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第1球 目覚めるとそこは

プレイボール

 目が覚めると今度は天井があった。薬品の匂いもする。


「うっ……」


 体を動かそうとすると痛みで声が出た。

 なんとか体を起こすと自分が見慣れない服を着て、見慣れない部屋にいることを把握する。


「ここ……どこだ?」


 空港の医務室……じゃなさそうだ。飛行機事故?が起こって変な夢を見た事は覚えてる。生きてるってことは、海に落ちた後どこかに流れ着いたってことか?神はいたんだな!


「あぁ、気が付いたんですね」


 修道服を着たお姉さんが俺のベッドへ向かってくる。


「すみません、助けて貰っちゃったみたいでありが――」

「立てますか?」

「え?」

「立てるかって聞いてるんですよ。分かります?」

「え、えぇ……なんとかいけそうです」

「じゃあ、付いて来てください。」

「は、はぁ」


 多少体は痛むが行けそうだ。ツカツカと綺麗な姿勢で先を行くお姉さんに付いて歩く。さっきまでいた部屋から一歩出ると、真っ赤な絨毯の敷かれた廊下に出た。直ぐ目の前の大きな窓から外を見ると整えられた庭園が見えた。

 うわぁーすっげー成金っぽーい。うわっ高そーな壷が飾ってあるし。あれ?何だこの左手首の腕輪。今気が付いたけどこんなもの知らんぞ。時計だって着けるの好きじゃないのに……。


「……聞いてます?」

「あっ、す、すみません」

「チッ……いいですか?今向かっているのは我が主の待つ謁見の間になります。くれぐれも粗相のないように」

「は、はい」


 やっべ怒らせちゃったな。ついつい余所見しちゃった。つーか主?謁見の間?俺そんな大層な人に助けられたの?はーやっべ、ちゃんとお礼しないと。

 廊下を抜けると大きな広間へと出た。


「こちらで主がお待ちです。どうぞ」

「あ、ありがとうございます」


 お姉さんがドアを開くとそこは大きなシャンデリア、知らない動物の剥製、騎士を模した像等、”私はお金持ちです”という自己主張が過ぎる部屋だった。


「お前が最後か、こっちに来い」

「えっ」


 部屋へ入って直ぐに騎士っぽいおっさんに腕を捕まれて俺と同じような格好をした人達の所へと連れて行かれた。だいたい20人ぐらいだろうか?

 おっさんは俺を乱暴に人々の群れへ放ると、玉座に座る男の前へと進み跪いた。


「今回はこれで全員です」

「そうか、まぁこんなものだろうな」


 おっさんは脇で並んでいる他の騎士?の列に加わると、男は立ち上がり、人々の注目を集めると口を開いた。


「私はラムンティ王国が辺境伯ゴシ=ボーク=デービッタソンである」


 ラムンティ王国?辺境伯?現代に爵位?聞き間違えたのか?つーかまさか本当に……


「貴様達は我が領地の魔術師によって異界より招かせてもらった」


 うそやん……。あれ夢じゃなかったのかよ。


「貴様達には異界から招かれた者の使命として私の指揮下に入り、忌まわしき魔女の討伐へ向かってもらう」


 いきなり討伐に行けと来ましたかこのおっさん……もとい辺境伯はよぉ。しかもすげー命令口調だな、使命ってなんだよ!お前が勝手に呼び出したんだろうが!はっきり言って不快だな。


「貴様達はこの世界に来るに当たって何らかの特殊能力(カリスマ)に目覚めているはずでな、その能力に沿った装備をそこの部屋の中から選ぶがいい。討伐遠征の予定は1週間後、それまでに各々特殊能力(カリスマ)と装備の確認を済ませ英気を養っておけ。以上だ」


 なんたら辺境伯はそれだけ言い終えると早々に立ち上がり謁見の間を肩で風を切りながら歩き去った。今度はあの辺境伯の前で縮こまっていた、さっきの騎士っぽいおっさんがこれまた偉そうに指示を出してきた。


「貴様ら同室だった者同士で一列に並べ!さっさとしろ!」


 状況に流されっぱなしだった俺達の中でいい加減に限界に来た人々も居たようだが、おっさんが腰の剣をチラつかせて黙らせていた。皆厄介ごとはごめんだと列に並んでいく。 

 だが、俺は同室の人に心当たりが無い。仕方なくおっさんに声をかける。


「あの~すいません」

「貴様列に並べというのが分からんのか!」


 至近距離でデカい声だしてんじゃねーよこのおっさん!口が臭いんだよ!


「自分同室の人ってのに心当たりがないんですけど」

「貴様何を言ってる!同じ部屋から来た者がいるだろうが!そいつらで列を作れと言っている!」

「いや、自分一人だったはずなんですが」

「貴様いい加減にッ……ッチ貴様最後に来た奴か。そういうのは最初に言え!」


 おいおいふざけんなよ?てめーが勝手に決めつけて喚いてたんだろ?そういう理不尽は3ヶ月前にさよならし……あぁ嫌なこと思い出しかけた。落ち着けー落ち着けー俺。


「ふんっ、なら貴様は最後だ適当に待ってろ」

「……分かりました」

「貴様なんだその態度はこの剣の錆にし――」

「すみませんでした。そこで待機しています」


 声に感情を込めずにさっと頭を下げ、俺はおっさんから離れた。おっさんの方は舌打ちし悪態をつきながらも、出来た列の一同と一緒に装備が用意されていると辺境伯が言った部屋へ入っていった。あーくっそ本格的にクソ上司を思い出しちまったじゃねーか!

 

「あいつ調子乗ってんな」

「俺達を舐めてんのか」

「ふざけんじゃねーぞ」


 あのおっさんの部下らしき奴らが敵意を剥き出しでこっちを睨んでくる。同じ境遇のはずの人達からの目が痛い。中にはあからさまに侮蔑の視線を向けてくる人も居た。

 あんたら最初からやり取り見ててくれたのか?どっかのテレビニュースみたいに場面切り取って見てたんじゃない?いや違うか、面倒を起こしてるんじゃねーよって視線か?そっちの方だと信じたいな、まだマシだ。

 腹立ってきたから、あの野郎が適当に待ってろとか言ったし玉座にふんぞり返って座って待っててやろうかな?……やめよう、後が面倒だ。


 20分もした頃に列がなくなり、おっさんの部下たちは列の人達と一緒に部屋の中に入った為、俺と俺を謁見の間に案内してくれた修道女(シスター)のお姉さんの2人になった。

 ちょうど聞きたいことがたくさんあるし、お姉さんにちょっと質問してみよう。


「あの~」

「………」

「あの~すみませーん」

「………………………」

「ちょっと質問よろしいでしょうか?」

「…………………………………………」




完全にガン無視された。

まさか2話投稿時点で見てくださって評価をしてくださる方がいるとは夢にも思いませんでした。ありがとうございます。

誤字脱字等のご指摘が御座いましたら是非お願いいたします。

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