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蒼刻の彼方に  作者: ドグウサン
2章 突破する者達
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【閑話】 羅元封冠

光の洪水。

この星の何処を探しても、ここまで進化した街並みはお目に掛かれないだろう。

車のヘッドライト。

ビルの窓枠からの零れる電灯。

街路を照らす街灯。


(これは俺の記憶の奥底にある情景。

恋しいが為に生み出した幻想)


造形せしは器。

器とは収めるもの。

そして、牢獄。

知らぬが故に疑問せず、識らぬが故に不変的に在り続ける。

ある意味では、この街そのものが牢獄をモチーフにした人の外装なのかもしれない。


(牢獄とは言いえて妙な気もするが、本来の目的を考えれば、それは的確かもしれない)


封印。

本来はその1点を目的とされた街。

いや、そのように改装し直された。


「レイ、夜中にレディを呼び出すなんて、どういう了見なんですか。

しかも、こんな展望台まで来させて。

ティーナが見たら、逢引と勘違いしますわよ」


煌びやかなネオンが彩る街並み。

この灯の1つ1つが計画的に置かれたものだと知っている者は殆どいない。

レイは女の話を全く取り合わず、意図的に造られし街に見入っている。


羅元封冠(らげんふうかん)か」


街並みを見下ろすレイの呟きに、促されるように美しい少女は柵の内から街の方角に目を向ける。


「これは知の宝物庫(チェインリンク)からの引用?

それともレイの?」

「都と地。

それらを利用した結界。

昔からあるんだよ、それは。

意図的は発展と不変の封緘。

メイが生まれるずっと前、京や江戸と呼ばれた都にも利用された術式。

ここならば、目覚めさせることはない。

俺が居る限り」

「そうでしたわね。

媒体は貴方自身。

封冠の維持にどれ程能力を割かれているか。

私程度の能力で翻弄できるぐらいでしたからね」

「あれには参ったな。

…礼を言うべきか、反則技を使った事を咎めるべきか。

色々と思案してみたけが、礼を述べるべきなんだろうな」

「礼なんて必要ありませんわ。

これは罰ですわ。

ティーナとレイに対する。

それと女と言うものを適度に勘違いしてしまっている、レイへの当てつけですわ」

「そうか。

なら、十分だな。

あれ以来、ティーナに主導権を握られて、右往左往する羽目になったからな。

目論見どおりか」


(私のは、ですわ。

あの(ひと)は後悔しているでしょうね。

レイも弱さを持った人だと改竄させられたのですから)


追いつけぬ者、踏み込む先、それらは憧れか畏怖として心を捕える。

だが、それが手の届くものだと知った人間の反応は大概にして同じものだと、メイは知っている。


(それでも手に入らぬものは確か。

可哀想なことをしたみたいですわ)


「で、呼び出した用件は?」


レイは1枚の便箋を取り出す。

メイは受け取り、サッと目を通す。


血塗られた鉾(ミストルティン)闘技大会招待状?」


可愛らしい顔が怪訝に歪む。


「…挑戦状類みたいですわね」

「違うな。

それは誇示だ」

「成程、対等に持って行きたいというものね。

三面思顔(トリケライザー)からは?」

(コウ)が消えた今、それは的確ではないな」

「そう言えば、そんな報告を受けましたわね。

完全に独立機関となってしまっていると考えた方がいいかしら?」

「これはれっきとした進化と論付けすべだろうな。

それはさておき、(セイ)からは罠の考慮はいらないと連絡はあった。

まぁ、俺がこの街を離れる訳にはいかないから、辞退させてもらうが。

それでは面子があるだろう、向こうにも」

「…で、私が選抜されたと」

「アイツ等を動かす訳にはいかない。

かといって、一般の人間を派遣したところで意味もない。

消去法でいくと、いつまでも名前が残っているのはメイだけとなる」

「欠陥だらけの消去方ですわね。

…まぁ、編集部に企画として取り上げさせて、行ってみますわ。

他ならぬレイの頼みですもの」


少しだけ艶っぽい視線を送るが、レイは徹底的に無視を決め込む。


(ぶぅ~、微妙な反応をして欲しいのに。

まぁ、この方がレイらしいと言えばレイらしいけど。

はぁ~、流し目の練習でもしようかな)


「メイ、お前の勤め先って、タウン誌じゃなかったか?」

「いいですわ。

偶には新風を送ってやらないと、マンネリ化は読者が離れていく原因の1つ。

それに誰もが気になるでしょ、最強を豪語する機関を。

まぁ企画が落ちしないように、根回しをして貰いますわ。

こんなので私の給料が落ちるのは納得いきませんから」

「…ガメツイ奴だ。

了解だ」

「それとティーナに、今日密会してくると連絡を入れておきましたから、明日辺りが楽しみですわ」

「…もしかしなくてもお前、さっきの反応しなかったの怒ってるだろう」

「オホホホ、なんのことやら」

「ワハハハ、この根性悪が」


冷戦なる笑いが寒空の下に流れる。


「フッ、…お前が居てくれて助かってる。

正直、ここまで自分が脆い存在とは想ってもみなかったからな」

「珍しくですわね、感謝の言葉なんて。

…レイ、逃げても誰も責めませんわよ」


神妙な面持ちのメイ。

唯一弱さを吐露してくれる嬉しさと、その孤独な闘いに関与できない自分の歯痒さから、触れてはいけない部分に触れてしまっていた。


「メイ、それ以上は無しだ」

「ご、ごめんなさい」

「…逃げないさ。

卑怯と罵ってくれてもいい。

…協力してくれるんだろ、メイが」


その言葉が恐縮してしまった心を解きほぐしていく。


「罵れる訳ありませんわ。

…ありがとう、レイ」


救われる。

心情を酌んでくれたレイの優しさが沁みる。


(ホンと、厭な男ですわ。

これだから、いつまでも引き摺ってしまう。

…ごめんなさいね、ティーナ)


心の中で親友に謝罪して、今この時だけこの男を独占できる喜びに浸ることにするのだった。

閑話は基本的に裏側の話になります。

話の根幹設定は、こちらがメインになります。

閑話はいつか、本編に合流して無くなっていく予定です。

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