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蒼刻の彼方に  作者: ドグウサン
1章 胎動する者達
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【プロローグ】

FF8をやった時、もっと殺伐とした学園ものって出来ないかを考えた際に思いついた作品です。

だいぶ設定盛り込みすぎて、場面の移り変わりが多々ありますが、ご容赦ください。

【プロローグ】


気が付いた時には、全てが手遅れだった。

変調は確かにあった。

身体が休息を欲しがり、起床したばかりなのに疲れを覚える等、体調は芳しくなかった。

診察を行っても身体に異常はなく、過労だと認識する程度で留めていた。

だが、それが間違いだった…。

あの時、もっと注意を促していれば…。

否、仮にこの事態を予測していたとしても、私には足掻く事すら出来なかっただろう。

最早、私には自殺する権利すら与えてはくれまい…。

「そうだな。

今のお前は、自分を裁くことすらも許されてはいない」

私の心を汲み取り、それは答えた。

それは画面(ディスプレイ)と向かい合い、指を走らせ何かを創り上げようとしていた。

画面(ディスプレイ)には、長年私が愛用していた顔が、光に反射して映し出されていた。

「不思議なものだろう。

己の声で、他人の言葉を聞くのは」

そうだ。

この声は私の声。

そして私の意志を離れ、作業を行うは私の身体。

そして、それが私の研究室(ラボ)を占拠し、何かを成そうとしていた。

「懲りることなき業深き生き物だな、人というのは。

まさか、あのおぞましき罪悪をこのようなモノに作り変えしまうとは。

それが何を意味し、どこへ向かうかも知らず…」

画面(ディスプレイ)に映し出されたのは、小指先端程度の大きさをした宝石画像とそのデータ。

宝石は魔晶石(デモノデバイス)と表記されていた。

「何故これがこの世に伝達されず、あのデータベースのみに蓄積されていたか想像もしなかったのだろうな。

これは人類の救済の証であり、復讐の意味を持つ魔石だ。

対抗手段として講じられた、とも言えるか。

ただ、人間の欲望を満たす為に生まれものではない事は確かな」

(その手しかなかったのだ!

人類の未来を紡ぎ、我らが外宇宙に飛び出すには!)

自責の呵責に耐えられなくなった私は、そう叫んでいた。

事象として世界に言葉として顕現することは無かったが、私を借る者はその意図を捉え、微笑していた。

「お前一人が罪を背負う必要はない。

人類の総意であったのは承知しているつもりだ。

そして逸早くこの魔石の危険性を察知し、使用禁止を叫んだ。

だが、人類はそれを受け入れなかった。

栄華とは恐ろしい麻薬だな」

私は何も言い返せないでいた。

私を借る者が述べているのは、紛うことなき真実だからだ。

私は過去の、そして今の無力な自分を嘆いた。

「だがな、そんなものは些細な罪だ。

お前達人類が本当に償わなければならない大罪は、別にある」

(ど、どういうことだ!)

私には私を借る者の言葉に覚えが無く、それが余計に恐怖を煽る。

私の動揺が気に召さないのか、私を借る者は黙り込み、デバイスに入力を開始する。

そして、私の覚えの無いファイルが立ち上がり、展開される。

「これがお前たちの大罪だよ、愚昧なる創造主よ」

(そ、そんな…、そんな事が、私の、人類がしてきた事はあああああぁぁぁ!!!)

私はあらん限りに絶叫した。

それが私を闇の奥底へと貶め、意識が埋没していく。

私には、私を借る者へ懺悔する言葉すら届けられなくなっていた…




「愚かなるか。

それは私とお前達(じんるい)、どちらに形容すべき言葉なのだろうな…」

聞こえなくなった内なる声の代わりに、画面(ディスプレイ)に語りかける。

そして男の肉体を奪ったその者は、悲しげな表情を画面(ディスプレイ)に反射させていた。

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