徒然チャット1
それはイタリアから帰国してすぐのことだった。
『Fromm私:そんなに幼い顔をしているのかしら? でも事前に見学申請しておいたし、パスポートのコピーも送ったのよ? 失礼だわ!』
私は週に何度かチャットを使っている。
最近は機能が充実したものが豊富で、設定した言語に自動的に変換されるので使いやすいのだ。自分のパソコンの画面には、“Fromm私”と表示されるけれど、他の人にはFromm blueと表示されているはずだ。チャットの設定の際に、blueと入力したから。青という意味だけど、青は私の名前の一部だから、そう決めたの。
今日は先日イタリアであった出来事を話していた。
『Frommバナナは友だち:確かに君は我々から見れば若いな』
ドイツのバナナ好きはもう病気だと思う・・・
『Fromm私:年齢はあなたより年上よ!』
でも確かに、いかつい容姿の彼は私より年上に見えたから強くは言えないけど。
『Fromm友だち欲しいアメリカ人:年齢の問題ではない』
ひどい!
『Frommピッツァ食べたい:あれは笑えた。子どもに見えるから入館禁止とか。君はどれだけ可愛いの。でも突然暴言言うのは禁止。相手に伝わっていなかったからよかったものの、君って危険人物だよね』
毎日食べてるくせにピッツァ食べたいとかいうな、イタリア人!
でもどうして「爆ぜろ」なんて日本語理解できたのかしら?
前に彼の前でピザって言ったらすかさずピッツァと言い直された。細かい所にこだわる男だ。
『Fromm友だち欲しいアメリカ人:確かにちいさくて可愛い。声も魅力的だ』
アメリカの彼はネット上ではよく喋る。でも人との交流は大の苦手で、自宅と職場である図書館との往復でしか外に出ない引きこもり。あ、でもコーヒーは好きみたい。前に御馳走になったコーヒーの味を思い出した。量が多くて最後の方気持ちが悪くなったんだ。
『Fromm私:ありがとう。でも多分、ピッツァの人はそういう意味で言っていないわ』
『Frommお洒落は正義:どういう意味だとしても、君が可愛いのは事実だ。まるでお人形のようだよ。そうだ、今度君のKIMONO姿を見せて欲しいな』
あんたは喋らなければ確かにお洒落だ。きっとこのメンバーの中で一番お洒落だという自負があるのだろう。フランス人ってすごい。
『Frommバナナは友だち:日本は今夏だ。夏はYUKATAを着るのだろう。私も興味がある』
『Fromm私:YUKATAならこの間お祭りの時に着たわよ。でも写真は撮っていないわ』
『Frommピッツァ食べたい:これこそMOTTAINAIだね!』
『Fromm私:もったいない、の使い方が間違っているわ。そもそも、どうしてもったいないのよ。自分の写真なんて撮らないわよ』
『Fromm友だち欲しいアメリカ人:僕も見たかった』
・・・え。
『Frommバナナは友だち:私も見たかった』
・・・ええっ。
『Frommお洒落は正義:4対1だ。写真を楽しみに待っているよ』
はあぁ!?
『Fromm私:いや、ちょっと』
『Fromm友だち欲しいアメリカ人:うれしいよ』
いやいや、なんで!?
そんな話じゃなかったでしょ!?
『Fromm私:夏はもう終わりだから、今年はもうYUKATAは着ないわよ』
しばらく返信が誰からも来なかった。
おい!?