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蒼刻の彼方に  作者: ドグウサン
2章 突破する者達
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【閑話】 復讐と願い

久々の閑話です。

そろそろ閑話キャラも本編に出す予定ですので、進展させていきます。

(天気は良好。

さて、それぐらいはサービスしないと可哀想ですものね。

天候まで最低で、鬱を重ねるのもなんだし。

…馬鹿どもに、現実というものを教え込まないと。

ちっ、どいつもこいつも能天気でボケやがって、ですわ)


腰まで伸びた白銀の髪が風に揺れ、陽光が反射して輝く。

その様に通り過ぎる者たちは目を奪われる。

美少女をそのまま体現にしたような少女が、憂いを帯びて噴水前で静かに佇んでいた。

1人の男がその美少女に声をかけようとした矢先に、その少女からドスの効いた声が発せられる。


「まさかそんなナリで、この私を口説こうっていうの?

身の程知らずも大概にしろや、コラァ!、ですわ」


開口一番に、罵倒が飛ぶ。

イメージを完全打ち壊す威力を帯びた発言。

それだけに留まらず、男が泣いて逃げるまで男の至らぬ箇所を詰り続ける。

声は嬉々を纏い出し、辛辣さをましていく。

今日3人目の犠牲者が逃げ帰った所で、お目当ての人物がやってくる。


「あれぇ、約束の時間間違えた?」


泣いて逃げる男と入れ違いで、可愛らしい少女がその美少女に近づいていく。


「いいえ、ティーナに落ち度はありませんわ。

想うとこがありまして、早目に出所してきたんですわ」

「それ、使い方違うと想うよ」


想わなくても違う。

年齢は13から15ぐらいで、柔らかさと元気が入り混じった雰囲気のセミロングの髪の少女。

パッチリとした目がチャームポイント。

それに目に並んで意志の強さを表すように太い眉毛が印象的だ。


「ダメだよ、メイちゃん。

美人さんなんだから、1人でいたら男の人たちが仕切りなしに声かけてくるよ。

気をつけないと」

「嬉しい!

ティーナにそう褒めて頂くなんて、歓喜の極みですわ!」


美少女はさっきまで男達を完膚なきまでに言い泣かしていた時とは、雲泥の差で対応をする。


「あはは、メイちゃん相変わらずだね」

「1週間に1度、ティーナを独り占めできるこの日、この時を噛み締める。

至福に満ち満ちですわ」


高揚した眼がティーナと呼ばれた少女を包む。


「大げさな」

「そんな事はありません!

ティーナは最近レイとばっかりで、私と遊んでくれないですもの」

「メイちゃん、それはお仕事」


このティーナという少女が働いている喫茶店Packet&Basket。

そこの店長、レイと恋仲になったと報告を受けて以来、メイと呼ばれた美少女は親友が奪われた気がして思わず厭味を吐いてしまう。


「お仕事だけなら、私はいじけません。

相思相愛になったからといって、あの畜生がティーナに手を出しているのではないかと、気が気でないんですから。

心労が溜まりまくり、ですわ」

「メイちゃんとレイさんって、仲悪いの?」

「至って関係は良好ですわ。

応援してあげたいのですが、心が付いて行かず、不幸の手紙を送りつけたり、生モノを夏の暑い最中、ポストに投函とかしてしまいそうで」

「…まだやってないんだよね、それ」

「分別はあるつもりですから、それはやってませんわ」


(それはって…、メイちゃん何したんだろう?)


ティーナは想像するのが怖くなり、途中で思考を止めることにした。


「で、お買い物するんだよね。

どこにから廻る?」

「ふっふっふ、お任せあれ。

今日はティーナをコーディネートし、レイの心を鷲掴み作戦の発動日ですわ」


ヒクッと頬が引き攣る。

ティーナは不気味な光を宿す美少女の瞳に後退りする。


「メイちゃん、なんか変だよ。

それに急にどうして」

「さっきの会話で理解しましたわ。

接吻を堺に進展なしと」

「せっ、せっぷんって」


ティーナは顔が朱に染まるのを禁じえない。

甘美な思い出が脳内にリフレインし、顔の赤さを増していく。

往来でそんな会話をしている為、他人に聞かれたかもと余計に林檎のようになっていく。

そんなティーナを楽しむように、メイは素面で言葉は吐き続ける。


「あれから何ヶ月たったと想ってますか?

6ヶ月、半年ですよ。

男なら不能を宣告しているようなものですわ」

「メ、メイちゃん!」


ティーナは流石に恥ずかしさがピークに達し、メイの手を取ると往来から逃げ出す。


(う~ん、ウブですわ。

可愛いさ爆発ですわ)


街を抜けちょっと人通りの少ない場所で出ると、ティーナは大きな溜息をついて停止する。


「メイちゃんは只でさえ目立つのに、あんな発言しちゃダメだよ。

それに人が気にしてることを…」

「でしょ、だからこうして援護射撃をする為に今日は計画を練り練ってきたんですわ」


(そう、これは援護射撃ですわ。

このままでは双方共に良くありませんからね。

その為に援軍も取り付けましたし、後は虚を付くのみと。

まっ、ゼロは忘れているかもしれませんが、昔とった杵柄。

そこら辺はなんとでもなりますわ)


メイはサッと腕時計を確認する。

12時半。

約束の時間は後15分後。

今から目的地に目指せば、丁度良い感じだろうと判断すると、メイは道案内を始める。


「ティーナ行きましょう。

穴場のアクセサリー店を見つけておいたんですわ。

ティーナに合いそうなモノが何点かありましたわ」

「どこでそんな情報得るの?」

「地道な捜索の末ですわ。

伊達に街の情報誌を編集してませんわ。

他の社員が足を消費して得た情報の美味しい部分だけを貰う。

漁夫の利。

編集の方に回して貰って正解ですわ」

「でも、編集って大変なんじゃ?」

「簡単ですわ。

如何にもありそうな言葉を羅列させて、褒め称える。

それで店も繁盛し、此方は踊らされた客が買いあさり部数もはける。

一石二鳥。

私の情報網の広がりにも貢献してくれてるから、三鳥ですわ」


容赦の無い意見にティーナは絶句してしまう。

こんな台詞を聞いていたら勘違いしてしまいそうだが、編集作業は地道で大変な作業だ。

それを簡単と言い退けるメイ。

それを知っているティーナは返答に窮してしまう。


「ほらほら、行きますわよ」


メイは友人の背中を押し、いそいそと目的地を目指し歩き出す。

暫し、世間話に花咲かせながら進むと、オープンカフェがある通りに差し掛かる。

メイはサッと目を配らせ、目的の人物がいるかをチャックする。


(バッチリですわ、秘書さん)


キーパソナルを確認したメイは、ティーナの手を急に引っ張り物陰に隠れる。


「なっ、なに、どうしたの!?」


全く予期せぬ行動に戸惑うティーナの人差し指を口に当て、静かにとサインする。

良く分からないティーナは取りあえず従う。


「ティーナ、あれ」


メイがそっと物陰から顔を忍ばせながら、表通りを見るように指指していた。

何事か分からず、メイに習いそっと表通りに顔を出してみる。

指に追い、その先にあるものを視認する。


「っ!」


ティーナの心臓が1度高鳴る。

網膜から信号化し、脳に投影された光景が全身を凍結させていく。

その所為でその光景から目が離せない。

凍りついた眼差しが、1点だけを凝視したまま。

綺麗な女の人が唯、傍にいた。

それだけだった。

そう、自分の居場所に女の人が座っているそれだけだったのだ。

オープンカフェで語らう2人。

その片方が良く知っている人物。

唯、それだけのこと。


「あれ、誰でしょうね?」


メイは自分でも白々しいなと思いながらも、そんな言葉をティーナにぶつける。

それが今回の目的の一端だった。




知っている者は淡々と語らっているのだが、時々気を許したような貌をする。

それが無償に悔しくて、胸を掻き毟る。

どす黒い感情がどこまでも込上げてきて、口内を乾かしていく。


「あっ、席を立ちましたよ」


実況中継でメイがその様子を耳元に語る。

それが遠くに感じる。

女は伝票を手にし、会計に向かおうとする。

2言3言喋って、女は無造作に知人の唇の己の唇を当てた。

それを当然のように受け止める知人を見た瞬間、沸騰していた思考が全て白く塗りつぶされる。


「くっ!」


訳が分からない。

その場から逃げないと感情に押し潰されてしまいそうで、脱兎の如くに走っていた。

その時うっかり人にぶつかり、その人物が持っていた金属物が大きな音を立ててアスファルトに落下した。

カンッ、カカカカッ、カ――ンッ!

その音に釣られて、通りの人達の視線が集中する。

そして知人の視線も。


「あっ」


迂闊にも、気付かれたかもとそっちに目を向けてしまった。

案の定、知人の視線はこちらを見ていた。

その視線に耐え切れず、逃げ出した。

消えてしまいたい。

そんな思いしか浮かべずに。

何故なら、その知人が浮かべていた表情は一瞬だけ後悔に満ちていたが、その後直ぐに1度だけ見たことのある冷淡な光を湛えた瞳で此方を見ていたからだ。

隔たりだけを顕にした、梟雄の瞳。

私は逃げるしか出来なかった。

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