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蒼刻の彼方に  作者: ドグウサン
2章 突破する者達
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【熱冷めぬ間に】 合流する者たち

それは巨体に似合わず鋭敏で、俊敏なる動きで侵入を果たす。


(…確か、ここらがアイツの部屋だったような)


手元の箱に表示されている地図から、目的の場所を検索する。


(間違いではなさそうだが…、こりゃ~バレてるな)


壁1枚越しにビンビンと鋭利な気配が漂ってきている。

クラッキングを試みた地点で、ここへの侵入はお見通しだったのだろう。


(歓迎の1つもありそうな雰囲気じゃないか。

まぁ、俺としては大歓迎なんだがな)


今更気配を殺したところで無意味と悟り、自分の存在を解放する。

そして無造作に扉に蹴りを加えると、金属はヘシャゲてる。

2度目の蹴りが炸裂すると、扉は横に折れて吹っ飛んでいく。

素早く扉の内部に入り込むと、そこへ礫の群が飛来してくる。


(小賢しいな)


侵入者は拳を握りこむと軽く大気を撫でる。

撫でるはあくまで本人談だが。

それでも大気はその拳に引っ張られるように舞い上がり、銃弾の群を上へと引き上げていく。

そこへ間髪入れずに閃光が奔る。


(拙っ!)


侵入者は身を翻し、壁を蹴って三角飛びの要領でその閃光を避ける。

ツプゥッ。

紙に穴を開けるような音がすると、さっきまで身があった場所に大穴が生まれていた。


(おいおい、リートル合金が紙のようじゃないか。

とんでもねぇな)


等と脳裡でぼやきつつも、口元は喜悦の笑いが付いていた。

閃光は、連続で回避した侵入者に向かって襲い掛かってくる。

先程の三角飛びで天井近くまで到達していた侵入者は、掌を天井に当てる。

トンッと押すと天井は凹み、その勢いで重力の接点に足を付くことに成功する。

程よくして、天井に大穴が形成される。


「曲芸で相手するには疲れるんだが、本気なら覚悟を決めろよ」


脅し文句を述べてみるが、相手に臆した感じは見受けられない。

それどころか、攻撃してきたと想われる男の隣にいる男は俺に似た笑みを浮かべている。


(このタイプは戦闘狂の方だな)


「テラドマイア」


そしてその2人に守られるように後方に居た女が、攻撃している男に一声かける。

心得たようにテラドマイアと呼ばれた規律正しそうな男は、俺に向かって伸ばしていた手を下ろす。

命令したのは、美しい娘だった。

氷の柱から彫られた、彫刻品のような顔立ち。

冷笑すら浮かべていない完全に無機質的な感じが、女の特徴だった。

二律背反。

この娘を一言で表すなら、この一言に尽きるだろう。


「別にその気はありません。

只、貴方が鈍っていないを確認しておきたかっただけです」


(嘘こけ。

どうせ、6ヶ月も連絡を取らなかった事に苛立っての癖に)


そこら辺の不満を押し込め、盛大に笑顔を造ってから、その喋りかけてきた女に感動の再会を演出しようする。

…まぁ、この地点でご破算なのだが。


「久しぶりだな、娘よ」

「えっ!」


侵入者の発言に、不敵な笑みを浮かべていた男が驚愕の声を出していた。


「そうですわね、お父様。

と、言えとでも」


(あっ、相当キレてるな。

コイツ、本当は心配してたんじゃないのか?)


女の声の端があがっている。

そして無表情の中に怒りが薄っすらと窺えた。

侵入者は女を計り識っているので、その微妙な変化を捕らえていた。

侵入者は本当なら済まなそうにしなければならないと考えているのだが、可愛らしい反応する娘に満面の笑みを浮かべる。


「ほ、本当に父親なんすか、社長の」

「答える義理はないわ。

貴方達は任務に忠実であればいい」

「は、はぁ」

「無愛想に育って、父さんは悲しいぞ」


侵入者は泣真似など披露してみるが、反感を買っただけだった。

女の只でさえ冷たい視線が、より低温になって突き刺さる。


「今まで何処に」

「情緒もないな、アザリア。

なんだったら、昔みたいに俺の胸で甘えてもいいだぞ」

「そ、想像つかねぇ。

それに社長、アザリアなんて可愛らしい名前してんだ」


女は恐怖によって、下の者を従えていた。

侵入者はテラドマイアの無表情からする、微かな感情の揺れからそれを読み取り、少なからず落胆した。

その隣にいる男は、どうやら物怖じしない性格ようで、女に軽口を叩ける数少ない人間のようだ。


「フザケルのは大概にしてください」

「まぁ、悪かったって。

少しばかり視察にな。

…連絡通りに、影も形もないな」

「はい。

私がこちらに転送されてから、1度として接触はありません。

唯、所属していたという人物が1人だけ」

「所属ねぇ。

情報は引き出せたのか?」

「…信じがたい話ですが、その男1人により、グリゴリなる監視組織は殲滅されたと」

「ヒュ~」


侵入者は口笛など吹きながら、その事実に少なからず驚いていた。


(これまで9体もの征する者(シックスアルター)が狩られた組織を、たった1人でか。

内部の人間だったとしても、可能なものか?)


「接触したからには、接点は造ってきたんだろ。

どうなったんだ?」

「干渉するなと。

それ以外は興味無しだそうです」


侵入者は、その内容を吟味する。

話し方から月日が流れていると察し、その条件を受け入れたことを察する。


「その用件を飲んだってことは、それ程なのか?」

「直接は会っておりませんが、信頼置ける者の話では」


(信頼置けるねぇ…。

この場には居ないのか)


この場に居る者に、信頼が当て嵌まる人物はいないと判断し、侵入者は落胆する。


(見てみたかったな。

この馬鹿ものが心許す者を)


「最高司令部、六総長が剣、セプト ゴノス様。

全権を返還いたします」

「要らん」


改まって、全権を返そうとする女、アザリアにアッサリと侵入者、セプトは権利放棄の返事をする。


「…この期に及んで」


(流石にタイミングが悪かったか)


あまりに珍しいのか、語尾に怒りを含んでいるアザリアの様子に、軽口を叩いていた男は吹き出しそうになっていた。

セプトは少しばかり遊びが過ぎたと想い、真面目に話しを切り出す。


「突然現われた男が、全権を掌握したところで、衝突が起こるのは目に見えている。

これまで通りに、お前が指揮を執ればいい。

これから統率された動きが要求されるからな。

指揮系統は1つに纏めておくが得策だ」

「流石社長の上官だな。

確かに今からアンタを信用しろと言われても、誰も従わないわ。

だが、勘違いしてる部分もあるぞ」

「勘違い?」


先程見せたような喜悦は消え、やる気の欠片もない感を称えている男が、修正、どちらかと言えば、保護者面談に来た親に弁解をする駄目教師のような感じで話をする。


「そう、末端はともかく、俺たち上層部は自分の意志にてこの場にいる。

だから、ある意味では社長に絶対の信用を置いている、だ。

どうせアンタのことだから、俺らは恐怖で縛られているとか想像したんだろう」


駄目教師は以外に有能だと、セプトは感じた。

受け持った生徒に対して、ちゃんとした目を持って接していた。


「…成程、信用ね。

この馬鹿娘にも、そこまで配慮と人格があったか」

「馬鹿とは失礼です」

「不器用な人間だからな、社長は」


身の毛弥立つような視線がお茶らけた男に突き刺さる。

それでも飄々としている辺り、大物か馬鹿か。

この類に人材がアザリアの近場にいることは望ましいとセプトは安堵した。

ちょっとした緩和剤になるからだ。


「それでは尚更、実権は要らんな。

足並みがズレても困るからな。

暫くは、お前の下に付くとしよう」

「私のですか」


アザリアはどこか不満そうだ。

ここら辺を見て、まだまだガキで可愛げがあるとセプトは親馬鹿な考えが過ぎる。

不満は子が親に抱く、絶対感みたいなものを崩したのが理由だろう。


(元々駄目親父が性にあってるんだが。

それにコイツは、俺に妄想を抱き過ぎなんだ。

偉大なる者なんて冗談じゃないぞ。

暫くは駄目親父ぶりでも発揮して、盲目の瞳を覚ましてやろう。

期限は2年。

おっと、半年も潰したから、1年半か。

俺が重い腰を上げる前に決着を付けて欲しいものだ)


「ところで、いつまでその姿で?」

「流石に歩けんだろう、元の姿でシャバは」

「元の姿って、オッサン、化け物かなんかなのか?」


慇懃無礼な物言いで尋ねてくる、駄目教師役の男。

その無礼さに免じて、脅しに掛かるするセプト。

光学迷彩の偽装フォルムを解き、人の形から、元の姿に戻っていく。

目は温かみを感じない、縦長い爬虫類のもの。

口は顎まで裂け、二重構造の歯並びをした口内。

1度噛めば、食い付いて離れないこと請け合いに殺傷能力が特化している牙。

肌は鱗状で、岩みたいにゴツゴツとしていて、触れただけで痛そうな造りをしている。

そして目を引くのは、人の形ではついていない六体目の存在。

頭、両手、両足の五体である人間。

その上に六体目とも呼ぶべき尻尾が堂々と生えていた。

大木すら一凪で倒してしまいそうな力強さ、恐竜を彷彿とさせる立派なものだ。

そして鼻の後ろ側にある角がチャームポイントとなっていた(本人談)。

そこには紳士然?とし、恰幅のいい男の姿はどこにもない。

駄目教師役の男は、流石に度肝を抜かれたのかあんぐりと口を開き、セプトに注目している。


「…フォーリジャー」


茫然自失に呟くテラドマイア。


「半分正解だな。

まぁ、知能を持ったフォーリジャーとでも判別してくれ」

「そんな可愛げのあるものですか」


娘から非難され、セプトは少し傷つく。


「…社長の父親って?」


そして相変わらず動じない駄目教師役の男が、最もな質問をしてくる。


「勿論育てだ。

産みな訳ないだろうが。

…そうだな、アザリアの存在こそ、我らの罪の証でもある。

だから、俺は父親でいたいんだよ」


セプトは凶悪な面で苦笑いを浮かべる。

内情をなんとなく察した駄目教師の男は、安心したような顔つきになる。


「誰もが納得するな。

アンタは紛れもなく上に立つ者としてのカリスマと、俺たち罪人が忘れてはいけない意識を持っている。

俺はガイラ ノーザン。

最高の駒として、アンタらの役にたとう」


ガイラは物怖せず、セプトの姿を気にもせずに信頼の証である右手を差し出している。

僅かな間だが、セプトはガイラを心底気に入っていた。


「ガイラ ノーザン、刻んでおこう。

セプト ゴノスだ」

「宜しく、セプトさんよ」


そんな男達の友情の育みを不機嫌な顔で眺めている者がいた。

痛い視線を背中に受けつつ、セプトは明日からの娘の機嫌取りに頭を悩ますのだった。

そこで不意に伝えるべき事項を思い出す。


「そう言えば思い出したが、6ヶ月前に見たぞ。

お前の弟、俺の息子をな」

「…ウインドをですか。

どこで?」

「悪い、あれは違うな。

あれは個だ。

ウインドなんてコードネームは似合うわねぇな。

どうやらあの事故で記憶喪失らしい」

「で、連れ帰らなかったと」


セプトは本格的にやばそうな雰囲気に嫌な汗をかく。

室内温度が明らかに2度は落ちた。

セプトは開き直りして、この場を収める事にした。


「そうだ」

「フザケテいるのですか?」

「違うな。

個だからこそ、あいつは俺らの元に戻る。

そう仕組まれているのが、この世の理だ。

悲しいがな」


必ず交わると確信したセプトの発言に、アザリアはそれ以上の追及をすることはなかった。

そこが甘いと称するものだと、セプトは過大評価され、誤りだと頭痛を覚える。

セプトが死ねと命じれば、アザリアは疑うことなく自分の命を差し出すだろう。


(無駄な影響力を持たせやがって。

だからこそ、アイツの姿を見せる必要があるかもしれん。

個が持つ、信念の奔流をな)


セプトは休暇だと言い聞かせ、暫し家族ごっこにでも花咲かせておくようにするのだった。

あ~、こんなヤツ居たなとなる時期かと。

ちゃんと登場させますので、忘れないでやってあげてください。

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