法の取得と同じくらい時間が掛かるわけか。ふむ、なら俺やこのお飾り管理職は黒魔法の適性が一番高いのね。デバフかぁ、なんか期待してたのと違う……。


「そして、この髪の色っていうのが問題でな、多くのの人達、人間族は茶髪で、金髪や赤髪が稀にいるって感じらしくてな。悪いことに黒髪はこの世界の魔族しかいないらしい。故に黒髪は疎まれ、侮蔑の対象になっている。更に私のように白髪が混じっているのは美しくないとされ、軽んじられる。君も私ほどではないが注意して見ると分かるくらいには混ざっているからな……厳しいだろう」


 マジかよ……。それで感じ悪い奴が多かったんだな。てかそれじゃあこの世界どこ行ってもダメじゃん!あーあ。


「まだ伝えられることはあるんだがすまない、時間(タイムリミット)だ」

「分かりました、ありがとうございました」


 聞いていて恐らくだが、このお飾り今のところ嘘はついていないと思う。もう少し話を聞きたいし、敵対関係にはならないように振舞おう。


「今日はもう何もせず寝た方が良い。私の時と同じなら明日から討伐へ向けての訓練が始まるはずだ。万が一特殊能力(カリスマ)を使ってへばっていると酷い目に遭う」

「ご忠告ありがとうございます」

「あぁ気を付けて帰ってくれ、また明日同じような時間に頼む。それと、君が来た合図として部屋へ入る前にノックを連続で4回してくれ」

「分かりました。じゃあ失礼します」

「おやすみ」



 その後は何事もなく部屋へ戻りすぐに寝ることができた。明日からが不安だったが、思ったより疲れていたみたいだ。

誤字脱字等御座いましたらお手数ですがご連絡いただけると幸いです。

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