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蒼刻の彼方に  作者: ドグウサン
2章 突破する者達
60/166

【渾身と当惑】 闘技大会

遂に、この名前が出てきました。

大会って、少年漫画の醍醐味ですよね。

…途中で横槍が入って決勝まで書かれないものが、最近多い気がします(幽○白書を見習え)。

「各自に100ポイント、チームに200。

評価的には最高ね」


先日行われたミッションの結果を凛が発表した。

前回に引き続き、好評価。

特に個人ポイントが低迷していたティアとシルーセルには地獄に仏だった。

ポイント制。

成績はこのポイントで計算され、授業で評価が高いものは加点されていく。

そして、このポイントがこの学園では命綱となる。

ポイントが意味するものは2つある。

1つは死刑宣告。

ポイントが0になり次第、学園の追放を言い渡される。

何かと秘密の多いこの血塗られた鉾(ミストルティン)

生きたまま解放されることは無い。

つまり、このポイントが自分の命を測るメーターとなる。

勿論逃げ出した者もいるが、その際は血塗られた鉾(ミストルティン)最強部隊執行者(フォチャード)に命を狙われる羽目になる。

消去率100パーセントを誇る執行者(フォチャード)

つまり、ポイントが0になった地点で死は確定している。

2つ目は、このポイントを使い必要な物資を手にすることのできる、交換システム。

必要最低限の配給はあるが、それ以上のものと手にするにはポイント()を削らなければならない。

強力な武器、高価な薬程ポイントが高く、それを的確に見極めて交換するのも、生き延びる為に必要な資質として考えられていた。

このポイントが学園で生き残る鍵となる。

2ヶ月前までティアは38ポイント、シルーセルは83ポイントという最低ランクの成績を爆走していた。

所謂、オチコボレと言う奴だ。

後1度でもミッションを失態すれば、最強の槍執行者(フォチャード)に狩られる立場になっていた。


「これで認めない訳にはいかないでしょうね、上も」


そしてこのチームは廃棄される者達が集められたチームだった。

最下位の成績を誇るオチコボレ2人に、血塗られた鉾(ミストルティン)に忠誠心の欠片も見せない凛とカイル。


「確かにな。

どうも実感が無かったが、同学年と組まされて分かったよ。

凛が課してきたものの真価が」

第2学年(ランデベヴェ)如きに勝っているのは当たり前なのよ。

そんなのは4ヶ月前には突破している話でしょ。

あの地点で社員(パチスターニャ)クラスには成って貰うと言っていた筈よ。

それに彼らは第1学年(ランス)から成長してないわ」

「成長してない?」

「過程はこうよ。

第1学年(ランス)で3倍の認識を肉体に定着、そして(ゲート)情報管理送還装置(ライブラ)の基本的使用法を覚えること。

第2学年(ランデベヴェ)(ゲート)をランクCまで引き上げる。

第3学年(ランカ)(ゲート)をランクBまで引き上がる。

これが学園履修の基本的な流れ。

つまり、殆どのチームが新たなる訓練に勤しんでいる訳ではないわ。

それどころか、内紛に掛かりっきりで、自己鍛錬なんて疎かになっている筈よ。

狡猾さは身についても、能力は第1学年(ランス)以下に落ち込んでいるわね」

「成程」

「それに必然的に試す場が2ヶ月後に控えてるわよ」


その発言に皆が反応した。


「闘技大会、もうそんな季節か」


シルーセルは噛み締めるようにしてその単語を口にした。

プレハブ内に沈黙が蔓延る。


「あれかぁ。

去年はキケンしたんだよね、決勝戦」


去年の闘技大会2位だったビィーナがその沈黙を朗らかに破る。


「そうだったな。

そう言えば、どうして棄権なんてしたんだ?

お蔭で去年は盛り上がりに欠けただろうが、決勝戦が2合打ち合っただけ終わったなんて」


皆が思っていた疑問をシルーセルが代表して問う。


「遊びで怪我したくないからだよ。

アレスだけは想像できなかったんだよ。

自分の勝者としての姿が。

優勝しても大怪我をに負ってたと想うよ」


あっけらかんとそう告げるビィーナ。

闘技大会を遊びと言い切る辺りが一線を画している。

闘技大会とは年に1度、血塗られた鉾(ミストルティン)が開催する祭りだった。

内容は1対1のリアルバトル。

成長の過程を学園側が観察するのと、血塗られた鉾(ミストルティン)というブランドの売り込みがこの祭りの趣旨だった。

一般参加も募集しており、血塗られた鉾(ミストルティン)の実力がトリックでないことを証明していた。

これまで一般参加の者で、2回戦に駒を進めた者はいない。

アレス リオネス。

ビィーナと同じく、第1学年(ランス)時代に圧倒的な実力で闘技大会の出場を認められた。

本来、第1学年(ランス)時分には脳開発(スパイラル リスト)と呼ばれる脳開発装置により、3倍の認識を植え付けられ、それに対応できる体造りで1年を過ごす。

普通は闘技大会に出場するまでに至らないのが現実なのだが、アレスとビィーナは他の第1学年(ランス)たちから擢んでており、第1学年(ランス)で初めて出場を許可された。

結果、第2学年(ランデベヴェ)第3学年(ランカ)を征し、1位と2位を掻っ攫っていった。

神童と死神の名は血塗られた鉾(ミストルティン)では誰もが知る代名詞だった。

ビィーナにそこまで言わすアレス リオネスなる人物。


「確かにあの男は底が知れないわ」


凛は呟くと、脳裡に腹立たしい記憶が蘇る。


(手も足も出なかったわね、あの頃は)


「今回も出場するのかね、神童君は」

「出るでしょうね。

私は出ないけど」

「え?」


凛の発言にティアは呆けた声をあげる。


「私は出ないと言ったのよ。

カイルもビィーナもね」

「…はい?」


相変わらずの察しの悪さに凛はティアを睥睨する。


「ティア、第2学年(ランデベヴェ)が如何に危険な立場か忘れた訳ではないでしょうね」

「別に忘れてる訳は無いが、それと闘技大会の棄権と何が関係するんだ?」

「バカだな」

「馬鹿ね」

「馬鹿ですね」

「バカだよ」

容赦なく4人に罵られる。


「…どうしてですか」


卑屈な口調と涙目でティアは質問する。

今日も自分の立場というのを確りと認識されられた気分になる。


第2学年(ランデベヴェ)がチーム戦を前提としているからよ。

裏切りが当然のこの学園で、チームと言う枠組みを敷いている。

利用し、貶める。

それらを日常にしたのが第2学年(ランデベヴェ)なの。

そしてチームという枠組みにより、個人では出来なかった連携が可能になった」

「で」

「…皆、殴って良いかしら」

「良いと想うぞ」

「右に同じです」

「あはは」

「ちょっ、ちょっと待てっ!

どうしてそうなるんだ!」


本気で怯えるティアを半眼で睨む凛。


「カイル、言ってやんなさい」

「馬鹿に付ける薬無しです。

ショック療法が最適かと」

「だそうよ、殴らせなさい」


有言実行を具現化したような生き方をする凛。

其言葉に偽り無し。

椅子を滑らせ、仁王立ちした。


「分かった、時間をくれ、真面目に考えるから!」

「とどのつまり、これまで本気で思考して無かったことが判明しましたね」

「頼むから、追い込まないでくれカイル」


ティアの頬に、ルルルと涙が零れてしまう。


「制限時間は1分。

それ以上長引くなら、昔の誰かさんのようにプレハブの外まで放り投げるわよ」


心当たりのあるシルーセルがうめき声をあげる。

因みに外まで投げ飛ばされたシルーセルは白目を剥いて、醜態を晒した。

第2学年(ランデベヴェ)に上がって直ぐに出来事だった。

凛の挑発に乗って突っ掛かった上に、決着まで1秒という短時間で伸されてしまった、シルーセルの苦い記憶だ。


(チーム制の枠組みが焦点なんだろ。

連携が取れるがヒントとすると…、あっ、そうか)


「済みません、尋ねてしまって」

「答えは?」

「闘技大会でも血塗られた鉾(ミストルティン)学園の日常は適応される、からだろ」


考えるまでも無かった。

この学園では貶める事が日常なのだ。

その理由はこの学園に張られたルールによるものが大きかった。

ポイント制の中に1つの項目がある。

基本的に授業内容により加点されるポイントの中で異質な項目。

そして最もそれがポイントの高く危険な手段であった。

その項目とは同学年の者を殺めると言うものだった。

喩えチームメイトであろうとも、それは適応される。

だが、チーム内でその事が起これば疑心が募り、雪崩式にに抗争が拡大し、チームは自然と消滅する。

4人以下になるとチームは分解され、欠員の出ているチームに振り込まれる。

振り込まれた者に明日は無い。

生かして貰えても、迫害されるのは目に見えている。

チーム崩壊した、つまり裏切り合いを演じて生き残った者だ。

誰が信用など置けるものか。

唯、崩壊を誘発させぬ為に部品として扱われのが、オチだった。

つまりポイントを多く、そして効率良く得るには、他のチームを狙うのが有効手段となる。

どのチームも常に狙われる立場にあるのだ。

そんな最中、闘技大会でもそのルールが適応されるとなると、闘技大会で疲れたところを複数で狙われる恐れが出てくる。

全員出場すれば、その隙を警戒する者がいなくなる。


「チームで最低2人出場させないといけないわ。

そしてポイントが少ない君達に巡ってきた」

「でも、好成績を残すなら、ビィーナ辺りが出た方が良くないか?」

「それじゃ意味ないわ。

ビィーナが出場して優勝しても、当たり前と想われるのが関の山。

なら、オチコボレ2人が上位を掻っ攫うことの方が、上の覚えが良くなるわ」

「オチコボレすっか、俺ら」


最近妙に耳にする言葉だとシルーセルは想う。


「それを払拭されるのにも意味があるわ。

貴方たちなら、上位4指には入れるんじゃないかしら?」

「待てよ、第3学年(ランカ)も出場すんだぞ」

第3学年(ランカ)如きでしょ。

相手はアレスぐらいのものね。

当たったなら、棄権をお薦めするわ。

後はクジ運に賭けることね」

「…アレスか」


去年の闘技大会、彼が見せたのは舞台だった。

血と血が飛び交う場ではなく、劇場で魅せる1人の英雄物語だった。

強さに中に華麗さを盛り込み、観客を魅了していった。


「アレスは決勝まで、1度として(ゲート)を遣っていないわ。

それがどういう意味か、問うまでもないわね」

「ブゥ、ブゥ、あたしだって遣ってないのに」


ビィーナは不満げに声をあげる。


「はいはい、凄いわね」

「わぁ~、投げやりだ」

「質が違うもの。

舞台の主役と裏子。

認識できない貴女を相手に右往左往しているマヌケな敵と、認識できても相手にもして貰えない敵。

技能レベルは同等。

問題は内容。

貴女は遣う必要が無く、アレスは遣うまでも無かった。

それだけよ」


サラッと凛が告げた瞬間、ティアだけが微妙な雰囲気を感じた。

ビィーナが忽然とその場から掻き消えていく、鬱な雰囲気を。


「ビィーナ?」

「何?」


ビィーナは別段なんの変わりも無く、向日葵のような笑顔を湛えている。

それが偽りの仮面だと知っているティアは、機械的にその顔を造っているのが窺えた。


(カリオストから戻ってから多いな。

俺やシルーセルに本性を知られてから、情緒が確定してない。

いつも俺らを視線で追ってやがるし)


ビィーナのその様子は怯えた子供のようだった。


(認識されないと話題にされる度に、感情に影が入る。

どうも過去に引き摺られている感じがあるな。

技術云々じゃなさそうだな、ビィーナの存在しない敵(エネミーゼロ)は)


怯えた視線を向けている状況の以外は、無理やりに自分を確定させて、認識させているようにも見える。

世界から剥奪された自分にしがみ付く様に。


(あっちが素かなら、納得できるか)


「んっ、後で練習に付き合ってくれ。

闘技大会の話を聞いたら、体が疼きだてきた」


ティアは伸びをすると、意気込むように席を立つ。


「だそうよ、シルーセル。

後は貴方の一言で、この申し込み用紙が職員室に提出されるわ」


ヒラヒラと用紙をちらつかせる凛。


「てっ、もう俺らの名前書いてるし!」

「あら、拒否権なんて持ち合わせていると想ってるの、3等兵。

軍人は上にからの言葉は、イエスとしか応えたら駄目なのよ」

「狗かよ」

「駒よ」

「同じだ!」


叫んでみても、結果は変わらない。

カリオストの1軒以来、元々頭が上がらなかったしシルーセルは、地に頭をこすり付けなければならないほどに借りを凛に作ってしまった。


「分かったよ。

こうなったら、優勝しちゃる」

「その活きで宜しく。

カイル、ビィーナ、そう言う事だから、これから2ヶ月、私達はサポートに廻るわよ」

「了解です」

「オッケーだよ」

「基礎練習はいつも通り行うわ。

地力の向上なくして、応用は利かない。

それはこの6ヶ月で厭な程知ったでしょう。

それと必要と思われる能力開発も、これまでと同じくこなして貰うわ」

「待て、それじゃ今までと変わらんだろうが」


シルーセルは脳内で内容を吟味していると、これまでしてきた事と変わりないことに気が付いた。


「そうよ。

体力も付いてきたでしょうし」

「まさか」


シルーセルは凄く厭な予感がした。

凛がこんな勿体つけた台詞を吐く時は、その予感に属する事は述べる前触れだった。


「プラスαよ。

個人強化メニューはそれをこなせてからよ」

「…俺1番体力ないんだけど」

「なら、私の講義をこなしても無くならない体力を得なさい。

それが前提ね」

「…鬼」

「今更だよ、シルくん」

「だな」


ビィーナとティアから同情の眼差しを、シルーセルは贈り物とされてしまう。

この回、役職名が多い気がしましたの、過去出たもの、今後出るものの役職名を書いてみようかと思いました。

血塗られた鉾(ミストルティン)の役職名ですが、槍の名前から採用しています。

以下、役職名となります。


・第1学年 ランス

・第2学年 ランデベヴェ

・第3学年 ランカ

・社員 パチスターニャ

・教員 パルチザン

・破壊工作員 バルディッシュ

・執行者 フォチャード

・審査官 フリウリ

・特殊社員 ピルムムルス


どんな槍かは、調べてみると面白いかもしれません。

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