【プロローグ】
2章開幕です。
プロローグは相も変わらず、主人公たち以外の視点となります。
そして少しグロ表現がありますが、苦手な人も少しだけ耐えて読んで頂けると助かります。
では、2章『突破する者達』スタートです。
【プロローグ】
怯えが増大させていく。
目を開けば、そこは恐々の色に彩られた漆黒の世界。
瞼をキツク閉じ、何もかもを遮断してしまった方がどれ程幸福だろう。
だが、視野は瞼という蓋を飛び越え、世界の闇を叩きつけてくる。
両の硬い眼球を抜き出し、潰した。
それでも世界が見えるのだ。
何処までも絶望に覆われた世界が。
腐敗し、腐臭し、ドロドロとおぞましい在り方を沁み亘らせている、狂気を隣人にした世界。
元々頑強でない私の精神は疲弊の果てに、朽ち果てようとしていた。
自我を繋ぎ止めておく糸がいない。
引き剥がされ、曝け出された本当の私は儚く、この世界に蝕まれていた。
「兄さん」
思い出の声が、私を狂気から呼び戻す。
それは救いだった。
殺伐とした世界にいて、色褪せぬ光明だった。
偽りながら、壊れ行く自我を繋ぐ糸。
生きる糧だった。
何度も堕ちる私を呼び戻し、絶えず命を吹き込んでくれた。
現実に繋ぎ止める糸は、最早隣には無い。
崩壊のスピードは加速し、腐敗の範疇が幅を利かせて、私の心は朽ち果てようとしている。
(ダメだっ!
こんな処で果てるワケにいかないっ!)
自我を取り戻す為に、左の肩に指を突っ込む。
左肩の部分には、先が無かった。
消失している左腕の付け根を抉り、穿ち、引っ掻き回す。
気が狂いそうな痛みが脳内を覆い尽くし、それでやっと私は正気まで意識を回復させる。
体が訴える悲鳴で、拒否反応が胸を突き、汚物を撒き散らす。
絶叫を木霊させながら、身を起こす。
(こんな壊れた、腐敗した世界に置いていけるものかっ!
こんな残酷で救いのない世界にっ!)
際限なく続ける、罪の連鎖。
それは楔となり、鎖で世界を束縛し、抜け出す術を何処にも無い。
(この世界に救いがあるなら、それは)
壊れた思考は、壊れた手段を導き出す。
最善が何かを測れない。
だが、一刻一刻と崩壊していく私には逡巡している暇はない。
(解放だけっ!)
すべきことは決まった。
後は自我が崩壊してしまう前に、事を完遂させなければならない。
私は口元を拭い、抉った傷口を的確に止血する。
こんなボロボロのカラダでも、不動なる意志により歩みを始める。
そう、大切な者を腐敗し、縛られた世界から救いだす為に。
「ビィィィィナァァァァ!!!」
叫びが、この不条理な世界を引き裂くが如く、木霊していく。




