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蒼刻の彼方に  作者: ドグウサン
1章 胎動する者達
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【覚悟と信念】 情報管理送還装置

目が覚めれば、そこは自室ではなかった。

ティアはボンヤリする頭を回転させて、薄暗い部屋に視線を彷徨わせる。

寝息が2つあり、シルーセルとビィーナが気持ちよさそうに爆睡していた。

それでやっと此処がプレハブであることを思い出す。


(…何でコイツ寝てんだ)


いつ何時、襲撃があるか分からない為、プレハブでの共同生活が開始された。

交代で見張りをし、休憩をとるローテーションを行っている。

筈なのだが、この時間帯の見張りがさも当然そうに寝ているのを見て、ティアは半眼した。

文句を口に付けようとした矢先、外に気配が生まれる。

威風堂々とした2つの気配。用事があると2人で出かけた凛とカイルが戻ってきたのだろう。

扉が開き、白んだ世界の光が室内に滑り込んでくる。


「あら、シルーセル以外お目覚めね」


帰宅第一声に、ティアは「えっ」と振り返る。

先程まで寝息を立てていたビィーナが目を見開き、入室者を確認していた。


(躰を休めながら警戒もしていたのか、この女は!)


「で、変わった事はあったかしら」

「別に。

リンが帰る1時間前に、プレハブをカンシしてるヤツが2名ほどいたけど。

あんな気配の消し方じゃ、見つけてくださいって言ってるようなもんだったよ。

意識を閉じてても気が付くよ、あれは」


欠伸を噛み殺しながら、ビィーナは淡々と説明する。

全く気が付かなかったティアは絶句し、改めてビィーナの能力高さに戦慄した。


「ウルサイぞ、お前ら。

…ったく、で、朝帰りしてまで何してたんだ?」


話し声に目を覚ましたのか、シルーセルは瞼を擦りながら身を起こしていた。


「これよ」


と各自に紙の束を渡される。


「データ採集した結果よ。

それぞれにあったトレーニングプランを記載しているわ。

これに基づいて、これから訓練に励んで貰うわ」


渡された紙の束は、ザッと見るだけでも200ページに及んでいた。

隙間無くビッシリと敷き詰められた文字は、辞書に匹敵していた。


「5分以内に頭に入れなさい。

終わり次第、直ぐ燃やしなさい」

「「「はい?」」」


ティア、シルーセル、ビィーナの声が重なる。


「機密が多いから燃やせと言っているのよ」

「いや、その前に」

「5分以内かしら?」

「出来るかぁ!」


平然と無茶なことを言ってのける凛に、シルーセルは叫んでいた。


「…どうしてかしら?」

「いくらなんでも、この量を5分で覚えられるか!」


シルーセルの意見に、ティアとビィーナは首肯して同意する。


「凛、彼らは恐らく」

「あぁ…、そういう事ね」


凛は何か思いついたのか、思案顔する。


「…カイル、貴方に任すわ。

私が説明すると、勉強にならないのでしょう」

「了解しました。

確かに、お喋りが過ぎるのは悪い癖ですよ」


カイルは凛を戒め、3人に向き直る。


「さて、私は凛みたいに答えを提示しませんので、要点だけ掻い摘んで説明します。

そこから思惟して下さい。

答えだけ提示した処で、理解が望めるとは思えません。

内容を拾って付いてきて下さい。

相談は構いません、宜しいですか?」

「はい、意味がわかりません」


ビィーナは手を上げて、説明の付け足しを要求する。


「今のティアと同じですよ。

初めから3倍の能力を手にしたが為に、肉体の制御方がマスター出来ていない。

それが、(ゲート)を遣うのに必要な情報収集能力の欠如を招く結果となった。」

「根本を理解しないでもの与えられたら、応用の利かないデクの坊になるってことか?」

「その通りです、シルーセル。

では、相談して下さい」

「「「はい?」」」


又も3つの声が重なる。

議題を出す前に、答えを求められた3人は当惑するしかなかった。


「疑点は出しました。

良く思い出し、論破して下さい」


(始まったわね。

カイルとの会話は何処に情報が仕込まれているか、気が抜けないのよね。

さて、式を導き出し、答えに辿り着けるかしら?)


カイルは唇を固く結び、これ以上漏らさないと態度で示す。

仕方なく3人は顔を突き合わせ、相談を開始する。


「おい、相談しろってよ。

何か思い出そうぜ」

「今のって、ティアくんの欠点の話だったんだよね」


と2人が1つ結論を出すと、ティアに視線を集中させる。


「俺に答えを求めるな」

「でも、それ以外の話してはしてないよ」

「待てよ、ティアの弱点にヒントが隠されているんじゃないのか?」

「弱点ねぇ、何?」

「肉体制御法、情報収集能力、理解してないから応用が利かない」

「…ダメな子だね」


(こいつら他人の事だと思って、言いたい放題に!)


溜め息混じりに嘆息し、ティアは話を続けさせる。


「その単語がヒントだとして、どう思う?」

「今回成さないとならないことは、この紙に書かれた情報を5分以内に把握しろ、てっことだろう。

その点に着目するば、1番近いのは情報収集能力だよな。

…てっ、そのまんまだな。

ん?

そうか、これか」


シルーセルは胸元にぶら下っている、槍に1匹の蛇が纏わり付いたデザインのペンダントを持ち上げる。


「こいつは(ゲート)を行使するための空間把握センサーってだけじゃなく、確か正式名称は、情報管理送還システム、ライブラだったよな」

「空間に残留する情報を収集して、(ゲート)を開く下準備を行うためのツールだ」

「アタシたちは|それをそれしか使えない《・・・・・・・・・・・》と、幅を狭めた考えていたってことじゃないかな?」

「けど、普通に行ったんじゃ、空間の情報を把握することにしか使えないじゃないのか?」

「それが幅だよ、きっと。

アタシたちは脳開発(スパイラルリスト)を受けた時に、一緒に刻み込まれた情報のみで、この情報管理送還装置(ライブラ)を使っているんだよ。

それが、罠だとしたら…」

「何の為に?」

「ボーダーライン。

それに気がつかない者は、必要に値しない。

そんなとこだろう」

「…シビアだな。

で、そのボーダーラインを超える方法は?」

「このままなら、確かに紙に明記された情報は読み取れない。

それどころか、記憶に残すことも不可能だ。

…リンが言っていた。

オレたちの脳は最高のOSだと。

とするとだ、コンピューターと同じ事が成せるのでは?

情報を流し込み、刻むことができるのではないか?

脳開発(スパイラルリスト)は、血塗られた鉾(ミストルティン)の基本知識をオレらが教わるでなく、脳に刻み込むことで知識として保管されている。

それは、この情報管理送還装置(ライブラ)でも可能なんじゃないのか?」

「過程としては上々だな。

後の問題は…」

「情報のヘンカン方法だね」

「これも又幅なら、オレたちが意識的にできないと思い込まされているだけじゃないのか?」

「初めっから意識すれば、ヘンカンは可能ってこと?」

「その為に、脳開発(スパイラルリスト)を受けた時に脳にプログラムは積み込まれていると考えるのが、流れからしてありだと思う。

それにリンはオレらに直ぐにやれって言ったんだぜ。

なら、必要なものはここに揃っていると考えられないか?」

「…後はフタをあけてのお楽しみかな」

「なら、俺がやろう」


ティアは用紙の束を胸元に持ってくる。

そして高周波音が胸元のペンダントから響き出す。

それが情報管理送還システム、ライブラの起動音だった。

空気中にペンダントが発する光、電気、振動。

それらを使い、指定した空間情報をペンダントに取り込み、電気信号を身体に送り脳に情報を(もたら)す情報収集ツール。

本来は(ゲート)を開くに辺り、的確な情報を取得して、異空間との通路を開く為に使用する。

情報の誤差はそのまま脳にフィードバックし、シルーセルのように脳に過負荷をかける。

情報さえ確りと把握し、適量のエネルギーを算出可能なれば、カイルが行ったように(ゲート)の力を際限なく引き出すことが出来る。


(考えれば、画面入力装置(スキャナー)ってのは、光学的に物を読み取るものだったな。

なら、情報収集に、光をも使うこの情報管理送還装置(ライブラ)なら、文面も読み取れる筈)


その答えが正しいと証明するように、文面がペンダントを通して入力されてくる。

今までのように使用していれば、紙の成分が脳裡に投影され、抵抗値などが算出されているだろう。

だが、今回はこれまでと違い、文面を読み取りそれが脳に送り込まれてくる。


(これを焼付け、いつでも引き出せる記憶にしておく)


(OS)に働きかけ、事柄を実行を行う。

200ページを超える文面も、強化されている記憶領域を鑑みれば微々たるもの。

難なく記録として、脳内に収まっていく。


(最後に実験を)


本当に刻まれたかを確認する為に、検索をかける。

人が思い出を思い出す時と同じく、ワードで検索をかけ、それに該当する項目を引き出す。

思い出と違い、確りとした文面が脳内に浮かび上がってくる。

これで3人の仮説は立証されたことになる。

ティアが親指を立て、成功を知らせる。

それに習い、2人も自分のプラン表にスキャンをかける。

暫く後に、2人も成功の証として微笑む。


「正解です」


カイルが合格を言い渡してくる。


「与えられた情報よりも、確証に迫って得たものは、いざという時に力をなります」

「…おいしい言葉だが、幾らなんでも情報が少な過ぎだと思うぞ」

「そうですか?

これでも、事前に凛が情報をあげ過ぎていたと思うのですが」


と悪びれもせず、シルーセルに告げる。

それがこれからも会話にすら気が抜けない事を示していた。

その事実に思い知った3人は、思わず天井を仰ぐのだった。

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