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蒼刻の彼方に  作者: ドグウサン
2章 突破する者達
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【柱なる者達】 開幕

本日は上げる内に上げておきます。

やっと闘技大会まで漕ぎ着けました!

少年漫画の王道、だが人気がなくなると直ぐに打ち切られるもの、大会。

無事、最後まで投稿したいと思います。

喝采と喧騒。

血なまぐさい場にあって、それは歓喜の象徴。

今か今かと待ち望んだ観客たちはテンションの納まりを見せず、高まりを増進させていく。

視線の中央に広がったフィールドは、観客たちを満たすもので展開されていた。

血と熱。

中央に繰り広げられであろう、原始的な行為。

されど、高度なもようしに誰もが目を血奔らせていた。


「もう直ぐ出番ですが、…心配は無用ですね。

その様子では」


かけられた言葉に、ティアは内心でそうだなと納得していた。

観客という体験のないファクターがあったとしても、今の心境に波はない。

穏やかな水面のように、迫る刻を待つ。


「しかし、出番が後の方で良かったですね、テリト先生。

寝呆けて遅刻しただなんて、師匠としては間の抜けたことこの上ない状況に陥らなくて」

「どうして、お主はそんな物言いしか出来のかのぅ」


心底ゲンナリしたテリトは、顔に疲労を称えながら重い口を開く。


「骨の髄まで疲労しきっている老人をいたぶりよってからに」

「当然と言えば、当然です。

あれだけの戦闘を1日も繰り広げて、半日で回復している方がおかしいのです。

寧ろ、テリト先生の方が人として正しい」

「…カイル、人を化け物みたいに」

「どういう精神構造しているのか、正直検証したい気分ですよ。

綱渡りのような戦闘を長時間繰り広げれば、人は軽く精神崩壊を起こしますよ。

こなせるのは、人ではありません。

疲労の果てに倒れて決着とは。

全くもって怪物ですね、貴方は」

「うわ~、人を体力馬鹿みたいに言って除けたよ、この人」

「馬鹿じゃろ」

「馬鹿ですよ」


ティアの反論は、バッサリと2つの馬鹿で斬られる。

座っていた椅子を持ち上げ部屋の隅に陣取ると、ティアは膝を抱えて静かに涙する。

死合はほぼ1日を費やされて、行われた。

その間に気の緩みはなく、互いの必殺が飛び交うまさに死闘だった。

ティアの成長に合わせ、次第に攻撃の密度を上げていく。

殺しを前提とした攻撃ではなかったが、容易く躱しきれるものではない。

それを次々に看破し、テリトの体力が尽きるまで付き合い続けたティアの異様なまでの体力は、半眼するしかなかった。

だが驚くべきは体力ではなく、その際どい攻撃の波を24時間接し続けたティアの精神力だ。

最後は、疲労に足を取られたテリトが、ティアの疲労に溺れた腕で放たれた拳を頬に受けて、崩れ落ちてしまった。

ティアも、そこで糸が切れたのか、続くように昏倒してしまった。


「さて、冗談はさて置き」

「もっと早く本題に移ってくれよ。

精神的ダメージが蓄積される前に」


ティアは恨めしそうに、ジト~とした視線が部屋の隅からテリトに注がれる。


「時間も暇も、そして余力も残り少ない。

手短に用件を述べよう。

解っておると思うが、お主は未だ発展途上におる。

ワシを退けたとはいえ、圧倒的に経験が不足している事実は変わらぬ。

なら、どうする?」

「絶好の場が用意されている。

このチャンスを逃す術はない、そうでしょう?」


テリトは危惧だったと安堵した様子だった。

だが、これを覆るのがこの不出来な弟子であることを疲れからか忘却していた。


「で、何をすればいいんですか?」

「………」


テリトは疲労の上に頭痛を覚え、恨めしい視線を返す。


「お主、頼むから馬鹿なのか、それなりなのかハッキリしてくれ」


賢いとは含めない。

その言葉を送るには、相手は利口ではないし狡猾でもない。

何より心労を増やす輩に、そんな大層な言葉を贈りたくないのが本音だろう。


「もう良い。

提示だけはしておく」


肉体を限界まで酷使し、回復に至っていない状況で、これ以上馬鹿なやり取りは遠慮したい処だった。

しかもこの後、テリトには酷な仕事が山のように用意されている。

残り少ない心力をこんなやり取りで消耗したくなかった。


「お主がこれより学ぶべきは機だ。

ワシとの殺り合いで覚えたのは、凌ぎに過ぎない。

自ら機を生み出す駆け引きは、微塵も身についておらぬ。

手を可能な限り模索せよ」

「機ですか。

でも、俺、そんな誘導の仕方思いつかないのですが?」

「格下相手じゃ。

そんなもの自分で探せ。

精々思考を錯綜させてるのじゃな」


アドバイスもそこそこに、テリトは待合室を抜けていく。

その足取りは危うく、疲労の浸透が深刻であることを物語っていた。


「さて、もう直ぐ呼び出しがある筈です。

入り口まで、ちゃんとエスコートさせて貰いますよ」


ティアは首肯する。

何が起ころうとも、カイルならば確実に対処してくれる。

そんな信頼から、ティアは自分のことに集中することにする。


「…ん、この気配、ビィーナか」


相変わらずの希薄な気配。

それを敏感に感じ取ったティアは、扉が開かれるのを待つ。

暫くすると控えめなノックがしてくる。


「…良く、分かりましたね」

「まぁな。

逆のアイツの気配は独特だから、分かり易いくらいだな。

入ってもいいぞ、ビィーナ」


促すとビィーナは覗き込み、安堵を浮かべてから扉を潜ってくる。


「ティア、もうダイジョウブなんだ」

「テリト先生から言わせれば、この超回復は取りえみたいなものらしいからな。

で、様子は?」

「トウゼンと言えば、トウゼンかな。

シルくんは開始10秒で対戦相手をノして、2回戦進出。

まぁ、一般参加を相手に勝ってもジマンにもならないけどね」


1回戦は、殆どが一般から参加を募った実力自慢と、血塗られた鉾(ミストルティン)の生徒との対戦となる。

こうして血塗られた鉾(ミストルティン)が他の参加者を圧倒し、歴然の差を見せ付けるところからこの祭りが開催される。


「なかなかさまになってたよ、シルくんのあれ」


その報告にカイルが満足そうに頷く。


「あれってなんだ?」


ここ最近、(チーム)練習に付き合っていなかったティアは、あれという意味が検討もつかなかった。

それに答えようとしたビィーナをカイルが制する。


「ティア、それは自分で見なさい。

大会が終わるまで、シルーセルはライバルです。

手の内を探るのも、自分の仕事ですよ」

「…そうだな。

でも、見なくていい」

「どうして?」

「集めれる情報は集めておいた方が良いのは分かっているが、実践でそんな間なんてありはしない。

俺が実につけるべきは始まり、短時間で情報を収集する、戦闘洞察。

そしてそれを生かす瞬間思考。

それがこれから必要だと想う」

「だから、シルーセルの情報は要らないと」

「あぁ。

これからの全対戦が訓練だ。

必ず、シルーセルの当たるまでに様にしてみせる。

そして機を生み出す」

「…なら、私から言う事はありません。

貴方が4日間を戦い抜ける事を祈っています。

私たちは、それを妨害する者を悉くに排除しましょう。

準決勝、楽しみにしていますよ。

さぁ、行きましょう」


大会は勝ち抜き戦で進められる。

そしてシルーセルと当たれるのは、丁度準決勝の位置だった。

その後ろ、順当にいけば決勝であの男、アレス リオネスと当たる事になる。

カイルが立ち上がり、控え室から闘技場へと歩みだす。

その後をティアが続き、そして殿をビィーナが付く。

闘技場まで向かう間、そして試合の後、この気が他へと削がれる2点が、血塗られた鉾(ミストルティン)に敷かれたルールが牙を剥く時期でもある。

だからこそ、選手のコンセントレーションを乱さないで、闘技場まで護衛するのも(チーム)戦と言えよう。

そしてティアは歓声渦巻く中枢へと進んでいくのだった。




これが血塗られた鉾(ミストルティン)

一般参加者をものともせず、実力差をありありと見せ付けていく。

これでは、一般参加した者は良い見世物だ。

しかしこの程度ならば、私でも何とかできる。

所詮これは、上辺なのだ。

腹に一物抱えた者としては、この大会は茶番以外の何ものでもない。


「御気に召しませんか?」

「気を遣わなくて結構ですわ、Missアイス。

貴女が対応してくれるだけでも、驚嘆ものですもの。

(わたくし)みたいな小娘が派遣されたてきた事を不快に御思いでしょうに」

「いえ。

失礼ながら貴女の発言、そして態度を観察させて貰いました。

私が望む、最低限の人材は来られたと確信しておりますから、不快ではありません」


その発言が偽りではく本心から言っている事に、私はこの血塗られた鉾(ミストルティン)を言うものを甘く見ていたと思い知らされる。

油断の出来ない輩だ。

成程。

血塗られた鉾(ミストルティン)等と、自らを終末の黄昏(ラグナロク)の発端と名乗るだけはあるかもしれない。


「ですが、やはりお送りした本人に出席して欲しかったですね」

「ごめんなさい。

(うち)のボスは手が離せない状態でして。

それにこんな甚振るだけの、詰まらない誇示ならば、私で十分だと想いますわ」


皮肉らなければ、収まりが付かない。

こんな殺伐とした場所に派遣したあの人を胸中で毒づいておく。


「それは済みません。

これも企業としての営業の一環ですから、辛抱ください。

本当にお目にかけたいのは、2回戦以降ですから」


企業として、ニエか。

まぁ、私には関係ない話ですから、人身御供が増えようが気にもしない。

それよりも、未だこの茶番を続ける事実の方が気に掛かる。


「時間があるのですか?

貴女方には?」


そこでやっと、向こうさんの淡々とした様子が乱れる。

一瞬でも言葉に詰まれば、私の予想が正しいと立証された。

厄介な。

どうしてこの時期に。

400年という月日は、不変だったのに。

この事実に私は歯噛みしたい気分だった。

やはり、もう時間は残されていないらしい。

どうして私の願いは、悠久なる時に中で儚いのだろうか。

こういう駆け引きに長けた輩には、誤魔化す事も叶わないので、答えを求めるのが良い。

どう答えても、それが真実を導き出すものが…。


「どうやら1回戦、最後の試合が始まるみたいです」


先程の質問を伏せ、血塗られた鉾(ミストルティン)の社長は試合へと意識を促させようとしている。

駆け引きというか、腹黒さの部分ではどうやら私に軍配が上がったらしい。

…嬉しくないですけど。

頬杖を付きながら、私は闘技場へと渋々視線を傾けることにする。

錯覚。

確かにそれは錯覚だった。

だが、どうして見間違えたのか検討もつかない。


「どうかしましたか?」


呆然と見入っていたらしい。

私は意識を軌道に戻す。

心音が動揺があったと告げ、速いリズムを刻んでいる。

歓声が一斉に上がり、そして1回戦最後の幕が開こうしていた。




始まりの合図。

それをきっかけに、大男が長刀を振りかぶりながら突進してくる。

圧倒的な鈍足。

始まる前に流れていた説明には、どこかに国の英雄らしい。

剣闘士として名高いらしいが、血塗られた鉾(ミストルティン)のレベルで計れば下の下。

機を生み出す必要もなく、隙だらけだ。

鍛えこまれている肉体は、確かに相当の膂力、脚力を宿している。

だが、それは一般にしてはだ。

同等の身体能力があれば、この男が如何に大雑把な動きをしているかを見て取れるだろう。

首を狙い、長刀が煌く。

それを潜り込み、小柄な血塗られた鉾(ミストルティン)の選手は懐へと滑り込む。

それに反応し、大男が凪いだ剣を返し、潜り込んだ者の首筋へと柄を落とす。

それをバックして躱す。

後退したものの、大男の剣の間合いから抜け出させずにいた。

そこへ先程の攻撃を利用して引いた剣を構え、突き殺しにくる。

眉間のあった部分を貫く剣。

最早そこは虚空となっており、血塗られた鉾(ミストルティン)の選手は左脇をとっていた。


「………」


その光景に突然言葉を無くしたガイラ。


「どうしたんすか、隊長?」


良く見ると、ライト、テラドマイアまでもが言葉を無くし、この攻防を観戦していた。


「お前には、分からんのか?

この攻防がどれ程やばいものか」


沈黙を破ったのは、巨体のライトだった。


「…なにがっスか?」


巨大な拳が脳天の落ち、理解していないギャザーの目に星が飛び散る。


「っテェ!

何すんスか、ライトさん!」

「ギャザー、その曇った(まなこ)を開いて、ちゃんと見ろ。

あの大男の攻撃1つ1つが完全に操られている。

唯避けているとは、あれは訳が違う」


ガイラの言葉に、ギャザーは1度目を擦ってから、その状況を眺め直す。


(なんてことだ、これは!)


大男と対峙している者は、必ず急所を晒している。

まるでそこへ吸い込まれるように、大男は長剣を振るっていた。

確かにこれは操られていると称した方が正しい。

そして伸びきってしまった態勢の大男の懐に易々と潜り込み、必殺の状態を生み出している。

たとえ格下相手でも、こうも人形の如く操れるものだろうか。


「あれはテリトの手法だ。

俺も手本にしたから分かる。

あれの基本は態勢だ。

隙らしく見せてはいるが、全てが臨戦態勢。

バランスが崩れているかに見せ、最高の踏み込みをさせる。

崩れぬ態勢それが、あの誘いを生み出す。

俺の場合(ゲート)により態勢を制御いているが、あれは氣だな。

テリトと同じ」


(あの世捨て人が、弟子を取ったか!)


「クックックッッ。

素人目から見れば、接戦を繰り広げていると騙されているだろうぜ。

ギャザーみたいにな」


観客の歓声が、それを肯定しているようだった。

激しく振り回される長剣。

その合間を縫って踏み込もうとするが、後1歩のところで後退する図。

側から見れば、実力が拮抗しているようにも窺える。


「あの大男の体力が尽きた時、この試合は終わる。

それ、もう失速してきたぞ」


鉄塊(てっかい)

それを振り回すことは、並の体力ではすまない。

たとえ大男が長剣の扱いに長けていても、こうも全力に近い打ち込みをさせられていれば、体力など簡単に底をついてしまう。

片や誘い、意の儘に動かしている者。

消耗されるものは、天と地ほどの差がある。

ガイラの言う通り、大男の振りは目に見えて減速してきていた。

これだけの引っ切り無しの攻撃では、まともに酸素補給もできない。

もう少しでしとめられるという誘惑が、自然と連撃へ、無酸素運動へと切り替えさせていたのだ。


「完全の掌だな。

決着がつくぞ」


血塗られた鉾(ミストルティン)の者がバランスを崩し、そのチャンスに大男は天を突くかのように振り被り、そこから最速の1撃が閃く。

次の瞬間、長剣の切っ先が地面を斬り固まっていた。

剣を握っていた両手の上から押さえ込むように手を添え、もう片手で喉を掴み取った血塗られた鉾(ミストルティン)の者がいた。

大男の顔面は蒼白になり、長剣を手放し負けを宣告する。

恐らく、首に軽く力を加えたのだろう。

それで自分の首がどれ程脆く、摘み取られるのかを感じ取った。


「一般参加としては悪くないな。

実力の無い者は、あそこまでされても自分が踊らされている事すら気がつかん。

それを差し引いても、相手が悪かったな」

「勝負あり!

ティア選手、2回戦進出です!」


スピーカーから血塗られた鉾(ミストルティン)の選手の勝ちが放送された。

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