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蒼刻の彼方に  作者: ドグウサン
1章 胎動する者達
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【胎動の刻】 血塗られた鉾

ようこそ、お出で下さいました。

貴方がたも力をお求めですか?

ならば、当学園が相応しい。

…はぁ、この学園の事をご理解されて来られたのではないのですか?

解りました。

では、軽く説明をさせて頂きます。

特殊精鋭育成機関。

一言で表せばこんなものでしょうか。

え、きな臭い?

まぁ、確かに此処は、戦争を行うスペシャリストを育てる機関と言えますので、きな臭いと言われればその通りでございますな。

…説明を続けても、宜しいでしょうか?

入学には、一つ試験を受けて貰わなくてはなりません。

難しいことはありません。

素質さえあれば、誰にでも入れます。

『無い者はどうなるか?』、ですか。

…死んでしまいますね。

これは脅しなどではありませんので、悪しからず。

十中八九、死にます。

『そんな危険を侵してまで入学する者がいるのか?』、ですか?

ええ、いますとも。

私が言うのもなんですが、人間とは愚しい生き物です。

伝説の中に存在するような圧倒的な力、魔法を彷彿とさせる力、これらが自分のモノになるとしたら、どうしますか?

愚考だと分かっていても、そんな力を求めるものは後を絶たないものです。

普通に生活を送る方々には、無縁な場所でございますな。

…入学試験さえ受けて貰えれば、どんな方でも入学出来ますとも。

例え、国家反逆者だろうとも、大量殺人者の犯罪者だろうともです。

その代わりと言う訳ではありませんが、試験を受ける前にこの書類にサインをして頂きます。

内容は、生殺与奪件の委任ですね。

生き死に関しての一切の権利を、当学園が受け持つという、ある意味人権剥奪の委任状でございます。

それ程までに、この学園は死に満ちております。

脅したい訳ではございませんが、入学出来た者が100人いたとしても、卒業できるものは20人にも満たなくなる、そんなものです。

これを踏まえた上で入学希望をして頂ければ。

はい、入学希望なさるのですか。

宜しいのですね?

分かりました。

では、書類にサインを。

……はい、結構です。

では、奥の扉へお進み下さい。


――――ようこそ、血塗られた鉾(ミストルティン)へ――――



血塗られた鉾(ミストルティン)

それは、一言で表すなら特殊先鋭育成機関と称す場所。

詰まる話、戦争屋を育てる世にも奇妙な企業だった。

この企業が設立されたのは50年前。

この年月が何を意味するか…。

公然と軍事力を保有し、兵力を増強をフレーズに掲げる企業。

侵略戦争が絶えない混沌とする時代、それを諸国が黙って見過ごすだろうか。

それが今日(こんにち)にまで存在する現実は、黙認をせざる得ない程この企業が力を有していることに他ならなかった。

設立当初、傭兵の組合等を無視し、突如旗を掲げたこの企業は、センセーショナルな話題として世間を賑わせた。

勿論、殆どの者は、そんな馬鹿げた企業に見向きもせず、歴史に埋もれ消え行くものと嘲笑していた。

理由として、余りにリスクが高かったからだ。

世界に幅を効かす傭兵組合、悠遠なる牙(ネバーファング)を敵に回し、更には諸国全土に宣戦布告をした同義に近いものだったからだ。

しかしある事件を境に、血塗られた鉾(ミストルティン)は世界に名を轟かせる事になる。

それはティオルドと呼ばれる弱小国が、一途の望みを掛けて血塗られた鉾(ミストルティン)に依頼をした事から始まった。

依頼内容は、軍事国家と名高いトールとの和平交渉だった。

植民地化目前の小国の戯言は、当然の如くトールの耳には届かず、和平交渉場が実現する事はなかった。

ティオルドの命運は尽きた、かに見えた。

…それから三日後、軍事国家トールは地図から姿を消す。

それを行ったのは血塗られた鉾(ミストルティン)から派遣された一人の人間だったと記録されている。

誰もが眼を疑い、耳を疑った。

だが、次第に明らかになる血塗られた鉾(ミストルティン)と呼ばれる機関の恐ろしさを人々は目の辺りにしていく。

(ゲート)

それが、血塗られた鉾(ミストルティン)が保有する力の象徴であり、そして人々を魅了していった、魔法を彷彿とさせる力。

年に一度開催される披露会こと、闘技大会。

そこで繰り広げられる、人智を超えた戦い。

一般参加者も応募された大会にて、血塗られた鉾(ミストルティン)の者が優勝を手にした。

誰の眼から見ても明らかな程、圧倒的な力の差を見せ付けて。

そして、その魔法の力は誰にでも手にすることの出来るものだと公言した。

そのフレコミで、血塗られた鉾(ミストルティン)は学園を設立した。

入学基準は才能のあるもの。

脳開発(スパイラル リスト)と呼ばれる装置に掛かり、受け入れられたものだけが学園に入学出来た。

それが喩え国から追われる極悪犯罪者だろうと、この学園は入学を許可した。

力を求める者、逃げ場を無くした者、何かしらの目的、野望を抱いて者と様々な理由を持つ者がこの学園の敷居を潜る。

設立当時、200人を越す入学数を誇っていた。

流石に命を賭してまで入学する者は、年々その数を減らしていった。

それでも毎年、何人もの人間がこの学園に訪れる。

去年入学希望をした者は69人。

その内48名だけが、脳開発(スパイラル リスト)を受け入れ入学した。

だが、第一学年ランスの想像を絶する履修内容を受理出来ず、今は26名とその数を減らしていた。

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