気が付いたらバイリンガル。でも便利な時代なのでPCは手放せません。
キャラクター同士の会話に性的な内容が含まれる可能性がありますので一応R15指定させていただきます!
新しいタイプの友人が出来たのは、今からちょうど一年半ほど前だった。
もともと外国語アレルギーだった私は、転職を機に克服を決意。しかし自分に甘いタイプなのでどうにか自分を追い込む方法を考えていた時に出会ったのがペンパルというものだった。
ペンパルと聞けば文通というイメージは古い。今はもう普通にメル友だ。
中には出逢いを求め、ふらちなことをするために募集を出す人も珍しくはないようなので、相手を探す時はドキドキしたものだ。
そして知り合ったのは可愛らしいドイツやフランス、アメリカの女の子だった。
トラブル回避の秘訣は歳の近い同性を探すことと書いてあったのでそうしたら、見事に素晴らしい友人を見つけた。
けれど、どうしたことか。
女の子たちが気を利かせて私に男性を紹介してくれるようになってしまった。
真面目で地味。融通がきかなくて面白みのない仕事人間(女)の代表。それが私だ。
日本国内において仕事に生きる女子は決して珍しくないが、恋愛を楽しまない女子は世界中で珍獣扱いだ。彼女たちの行動は決して間違ってはいないのだろう。
紹介してくれたのは全員が美形男子だったし、仕事も私と同じなので会話も弾む。
しかし、世の中にはこんな言葉があるだろう?
うまい話には裏がある、と。
美形でも毒舌。美形でも女嫌い(私や友人は女ですらないようだ)。美形のくせに引きこもり!
ああ、彼らが本国においてモテない理由がよくわかる!
実際に話してみて本当によくわかった。男は見た目ではないのだ。そりゃあ、超お金持ちとかなら女がむらがるだろう。しかし、地味な仕事に頑固な考えでは、なかなか結婚相手どころか恋人すらできないだろう。
その人はフランスの図書館に勤めていた。
フランス人らしくお洒落に気を使い、女性のエスコートも完ぺきだった。
しかし、一度国の政策や図書館のことを語らせると、周りに座っているフランス人ですらドン引きの様子で見ていた。私はどんどん早口になっていくフランス語を聞き取れなくてぽかんとしていただけだったのに、なぜか気に入られたらしい。その後四日と言わず連絡を寄越す相手に、正直困惑している。
その人はドイツの図書館に勤めいていた。
真面目で堅実。文章も日本人に近い書き方をするドイツ人は、はじめから好印象だった。
出逢ったその日、私たちは一軒のカフェに入る。落ち着いた店内では数名が静かな時間を過ごしていた。
ブラックコーヒーを楽しむ私と、同じくコーヒーを楽しむ彼。そして彼の前にだけ置かれたバナナたっぷりのパフェ。バナナを6本も使った贅沢品だという。
なぜバナナ。しかも6本のうち4本はただ生クリームとアイスに刺しただけのそのままの姿!
彼は無表情に淡々と、しかし次第に熱く図書館事情について語ってくれた。
彼はふと我にかえると、にっこり笑って握手を求めた。
こんなにも素晴らしい友と出逢えたことが素晴らしいと言っていたが、はていつから友人関係だったのか疑問だ。
その人はアメリカの図書館に勤めていた。
陽気なイメージを持ちやすいアメリカ人だが、黒人系の彼は幼少期から迫害を度々受けていたらしく少々陰険だった。
一日中部屋にこもり大きな背中を丸めては作業に没頭していた。
こちらも相手の邪魔をするのは面倒だったので放置していたら何故かお茶に誘われた。
さすがアメリカ。ビックサイズのコーヒー(でも一番小さいやつなのに!)を飲みながら彼は無言を貫き通した。
どうしたアメリカ人。あんたらお喋り好きだろう!?
どうすればいいかわからなかった私は、時折外を眺めてはのんびり過ごした。
やがて二時間ほど経ち(彼は本当に一言も喋らなかった!)、私たちは店を出た。
彼からはその晩メールが入っており、今後同志として仲良くやっていきたいという意味不明な文章が並んでいた。
何の志を同じくしたのかは知らないけれど、とりあえず了解の意を返しておいた。
アメリカ人の彼の紹介で出逢ったのはイタリアの図書館に勤める人だった。
陽気で人懐っこい性格をイメージしていたのに、彼はとても硬派だった。
確かに私の容姿を褒めたけれど、それは最初の2分間のみ。その後は流暢にイタリア語で何か言っていた。どうやら褒めた後に貶していたらしい(なんとなく)。実に性格の悪い男だ。
しかしこちらも負けるのは癪だったので、覚えたてのイタリア語で「気の小さい男だ」と言い返せば黙った。その後ムッとした顔を隠さず図書館の案内や観光に付き合ってくれたが、薄いピザを食べた瞬間笑顔が戻った。子どもか。その後は機嫌よく行動を共にした彼はきっと、空腹だったから不機嫌だったんだろうと思うことにした。
その晩電話がかかってきて長いこと口説かれたが「眠いから寝る」と言って切ったら、翌朝メールが届いていた。
君のように強くたくましい女性は初めてだ。ぜひ俺と親友になってくれ。そして二人で図書館の未来を真剣に考えよう!
もう他に同志がいるから、入りたければ入れと言えば彼は了承した。
なんだろう、外国人は仲間意識が強すぎないか?
そんなこんなで知り合った私と彼らはインターネットを通じてやりとりを重ねた。
そして二度目に会いに行ったとき、彼らは前回とは違う図書館を案内してくれた。
フランスの大学図書館や公共図書館。さすがフランスと思わせるスタイリッシュかつ美しい図書館に感動したし、時々嫌味を混ぜてくるもののスマートに案内してくれて助かった。でも夕食時のあのとろんとした目つきはやめろ。正直気持ち悪かった。
ドイツの公共図書館は、図書館法が最近できたばかりのうえ、州によって状況が違い過ぎるために、行く場所によって雰囲気が全く違って面白い。
昼から飲むビールは本当に最高だ。そしてドイツ人は飲ませておけば元気が出るらしい。
でもいちいち料理が多いのが気にかかる。
アメリカの図書館は、こちらが司書であると知った瞬間いきなり仕事を頼んでくるので驚く。見学に来ただけだと言っても無駄だった。日本では同じ司書でも絶対に初対面の相手に仕事を任せたりはしないのに、これぞアメリカ。フリーだ。
キャベツの入っていないホットドックがうますぎて翌朝は体重計に乗れなかった。
イタリアの図書館では入館を断られた。未だに南と北では色々と違うイタリア。まさか断られるとは思わず、隣の案内人を見上げると彼もぽかんと口を開けていた。
いわく、子どもは入館禁止。いや、大人だし。司書だし。てゆーか事前に見学手続き取っ手あるし!?
しばらく出入り口でごねると(もちろん私が)、肩を震わせて案内人が事情を説明してようやく、しぶしぶ中に通され厳重に身体チェックをされたうえ、パスポートを見て仰天したあげく、不躾に頭から足先まで見られたあと一言。東洋の魔女は存在した。
爆ぜろと瞬間的に日本語で言えば、案内人が慌てて私の口をふさいだ。言われた方は不思議そうな顔をして未だに私を見ていた。