徒然チャット9
日々のチャットを楽しんでしばらくが経った頃。季節は春。葉桜が木々を染める季節に、その一方はやってきた。
『Fromm友だちできました:blueいるかい?』
『Fromm私:ええ、いるわよ』
『Fromm友だちできました:今度日本に視察に行くことになったんだ。以前やった展示の成果が認められて、日本の図書館事情を調べて来いって上司に言われたよ』
『Fromm私:凄いじゃない!』
『Fromm友だちできました:それで、blueは公共の図書館と大学の図書館に詳しいだろう? 案内役を頼みたいんだ』
・・・ん?
『Fromm私:案内役なら、協会に頼めばいくらでもやってくれると思うわ』
『Frommバナナは友だち:blue。俺も行こうと思っている』
『Frommお洒落は正義:なにそれ、いいな。俺も上司に掛け合ってみよう』
『Frommピッツァ食べたい:日本に行くの? よし、俺も上司に聞いて来よう』
・・・え?
『Frommバナナは友だち:実は俺も、blueに借りた展示をやったところ、来館者が7倍になったんだ。その時だけだったけど、これを機にもっと頑張ってくれと言われてな。ドイツも日本ブームはまだ去っていないから、上手くいきそうな気がする』
いや、あんたら遊びたいだけだろう!?
『Fromm私:うーん。でもうちの大学図書館は弱小だし・・・案内は出来る範囲でするけど、一応正式な依頼なら協会を通してね』
つーか絶対面倒くさいに決まってる。誰がやるか。
『Fromm友だちできました:わかった。じゃあ、そうするね。君の名前も挙げておくから』
そんな気遣いはno thank youだよ。
『Frommピッツァ食べたい:何としてでも上司を説得してやる!』
どうしよう絶対面倒くさい方向に行ってる!
『Fromm私:いや、まあ、機会はこれから作って行けばいいんじゃないかなと』
『Frommピッツァ食べたい:はあ? なに言ってるんだよ。時は金なり。日本の言葉だろ。思い立ったが吉日だし、行きたいときに行かないでどうするんだ』
こいつ、日本かぶれてきたなぁ。
『Frommお洒落は正義:その通りだ。それに、君にもう一度会いたいしね』
『Fromm私:お洒落の国の人は前回ずいぶんと女の子のお友達が増えた様で?』
『Frommお洒落は正義:俺の魅力はどこに居ても伝わってしまうよね』
あ、ちょっとイラッときた。
『Frommピッツァ食べたい:ともかく、俺も日本に行くから! 今度は仕事だからちゃんと日付調整しよう』
時間を守れない国の人々が何か言ってる・・・いや、仕事ならちゃんとするんだろうか? そういえば普段忘れがちだけどこいつら一応エリートなんだっけ?
世の中のエリート基準は間違ってると思うの。真剣に。
『Frommバナナは友だち:決定だな。二人はきちんと上司を説得するように』
『Frommお洒落は正義:誰に言ってるんだい。当然だよ』
『Frommピッツァ食べたい:もちろんだ』
こいつら、こういう時は仲が良いよね・・・別に疎外感なんてないんだから。
そして彼等は本当に一月後、またしても日本にやって来た。
一週間の滞在で、12の公共図書館と、7つの専門図書館と国立国会図書館、そして5つの大学図書館を巡った。
私が案内したのはそのうちの6つだけど、彼等はとても真剣に仕事をしていた。
そこで新たにイギリス紳士と出逢ったり、協会の若きエリートと出逢ったりと忙しかったが、当初予想していたよりは楽しい日々を過ごした。
けれど毎晩飲み歩く彼等の体力には、心底驚きと呆れを覚えた。




