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蒼刻の彼方に  作者: ドグウサン
2章 突破する者達
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【刹那の蓄積】 最高にして最速

とある山中に一角。

茶の彩が混じり、所々に寂れ始めた自然の摂理が、季節を強調していた。

木枯らしが舞い、それに伴い肌を掠めていく風が冬の足音を教えていた。

そんな寂れた山中に、2つの影があった。


「時間は余りに限られておる。

それ相応の修練を課さねば、目標到達は在り得ない。

それでお主には、奥義を伝授しよう」

「…あの~、いきなり奥義ですか?

肉体改造なり、何か手順とか」

「言っておくが、お主の身体レベルは執行者(フォチャード)と比較してもなんの見劣りもない。

今更肉体なんぞ弄っても、最強など辿り着けぬわ。

それに奥義等大仰しく掲げているが、所詮は基本の延長なのじゃ。

基本こそ、奥義そのものとな」

「つまり基本をこなし続けろと」

「有体に言えばな」


テリトはそう告げると靴を脱ぎ去り、枯葉の絨毯に素足を晒す。


「ティアよ。

この世に最高の移動方があるとしたら、それは何とするか?」

「…移動方ですか。

その定義は」

「言葉の通り、最高、そして最速という基準を満たすものじゃ」


テリトの提示する曖昧な質問に、ティアは要領を得ないでいた。

それでも思考することを常々義務付けられて生活してきたので、自分の中で答えを導き出そうとする。


(最高。

難しい基準だな。

速さを取るなら走るだよな。

だが、それでは最高を満たせない。

走るは、どうしてもバランス的な問題が生じるしな。

足を上げ、腕を振る。

速さを追求すればするほどに重心の移動が激しくなって、対応力が軽減していく。

かといって歩くでは、速さを満たさない。

…中間を取って、早歩きなんて、っ!)


そこでティアは自分の閃きに、暫く検討を繰り返し、不思議と自信を持って答えを口にしてみる。


「歩くですか?」

「歩く、それでは最速はどうする?」

「可能じゃないかと。

歩くって、こう地面を蹴るじゃなくて、擦るというか」


手を足の代わりにして、空中でジェスチャーを交えながら、纏まりきらない考えを形にしようとする。


「蹴るとどうしても、完全に両足が地面から外れる瞬間が生まれますよね。

それに重心が後ろから前と何度も律動するから、肝心な場面で万全な体制が維持できるとは限らなくなる。

だから、走るは最高から除外されると想うんです。

歩くは、蹴る発想より、擦るに近いイメージがあって、片足が地面についている状態が必ずある想うんですよ。

その擦るのさえ増せば、走るに匹敵するんじゃないかと」

「及第点じゃな。

直感的なのが問題じゃが、考えとしては間違いなかろう。

元々歩くは必ず片足が地面について移動する方法の事を指す。

走るは両足が地面から離れる移動の事を指すのじゃが」

「…そうなんですか」

「確かにもう少し勉強をした方が身の為じゃな。

無知は罪じゃぞ」

「済みません」


まぁ、良いわと責めを止め、テリトは話を本筋に戻す。


「中枢線に重心があれば、殆どの状況下において対処が可能。

それはわかるな」


黙ってティアが頷くのを見てから、テリトは続ける。


「ワシが考えたのは、中枢線に重心を置いたままの移動方。

どんな状況下においても対応可能な状態を維持する方じゃ。

その理想を叶えるには、走るでは不可能じゃった。

この地点でワシの最高の移動方として、歩くを選択した。

そして追求した結果、生まれたのがこの歩方じゃ」


テリトは落ち葉の上に足を滑らせる。

1歩踏み出したテリトの体はスイスイと彼方へと運ばれていく。

氷の上のようなスムーズさで、葉の残骸を滑っていく。

枯葉の上を粉砕させる音もさせず、テリトの体は遠くへと移動していた。


(す、凄い!!)


「どうじゃ、歩く1つを極めるようと画策した者の技は」


人の行動の基本中の基本。

歩く行為が、此処まで昇華された姿を見て、ティアは驚きとそれ以上に感動が全身を駆け抜けた。

奥義の名に偽り無し。

音も無しにテリトは移動し、そしてティアの眼前に戻ってくる。

又も、落ち葉を踏み砕く音もなく、そしてテリトの軌跡には押し潰された枯葉は無かった。

とても、人が通過した跡には見えない。


「さて、この歩方について、お主の見解でも聞かせて貰おうかのう?」

「スレスレの摺り足ですよね。

それに、体重が足の裏じゃなくて、全体に分散れていました。

それと全ての状態で、両足を地についている」

「ほぉ~、中々。

1度で、殆どを見極めたか」

「ですが、こんな高等芸当、誰にも出来ませんよ」

「現に目の前に体現しておるじゃろうが。

つまり、誰にでも出来ると同義じゃ。

唯、ワシは誰よりも歩く事に気を遣い、蓄積して技術を磨いた。

それだけじゃて」


(蓄積。

それじゃ、間に合わないじゃないか!!

時間は無いのに!)


「間に合わないと考えたじゃろう、お主」

「どうして!?」

「ワシも間に合わんと想っておるからじゃ、本来は」

「なら、どうして奥義を覚えろ等と!」

「簡単じゃ、お主なら出来ると考えたからじゃ」


先程と正反対な台詞吐くテリト。


「理屈で述べれば、意識して妨げになるやもしれぬから、詳しくは言わぬ。

じゃが、ワシはお主を最強をする算段し、その結果としてこれを最優先で覚えさせることにした」


1度言葉を切り、そして断言する。


「騙されたと想って、励め。

思考すら差し挟む必要は無い。

ワシが課す修練を朝から晩まで、律動すればよい。

それがお主を最速で引き上げてくれる筈じゃ」


(それこそ、こやつの真の才。

それを中心に修練に挑めば、1ヶ月半、決して短くはないわ。

生み出せしは、蓄積。

その真骨頂は、経験。

凛のような知を先に置くのも又手だがのう。

だが、それはこの男の才を殺す破目となる)


「確実に段階を踏んでいくぞ。

お主なら、この奥義を極めてもお釣りがくる位は稼げるわい」


テリトはそう告げると、軽く首を振り、一振りの枝に目をつける。

小指よりも細く、秋の乾燥した気候で折れやすくなっている枝。

それを樹から切り離し、それをティアに差し出す。


「ワシに向けて、持っておれ」


訳がわからないが、ティアはとりあえず言う通りに枝受け取ると、テリトに先端を向けて持つ。


「心乱さず、確り持っておれよ」

「はい」


テリトは軽く跳ぶ。

ティアにはその動きが跳ぶではなく、浮くに見えた。

それ程軽やかで、ヘリウムの入った風船のように浮かび上がる印象を受けた。


「!!」


心乱されない訳がない。

この光景を見せられて驚かない人間は、そうはいないだろう。


「嘘だろ」

「嘘ではない。

幻術の類でもないぞ」


呆然と吐くティアの言葉を肯定してくるテリト。

それはティアの上からしてくる。

1度視線を上げ、テリトの全体を捉える。

それから、ゆっくりと下へと半信半疑で現実を直視する。

小指にも満たない枝の上に、テリトの足が乗っている。

それを支えている筈のティアには重さの欠片すら感じない。


「硬氣功と呼ばれる、肉体を鋼に変える一点型の氣の真逆、軽氣功。

これが奥義の基盤となる技術じゃ」


(人間が枝の上に乗ってる、そんな莫迦なっ!)


ティアの脳裡に仙人という、超越した存在が浮かぶ。


「理屈的には数学なんじゃがな。

力点と同じじゃな。

面より点の方が威力を収縮され、突破力を持つ。

掌底よりも拳、拳よりも指というように、同じ力が働かせ、その放出点が小さければ小さい程に、その威力は凝縮される。

ならば、逆も又然り。

点より面、面より立体で世界を捉えれば、その面積分体重は分散され、このような事が可能と成る。

昔、このような力学を仙術などと呼んでおったそうじゃがな」

「力学って、いくらなんでも」


どんなに目を凝らしても、テリトの足が乗っている部分の面積を考えると、その理屈では証明されない。

それでも枝は折れずに、テリトを支えているのだ。


「目と一般常識に囚われるな。

もっとワシの全体を見極めてみよ」


テリトはフワリと枝から跳ね、そして明らかに重力による落下よりもゆっくりと地表に降りていく。

風に吹かれれば、そのまま木の葉達と一緒に飛んでいってしまいそうな印象すら受ける。

実際、髪を撫でる程度の横風で、テリトの体は横に流れたのだ。

地面に舞い降りたテリトの足元は、やはり踏み躙られる筈の枯葉の音がしなかった。

ティアの瞳には性質の悪い冗談のように映る。

この光景は幻視か、夢なのではと、確認の為に目を擦ったり、頬を抓ったりしてみるが、それこそ逃げ場の無い現実だと想い知らされるだけだった。

どうすれば良いのか検討もつかない。

愕然として、その光景に見入るしか出来なかった。


(この馬鹿がっ!

早速囚われてどうする!

落ち着いて、先生が伝えてくれたことを咀嚼しろ)


点を面で、面を立体で、立体で世界を捉える。

テリトの語る理論を吟味して、その先を見る。

子供の空想のような、途方も無い考え。

だが、それなら理論としては成り立つと、ティアは自失気味になる。


(そうなのか。

…無茶苦茶だぞ、それって。

だが、先生は力学だって)


「…先生が分散している面積って、もしかして地球全体、正確には自分の立ち位置よりも下の全域なのでは?」


それを聞いたテリトは、満足げに微笑む。


「その意見に辿り着くとは、お主はやはり、凝り固まっておらぬようじゃな。

学者等が聞くと、鼻で笑いよるがな。

それが正解じゃよ」

「それって、遣ろうと想えば、空も浮かべるってことですか?」

「飛ぶではなく、浮かぶならな。

正確には大気という抵抗の元に立っているじゃな。

最長で2時間程浮いておれたかのう」


アッサリと肯定され、ティアはテリトが創り上げた理論に絶句してしまう。


(そんな事が可能なのかよ。

…こうも目の前で遣られて、それで断言されて、今更何を否定するっていうんだ、俺は)


「軽氣功。

その正体は、分散。

そして、それを可能にしているのは、氣。

良いか、足元に波紋を呼び起こせ。

それが己の体重を広大な面積に分散し、羽毛のような軽やかさを肉体に宿す。

今日、お主に課すは、己の体を風に揺らぐ、葉にすることじゃ。

そして広大な面積を埋める水となれ」

「…葉に、水に」


ティアはバイパスの伝達を確認した時と同じように、イメージを先に構築する。


(大気に伝達。

形状は波紋)


水面に一滴の雫が落ち、そこから派生する波紋。

それは瞬間で大地に広がり膨大な面積を確保する。

そして自分の体を固体ではなく液体のように捉える。

それにより、分散させることへの抵抗を失くす。

人は何故重さを有するか。

それは質量には必ず引力というものが存在し、大きさに応じて引力は大きさを増からだ。

星の引力を重力と呼び、重力に引かれる他の質量がそれぞれの濃度や大きさにより重さを生じさせる。

もし、この世界に人より大きなものが存在しなければ、万有引力の法則に気が付くことはなかったかもしれない。

地球という規格で、重さを定義するには2通りに要素に目をつけねば成らない。

1つはその質量が重力により授かった、重さそのもの。

2つ目はテリトが理論する、面積による重さだ。

同じ重さを有するものでも、重力の接点である大地、その接触点が大きければ大きいほどに一部分に掛かる重さは軽減する。

1人より2人、3人より4人といった感じで、その質量を支えるものが多ければ重さは分散され、運ぶのが楽になることを考えて貰ったら良いだろう。

それを大地に置き換え、より多くの面積で己の体重を支える。

それこそがテリトが氣を用いて定義した、軽氣功だった。


(そうか、固体でなく液体ならば、同じ高さにある面積に均等に広がる)


自分という点から、氣の波紋により広大な面を生み出す。

その面に自分という水を分散させる。

波紋が呼び起こす面に比べ、自分という重さは塵に満たないと。

イメージは完成した。

ティアは最初に一歩を踏み出す。

靴の下でカサカサと音をさせて、枯葉が小さく粉砕されていく。

失敗に想われるが、この感触にティアは実感する。

これまでの自分の重さにより踏み込んだ感じとまるで違う。

体重が2分の1ぐらいになったかのようだった。

そして一帯の落ち葉が画板でも押し付けられたように舞い散る。


「見事と称しておこう。

初めてで、この領域まで遣った人間はおらぬじゃろうて。

それではワシは仕事があるから、戻るとしよう」

「へぇ?」


仕事場に戻ろうとするテリトに、ティアはマヌケな声をあげてしまう。


「何を素っ頓狂な声を出しておる。

ワシは教員じゃぞ。

しかも、この前の事件で教員が半分になってしもうて、圧倒的に人員が不足しておる。

選り取りで仕事が積まれておるからのう、お主に感けておれぬのじゃ」

「あ、でも、この後とか」

「言い渡したじゃろうて、課したことは。

明日までに軽氣功はマスターしておけ。

氣を使い果たして倒れても構わぬぞ。

その為に警護を依頼しておいたのじゃから。

粗雑に介護されんことを祈っておくんじゃな。

それと」


神妙な顔つきになり、テリトはティアに申告する。


「この作業以外、何もするなよ。

簸たすらに、体重分散法だけを高めておけ」

「言われなくてもこんな高等技術、一朝一夕でなんとかなるもんじゃないですよ。

それより期間が短すぎます」

「出来ぬなら、尻尾を巻いて逃げるがいい。

この程度乗り越えられぬ輩に、あれだけ大層な台詞を吐く権利などないわ」

「…遣ってやりますよ。

先生に見劣りしない、軽針功を磨きあげますよ!」

「その虚勢、どこまでか明日見せて貰おう」


テリトは挑発的に置き台詞を残すと、流れるよう山を降っていく。


(大風呂敷を敷かせてみたが、正直どこまで高められるか)


この注文は、大工に1日で、それも1人で家を完成させろと言っているのと同義語だった。

テリトがこの領域まで高めるのに、20年という歳月を費やしている。


(馬鹿な注文じゃな。

だが、それを課すのも可能と想うてのこと。

そう、ティアの真骨頂は複写能力と、それを媒介にした蓄積能力)




さて、これをお読みの方に、質問です。

あなたは一度見ただけの絵を鮮明に思い出し、紙に描く事が出来ますか?

十中八九、殆どの人が断念するでしょう。

それは人の記憶の仕方が曖昧で、確りと形状を留めて置けないからです。

瞬間記憶に優れた者でも、描いている内に、あ~だった、こ~だったと、原型から逸れた形に収まっていくのが関の山でしょう。

人の脳が曖昧に記憶するのは容量の問題と、その形が生活において優れているからと推測される。

人の脳も万能ではなく、ある程度までしか容量を得ていない。

だからこそ、無駄な容量を使う事無く記憶するには、変換する必要がある。

網膜から収穫して、脳へに抽出した情報を流す。

それはモザイク仕掛けの外装のみ。

外装が脳に届くと、脳これまでの経験からこの外装に合う部品を取り出し、肉付けしていく。

こうして脳の中で完成した情景こそ、見るという行為となる。

こうすることで脳の負担を減らし、少量のエネルギーで見るという行為を行うことができる。

記憶もそれに該当する。

一々全てのものを記憶していては、脳は直ぐにでもオーバーフローを起こしてしまうだろう。

だが、稀にその抑止を破った者がいる。

モザイク掛けではなく、全てを見、そして記憶する者が。

1度見たものを記憶し、完璧に複写する。

一見羨ましく想えるこの能力は、脳への負担が大きい為、恐らく普通に人よりも刹那的な一生を送る事になるだろう。

ティアはその類に人種だった。

本人は自覚していないし、その抑止を破って脳に負担をかけていることすら気が付いていない。

正確には、脳がもっと高度な制御を行っているとテリトは思惟している。

必要不可欠な事に対してのみ、その能力が発揮されているからだ。

普段は物覚えの悪い脳無しに思えるが、その実は脳への負担をあらゆる部分で削除している結果ではないかと推測している。

この辺に切り替えをどう行っているのかは、無自覚の本人に聞いても無駄だろう。

さて、ここまでは人の範疇だが、問題はテリトが蓄積と呼んでいる能力だった。

恐ろしいまでの集中力の恩恵をフルに生かし、脳内に刻みこんだ完成系に体を馴染ませていく。

脳内で何度も繰り返し、体でも繰り返す。

創造力は人の体に影響を与える。

脳内での律動は、体へ刻み込むまでの時間を短縮し、それを実現するまでの道のりを大幅にカットする。

脳、体共に刻み込まれた行動は、脊髄反射、無意識の領域まで高まる。

過去、ティアは凛との対戦の際、朦朧とする意識の中、常識極まりない方法で銃弾の雨を防いだことがあった。

それこそが、ティアの本質の片鱗だった。

ティアが生死を賭けた闘いに身を投じたのは、この血塗られた鉾(ミストルティン)に入学してから。

つまり、僅か一年に間に反射的に防禦することを肉体に刻み込んでいたのだ。

長き修練の元に完成させるものを並外れた集中力と、イメージを脳裡に何度も複写することにより肉体に速く反映させ、実現させていたのだ。

凛が行っている戦闘方は常に思考し、五手先まで読み切る詰み将棋みたいなもの。

ティアの真骨頂を発現させるなら、その対極にある本能に任せた闘いさせるべきなのだ。

だが、未だ無意識の領域に刻み込まれたものが少ない為、あらゆる面で他の者に負け越している。

これを1つずつ刻み込み、そこに思考を差し挟めるようになれば、テリトが想像するティアの最終形体へと進化する。


(達人の領域を簡単に看破するか。

この方法で毎日1つの技術をマスターすることができるなら、43の技術を刻み込むことが出来るわい。

まぁ、そこまでは高望みせぬがな)


闘技大会までの日数を指折り数え、テリトは1度振り返る。

そこには一心不乱に軽氣功をマスターしようと励む、ティアの姿があった。


(無防備じゃな。

じゃが、その無防備こそが最強の状態になる。

先行きが楽しみじゃな)


テリトは暫しのんびり下っていると、そこに警護役のビィーナが樹に凭れ掛かりながら、真剣な眼差しで刃毀れした刀を見詰めていた。

テリトの周りに同調させた気配を察し、ビィーナは刃毀れした刀を鞘に収め、振り返る。


「テリト先生、ティアは?」

「上で修練に励んでおるわ。

警護を頼むぞ」

「うん…」


含みの有る返事をするビィーナ。


「どうしたのじゃ?」

「あ、その~、近くで警護してもいいかな?」

「妨げにならないかと訊ねておるのか?」


ビィーナは首を縦に振り、肯定する。


「構わぬじゃろう。

お主が居る位では妨げになる程、貧相な集中力じゃないわい。

ぶっ倒れるまで、気付きもせぬじゃろうて」

「うん」


ビィーナは嬉しそうに返事をすると、そそくさと昇っていってしまう。


(知らぬうちに華は咲くか。

…若いのう)


残されたテリトは爺臭い思考しながら、頭を掻く。


(…少しぐらいは、労ってやらねばならぬかな)


この間にもテリトの仕事を軽減させる為に奮闘しているであろう助手に想いを馳せ、思案の末、身の危険の方を考慮してその危険な行為を削除する。


(調子に乗せる事はやらぬ方が良いな。

干乾びたくないしな)


冗談にならない想像をしてしまい、二の腕が粟立つ。

このまま逃げる訳にも行かず、渋々と仕事場もとい、地獄の四丁目へとテリトは足を運ぶのだった。

軽氣功とは何か、それを突き詰めてみたらこんな結論に達しました。

何だかんだでなんちゃって理論、中二設定を考えるのが好きなようです。

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