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高嶺のお兄ちゃん  作者: 明智あきら
第1部
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第2章 (2)

「……どうしてこうなった」

 かんかんに晴れた8月の空と裏腹に、わたしはどんよりと言った。

「どうしてって、夏だからじゃない?」

 かたやお兄ちゃんの声はかつて聞いたことがないほどに明るい。そりゃあんたはそうだろうけどよ。


「かりんの水着♪ かりんのみずぐふっ」

 脇腹に肘を入れてやったら上体を変な方向へ曲げながら悶えてる。

「……い、いまのはちょっと痛かったよ?」

 うん手応えあったもん。


「あのねぇ。もうあんたが変態なのは承知してるけど、今日楽しみにすべきはわたしじゃなく、アイリの水着! わたしはただの付き添い、何度言ったらわかんの」

 約束通り友達が会いたがってる旨をお兄ちゃんに伝えたところ、なんと初対面の場所に堂々とプールを要求しやがった。「だって夏だし」じゃねぇよこのどエロ。


 いくらなんでもいきなり水着回とか断るよねと思いつつアイリに返事を訊くと、「わたしも行きたかった! 少し恥ずかしいけど、新しい水着買ったばかりだしちょうどいいよ」なんて嬉しそうに言うもんだから、わたしに拒否することは出来なくなってしまったのだ。あんたらメンタル強ぇな。


 そこから数日、いまは西立川駅を降りたところでアイリ待ち。うちからだと昭和記念公園のが断然近いし、アイリの住む三鷹からでも交通の便の関係で○しまえんよりこっちのほうが楽だ。施設の充実度からサ○ーランドという選択肢もあったけど、あそこは車じゃないと厳しいから却下した。


「わかってるよ。でも昨日、かりんの水着買いに行ったときにも見せてもらえなかったから。夢は膨らむ一方だよ」

 わたしの新しい水着は当然の権利として買わせた。見せて見せてと試着室のカーテン越しにゴネるバカを無視して100%自分の趣味で選び、「ほんとに見せてあげなくて良かったんですか?」と店員さんに苦笑いされる苦行に耐え、さらに肌を晒す都合上、昨日の晩ご飯も今日の朝昼ご飯も減らした末にわたしはここにいる。気が乗らないのなんて当たり前だ。


「もう1発入れたほうがいいみたいね……」

「遠慮する。じゃあ……アイリたんの水着♪ 金髪巨乳女子中学生モべしゅ」

 さっきと同じ場所に肘を入れてやった。たんを付けんな化けの皮はがれてんぞ。

「そのうち捕まるよあんた?」


 アイリの容姿については、一緒に写った雑誌を見せて伝えてある。そんで会わせる以上もう仕方ないので、先方にも改めて正面から撮ったお兄ちゃんの写メを送った。さんざん焦らしてしまったあとでどんなリアクションが返ってくるかひやひやしてたんだけど、意外にも「うん、確かにカッコいいね」というあっさりした返事がきただけだった。


 考えてみれば見目麗しい男子と付き合うこと自体は慣れてるんだし、アイリにとっては外見だけでいまさら騒ぐことなんてないのかもしれない。そう思うと、取り越し苦労してたわたしがバカみたいだったな、って反省したりもする。


「かりん……だんだん、DVが加速してないか……」

 今度はなかなか立ち直れないらしく、お兄ちゃんはしゃがんだまま脇腹を押さえて不自然な呼吸をしてる。ところで兄妹でもDVでいいのかな。ドメスティックバイオレンスなんだから言葉の意味的には間違ってない。でも最近は精神的苦痛を与えるのもそこに含まれるわけで、ならこれも正当防衛だし問題ないよね。


「かりん、お待たせ」

 そこにアイリが到着した。

「待ってないよアイリ」

 まだ待ち合わせ時刻の7分も前。ほんと律儀な子で泣けてくるよ。わたしも基本的に時間は守るほうなので、こういうところも一緒にいて楽なのだ。


「でもあとからきたのは事実だし……あれお兄さん、お腹でも痛いのかな」

「あ、それほっといていいから。行こっか」

 かろうじて立ち上がったものの、お兄ちゃんはまだ脇腹を押さえてる。わりと本気で痛そうだけど、カッコつかなくてざまぁみろって気持ちのほうが強い。


「もう、バカなこと言ってないで。今日は3人で遊ぶんだよ? ……大丈夫ですかお兄さん?」

「平気だって、それでかいし、たぶん頑丈だし。つーか立つ前に踏んであげれば良かったのに。きっと喜ぶよ?」

「あなたと違ってそういう趣味ないから」


 わたしをばっさりやってから、アイリはお兄ちゃんの顔を覗き込んで自己紹介をする。いやわたしだってそういう趣味とかないし。

「初めましてお兄さん、藤崎Ireneです。かりんとは仕事で知り合って、プライベートでも仲良くさせてもらってます。アイリって呼んでください、みんなそう呼ぶので。今日はよろしくお願いします」


 さすがお嬢様ちゃんとしてんな。わたしも初対面の相手には失礼のないよう心がけるけど、なんつーか淀みなさが違う。英語で名乗ったのはお兄ちゃんがアメリカ帰りだからかな。


「こちらこそ初めまして。アイリさんも知っての通りかりんの兄で、虎次郎と言います。至らないところばかりですが、今日は二人が楽しめるよう尽くすつもりなので、よろしく」

 ようやく立ち直ったお兄ちゃんは右手を差し出す。あんたは育ち悪いくせにどうしてそんな自然なんだよ。納得いかんぞ。


 アイリは出された手と相手の顔を一度見比べて微笑み、それから手を取った。

「はい……ふふ、なんだか照れますね。もしかして、かりんと再会したときにもこうだったんですか?」


「そうだったかもしれませんね。でもかりんはアイリさんみたいに思ってくれませんでした。こちらは久しぶりに会った妹が、思っていたよりずっと綺麗で緊張してしまったんですが」

 芝居がかったセリフを言いながら、お兄ちゃんも視点を落として相手の顔を覗き込む。

「もちろん、いまも舞い上がってますよ」


 だからわたしの友達にそれやめろ、と思ったけどアイリは動じてないらしい。

「上手なんですね。で……そうなの? かりん」

 そっか、こういうの慣れてんのか。いやでもそこでこっちに振るな。

 つーかお兄ちゃんもいつまで手握ってんだ。ついさっきまでアイリたん言ってはしゃいでた奴とこれが同一人物とか詐欺すぎんだろ。


「兄妹なんだから普通でしょ。そいつがおかしいの」

「ふぅん……あ、お兄さん、わたしのことは呼び捨てで構いません。言葉遣いも、そんなに丁寧じゃなくて大丈夫です。かりんと同じように扱ってください」

 かりんと同じように、の前でアイリは含みある一瞥を向けてきた。妙な対抗心を感じるの、これ気のせいじゃないよね。アホのお兄ちゃんはどうせ気づいてないだろうけど。


「そう? ならアイリも敬語じゃなくていいよ。あと、お兄さんじゃなくて名前で構わない。それともいっそうちの妹になる? かりんと親友だったらあまり気兼ねもないだろうし、美人の妹が増えたらおれは嬉しい」

 ばこん。

「ひとの友達になにたわけたこと言ってんだあんたは!」

 さすがにこれは殴った。さっきの肘があったから手加減したけどさ。


「もう、乱暴しないでよかりん。わたし楽しみにしてたんだから」

「いやアイリもいまのは文句言おうよ」

「言わないよ。それも悪くないかなとは思うし……でも……えっと虎次郎さん、当面のところは遠慮しておきますね。かりんが気にしちゃうので」


 わたしに向けて口元だけで笑ってから、アイリは苦笑いしながら頭をさするお兄ちゃんへと視線を移す。

「そろそろ行きましょう、こんなところでいつまで立ち話もなんですから」

 それわたしが言おうと思ってたのに。みんな見てんだよさっきから。




 まぁどうにしろ見られるんだよな。

 大げさでなく、男のひとが片っ端からわたしたちを振り返る。たちといっても割合で言えば2:8でアイリだけどそれはしょうがない。むしろ完封負けじゃないだけわたしも捨てたもんじゃないというのが正直なところだ。ちゃんとおしゃれしてるときならなんとか4:6ぐらいまで縮められるんだけど水着じゃ無理。


 金髪をアップにして極小の顔をさらに小さく見せ、長すぎる手足にEカップの胸、片手でも抱えられそうなウエストに高く突き出たおしり。アニメに出てくるエロ担当ヒロインみたいなスタイルでホルターネックの白ビキニ、パレオもなしとかどんだけ強気だよアングロサクソン(ハーフだけど)まじパねぇ。

 布面積も少なめでちょっと下ちち見えてるけど大丈夫かそれ。青年誌のグラビアじゃあるまいしお父さんが見たら泣くんじゃねぇの?


 一方わたしだって日本人基準ならそうとうスタイルいいはずだし胸だって年齢考えれば特別小さくはないしまだこれから成長するからサイズは訊くな。パレオ巻いてるとはいえ瑠璃色のハイビスカス柄をアレンジしたオレンジのビキニはかわいいと思うし本来ならナンパのひとつふたつぐらいされてそうなもんだけど、みんなアイリとわたしのあと、保護者面で後ろに張り付いてるこれを見ると複雑な表情になって誰も声をかけてこようとしない。


「しっかし混んでるな。まだぎりぎり午前中だし大丈夫だと思ったのに」

 日本に戻ってから極端なひと混みのある場所に来てなかったお兄ちゃんは、アメリカ呆けでこういうのを忘れてたらしく、入場してからずっと呆気にとられてる。


「だからもっと早い時間にしようって言ったじゃん」

 プールサイドの良さそうな場所はとっくに取られてて、わたしたちはビニールシートを敷く場所を探してうろうろ歩き回ってる。お盆休みにはまだ少し早いからって、プールなんだから混むに決まってんだろ。

「仕方ないよ、虎次郎さんにだって都合があるんだし……あ、あそこ空いてる、ちょっと狭いけどシート半分に畳めば大丈夫じゃないかな」


 アイリが目敏く見つけた場所を確保したものの、一度に3人は座れそうにない。とりあえずわたしはさっさと座り、肩に日除けのタオルをかけた。まだ水にも入る前だけど暑くて早くも疲れたよ。主に心が。

「アイリも座れば? ちょっと休んでこうよ」

「遊んでからにしようよ。そんな長くはいられないんだし」


 長くいられないというのは別に用事が控えてるからではなく、わたしたちはモデルで、特に白人の血が強いアイリはあまり日焼けするわけにいかないのだ。日焼け止めは塗ってても限界はある。

 早い時間が良かったのも紫外線のきつくない時間帯にしたかったのが一番の理由なんだけど、お兄ちゃんは家事があるからあまり強く言えなかった。


「まぁ少しくらい休もう、おれもちょっと人当たりしちゃったからさ。アイリも座ってなよ。飲み物買ってくるけどなにがいい?」

「虎次郎さんもそう言うなら……じゃ、炭酸でなければお任せします」

 言われてアイリも大人しく座り、ふたりでお兄ちゃんの背中を見送った。売店からはさほど離れてなくても、なにしろひとが多いのでその姿は頭だけ残してすぐ隠れてしまった。


 それにしてもあいつ水着でも目立ってたな。背中広いのも腕太いのもわかってたとはいえ、あの凹凸はいったいなんなんだ。暑苦しいほど肉厚ってわけじゃないからさすがに鬼の貌まで出ないと思うけど。


「お兄ちゃんの身体に見惚れてたの? エッチなことでも考えちゃった?」

 気づいたらアイリが横目でわたしを愉快げに眺めてた。

「あアホか! エッチなのはあんたの水着姿だろ!」

 言い返すと、アイリはわたしと同じように肩からかけたタオルで胸を隠す。

「やだかりん、わたしノーマルなのに」


「わたしだってそうだっつーの。じゃなくてアピールしすぎだろ。初対面でそれとか逆に引くんじゃないの?」

「そんなことないと思うけどな。べたべたボディタッチとかしてるわけじゃないし。せっかく水着なんだから、わたしに釘づけになって欲しいじゃない。なのに虎次郎さん、かりんのほうばっかり見てるんだもん。ちょっと自信なくしそう」


 んなことねぇよわたしにはあんたのほうばっかり見てるように思えたわ。そりゃアイリと遊ぶのが目的なんだから、雑に扱うわけにはいかないにしても……しかしこの子なんかもう根本的にわたしと発想が違うよな。肉食ってこういうことか。


「あいつ絶賛してたじゃん。妖精みたいだとか言って」

 そりゃ言いたくもなるだろうけどさ。

「言ってたね。そのあと『かりんも魔法みたいに素敵だ』って」

 言ってたけど。

「わたしはいいから。つーか自信て、まず勝負の対象が妹ってのが間違ってるし」


 アイリはまた含みのある目で見る。もうやめようよそれ。

「でもほんとにものすごく優しいんだね。話半分に聞いてたからちょっとびっくりした。いまだって、自分が疲れたからって言いながら飲み物買ってきてくれたり」

 そりゃあいつマ○クスコーヒーより甘いからな……今日はわたしにだけじゃなくアイリにもだけど。てか話半分てなにさ。事実しか言ってねぇし。


「わかってないでしょかりん。甘いだけじゃない優しさ、ってああいうのだよ。ほんとに自分も疲れてたとしても、疲れてなかったとしてもああいう言い方するはずないもん」

「だからそれが甘いってことじゃないの?」


 わたしだって気づいてるっつーの。でも男のひとの優しさについて比べられるような経験はないから、アイリの言ってる意味がわからんよ。悪かったなお子様で。

「かりんに優しいんだよ……わかんないか。ふふ。お兄ちゃんかわいそ」

 ぬぐ。いい加減にしろ!


「んがーっ!」

 頭にきたわたしはアイリにのしかかり、タオルをはぎ取って全身くすぐりの刑。

「ちょっ……やだ、なにして……」

「よいではないか。ほれほれ」

「あっ、かりんどこ触っ……きゃっ!」

 逃げようと暴れるアイリを取り押さえながらもわたしは責め手をゆるめない。


 いつまでもやられっぱなしでいると思うなよ、言葉で勝てないなりにやりようはいくらでもあるのだ。しっかしほんとけしからんちちしてんなこいつなんだこの弾力と柔らかさ。

「ん? ここか? ここがいいのか? かわいい奴め……」

「やっ……かりんてば! もう!」


「……お楽しみのところ申し訳ない。ちょっといいかな?」

 聞き慣れた声に振り向くと、いつの間にか戻ったお兄ちゃんが片手で眉間を押さえて立ってた。

「飲み物、ここに置いとくから。おれはまたしばらく消えるけど、大勢いるところなんだからほどほどにな? あとふたりとも水着は直したほうがいい」


 はっとして見れば、わたしもアイリも胸がわりときわどいことになってる。慌てて直すと、周囲のひとたちが気まずそうに視線を逸らすのがわかった。うわやっちまった……。


「じゃ、ごゆっくり。先に水入ってくる」

 言い残すとお兄ちゃんは背を向けて歩き出した。アイリがとっさにあとを追う。

「待って虎次郎さん、違うの!」

「ちょっと待て! 置いてくな!」

 そんな優しさはいらない!




 ふたりがかりの全力でお兄ちゃんの誤解(というほど勘違いしてなかった様子だ)を解いたのち、3人で波のプールだの流れるプールだので遊んだ。

 どこも混んでたので泳いだ気にはなれず、どちらかと言えば浸かったというほうがしっくりくる。去年クラスの女子5人で来たときはもっとはしゃいだ覚えがあるけど、今日は気にすることが多かったせいかいまいち楽しみきれなかった。


 まぁアイリが楽しそうだったので、いいと言えばいいのかもしれない。そんで2時間も経たないうちに出てしまったから、イベントをこなした感は薄い。待ち時間が長すぎてウォータースライダーを諦めたのもあるかもしれない。


 まだ昼間だし、解散するには早いから国立でお茶でも飲もうという流れになった。こないだのがあってから避けてたお兄ちゃんとの外出も、アイリが一緒だったら変な心配はあるまい。もともと案内してあげたかった店もいくつかあることだし、却ってちょうどよかった。


「さてと。お茶だけにする? それともなんか食べたい?」

 駅を降りたところで尋ねた。カフェ好きのわたしとしては地元ならどこへ向かってもお気に入りの店をいくつか用意出来る。いや用意するのわたしじゃないけど、目的によって行く店が変わるから、ここで決めておかないと暑い中を無駄に歩き回ることになる。


「わたしはスタバで構わないよ?」

 アイリが意地悪く言うので睨んだ。まだ根に持ってんのか。ちなみに南口を出てわりとすぐのところに大きめのスタバがあって、学校が終わったあとに若葉やいずみとたまに利用する。いいじゃんスタバ。風情はあまりないかもしれないけどわたし好きだよ。


「うーん……ロスではよく使ったし、おれも好きだよ。でもせっかくこんな美人をふたりも連れてるのに、少しもったいないかな。かりんに任せて悪いけど、今日は違うところがいいかも。あ、おれは腹減ってないからお茶だけでもいいよ」

 お兄ちゃんに悪びれた様子はない。これ気を遣ったつもりなんだろうな……そいや西海岸て本場だったっけ。なんか50メートルおきぐらいの間隔でスタバあったよな。


「ぷくくく……」

 見るとアイリが口元を押さえてる。そりゃ可笑しいだろうよちくしょう。

「あれアイリ、おれなにかおかしなこと言った?」

「いいえなにも。ぷっ……わたしは虎次郎さんに賛成です」

 そう言うアイリはまだ笑いをかみ殺してる。こいつ自分で言ったくせに……。


「わたしお腹減ってるし。じゃ行くよ」

 朝昼ご飯(ブランチとも言う)を減らしたわたしは事実お腹が減ってるので、エスニック系のフードが充実してるオープンカフェを選んだ。だったら最初からそう言えよ、とは自分でもちょっと思う。


 お昼時はやや過ぎたとはいえ店内にはまぁまぁ人が入ってて、BGMが大きめの店なこともあり雰囲気は賑わって見える。

 わたしたちは5人掛けの丸テーブルに通された。みんな座ったところでちょうど曲の替わる空白が訪れ、そこに隣りのテーブルからこんな声が届く。

「うわ……なんかすっごい集団……あれ?」


 タイミングのせいではっきり聞こえてしまった。こっちに向かって言ったつもりじゃないんだろうけど、アイリと一緒にいるとたまにこういうのがある。

 今日はわたしの格好も本気モードだし、アイリも当然そう。プールの前はノーメイクに近かったものの、帰りがけ着替えてから一緒にメイク直してたら、いつの間にかふたりしてガチになってしまった。さらにお兄ちゃんまでくっついてるわけで、紫外線より視線で肌にダメージ受けるんじゃないかってぐらい目立つ目立つ。


「そういうこと言っちゃ……あれ?」

 同席のひとがたしなめる。いえいえ済みませんねこんな集団で……。

 その前のは知ってる声に聞こえたけど……こんなとき、うかつに反応して目を向けると威嚇するみたいになっちゃうので気づかないふり。

 そこに驚いたような声が立て続けにかけられた。


「かりんちゃん?」

「アイリじゃない。久しぶり」

 名前を呼ばれて振り向けば、先の声は唯さんだった。そりゃ聞き覚えもあるわ。

「あ、こんにちわ唯さん。奇遇ですね」

 もうひとりはわからないけど、知り合いってアイリ、あんたも偶然体質か。おまけにそれが唯さんの連れとかどんだけ狭いんだよ世間。


「今日子先輩。お久しぶりです、どうしたんですかこんなところで」

 アイリも声のほうを向いて答えた。あんたひとが案内した店をこんなところとは失礼だな、

「こんなところとは失礼ね。いいじゃない、わたしがカフェでお茶したって」

 と口を挟む前に言われた。先輩いいひとじゃん。にやりと横目を向けてみれば、アイリは恥ずかしそうに肩をすくめてこめかみを掻いてた。


 あ、これ知ってる。かおりさんとか相手にするときによく見るやつだ。アイリは好意を持ってる先輩とか目上の女性に対するとき普段より子供っぽくなる。そんでわたしはそれ見るのが好きなのだ。だってかわいいし。

「でも先輩、カフェっていうより名曲喫茶みたいなイメージだから」

「わたしのことなんだと思ってるのよ……まぁ、そういうとこも行くけど」


 なんか普通に会話始まったな。先輩ちょっと面白そうなひとだし、さらさらのセミロングが品良く似合った美人だし、声も綺麗でわたしは好感を持ったから邪魔しようと思わないけど、お兄ちゃんのことほっといていいのかね。


 そのほっとかれてるひとに視線を移すと、アイリの先輩を見ながら固まってた。瞳からも感情が読めない。

 ん?

 なんだこれ。初対面のアイリにすら普通に接する奴がこんなふうになるって。

 気になってしまい、改めて相手をまじまじと見る。……あれ?


「あ……、ごめんなさい、いきなり話し始めちゃって」

 目が合うとそのひとは軽く頭を下げ、少し申し訳なさそうな笑顔を見せた。内心慌てつつも同じように会釈を返し、こちらも表情を崩す。

「いえ大丈夫です。ただ、なんだかアイリ嬉しそうだな、と思ったので」


 お兄ちゃんの様子は謎のままだけどここはとりあえず放置。ふふ、と漏らされた先輩の声が素敵なせいで、そっちに気を取られたのもある。

「じゃアイリ、わたしのことは今度でいいから。お連れさんに戻ってあげて」

 どうやら外見の通り、丁寧なひとみたいだ。こういう自然な上品さって憧れる。威嚇されたと思ってないといいな。


「でもせっかくだし。こっちのテーブルちょうど5人掛けだから、良かったら先輩たちも一緒にどうですか? ……かりんもどう? 虎次郎さんも」

 アイリは答えてからわたしのほうをちらっと見る。


 え、それはさすがにだめじゃね? なにしに来たんだよあんた、と言う前に、

「それいいね。先輩後輩どうし、ちょっと親睦深めようよ」

 唯さんも乗ってきた。いやわたしはいいけど、まだ固まってる……あ、動いた。

「かりんさえ良ければ、おれは構わないよ」

 そう言うお兄ちゃんはまだ、わたしにしかわからないレベルでぎこちない。



「十六夜今日子、と言います」

 とアイリの先輩は名乗った。名前カッコいいなおい。

「なんだか大げさな名前ですけどね。自分で決められるわけじゃないので」

「あ、それわかります。わたしなんて名字が高嶺で、下の名前が難しいほうの華に麒麟の麟でかりんですから」


 妙な引っかかりはあったものの、このひととはフィーリングが合う予感。なにしろアイリの好きな先輩だし……という以上に、アイリがこのひとを好きな理由をわかる気がする。


 美人は確かに美人なんだけど、洗練度込みで言えばアイリはおろかわたしだって負けてると思わない。でもそれ以前に、凛とした姿勢の良さとか、当たりの柔らかい中に芯を感じさせるところとか、相手の人柄を見て喋る様子とか、落ち着いた口調にきらきら透き通る声とか……それこそ大げさに言うなら、魂が美人、という印象。あるいはお兄ちゃんも、このひとのそういうところ見て固まったんだろうか。


 十六夜さんもさっきお兄ちゃん見て一瞬固まったようなところがあったけど、まぁこいつはあれだしな。まだ喋ってぼろも出してないし、このひともわたしたちと歳近い女性なのだからそれは責められまい。お兄ちゃん絶対余計なこと言うなよ。


「高嶺……華麟、さん、ですか」

 十六夜さんはわたしの名前を噛み含めるように呼んだ。呟いた、のほうが正確かもしれない。読みの響きは漢字でも、声が好きな声優さんに似てるのでちょっと嬉しい気分になった。


「それ言ったらわたしなんて藤崎アイリーンだよ?」

 英語でIreneは気に入ってても日本語の漢字カタカナはあまり落ち着かない、というアイリが口をとがらせる。ニュアンスはわかるんだけどさ。

「でもあんたの場合それで合ってるじゃん」


「そんでわたしは加藤唯です。なんか普通だよねこの中じゃ……しっかし」

 唯さんも自己紹介しつつ、わたしとアイリを見比べる。

 それから、複雑な内心を押し殺し切れない様子で尋ねてきた。

「そりゃお互い知ってるのは当然としてもさ、ふたり仲良いんだ」


「えへへ。黙っててごめんなさい」

 なにを隠そうわたしとアイリは同じファッション誌で仕事をしてるモデル仲間で、メディア部にわたしがスカウトされたのも言ってみればそれが理由だ。


 ミタ高と東高は親の世代から続くライバル的な進学校で、学力だけで言えば東高のほうが上なのだけど、部活その他文化活動ではいろいろ張り合ってるらしい。

 そんでミタ高にも似たような部活が去年出来て雑誌を作るようになり、打倒東高の目玉コンテンツとして用意されたのが、ミタ中に通ってるアイリのグラビア。

 それを受けて東高サイドで白羽の矢を立てたのがわたしというわけだ。


「だって唯さん、アイリのこと親の仇みたいに敵視してたから言いづらくて」

 いやー、あははー、と唯さんは苦笑い。それからアイリを指差す。

「しょうがないじゃん、こんな飛び道具出してくるとかずるいもんあいつら」

 まぁ高校の部活動にアイリを持ち出すなんて確かにやりすぎだよな。最近は本業の誌面でもどんどん扱いが大きくなってきて、次世代のメイン的な存在なのだ。


「お互い様じゃないですか。そっちもかりん使ってるんだから」

 アイリは呆れ顔で紅茶を口に運ぶ。簡単に言うけどあんたの対抗馬扱いとかこっちはすげぇプレッシャーなんだからな。

「唯さんは実際大人げないですよね」と十六夜さんが頷く。

「いじめないでよ今日子ちゃん。どっちの味方なの」

「わたしは中立ですよ? アイリはかわいい後輩ですから」


 あ、いいなぁ。唯さんもカッコいい系の美人だけど、十六夜さんみたいなひとにかわいいとかわたしも言われたい。

 と、羨ましいのが顔に出てしまったのか、十六夜さんがわたしを見て続ける。

「それから華麟さんも。……名前にすごく似合ったひとだな、って思う」

 やだなにそれ照れるし。もうこのひと好き。


「あはは。ありがとうございます。画数多くて、書くの大変なんですけどね」

 そのせいで子供の頃は自分の名前があまり好きじゃなかった。ひらがなで呼ばれたいのも、響きだけでなくそれが尾を引いてる面もある。

「そうだ十六夜さん、わたしにさん付けいらないですよ。アイリの先輩ならわたしにとっても先輩みたいなものですから」

 すると十六夜さんは少し目を丸くした。あれ。焦ってアピールしすぎたか。


 でもすぐにその目を細めて笑顔をくれた。

「……じゃ華麟ちゃん、わたしのことも今日子でいいよ。名字派手だから、いつまで経っても呼ばれ慣れないんだよね」

 お。やったー。へへ。やばい頬ゆるむ。

 先輩どころかいっそ大げさ名前つながりでわたしのお姉ちゃんになってくんねぇかなこの存在が素敵すぎるひと。そんでひらがなでかりんて呼んで欲しい。

「はい、それもわかります。……ところであんたも自己紹介ぐらいしたら?」


 ここまで蚊帳の外だったお兄ちゃんを見る。表情はもう普通だけど、ここまでキザセリフのひとつも出てこないとかやっぱりなんかおかしい。

「ん? ああ……済みません。これだけ美人に囲まれると少し緊張しちゃって。初めまして、高嶺虎次郎です」

 挨拶にもキレがないし。ほんとどうしちゃったのこれ。脇腹でも痛いのか。


「なにいまさら緊張してんの。らしくないじゃん。そりゃふたりとも綺麗かもしんないけど、そんなの普段から妹で見慣れてんでしょ」

「かりん……自分で言う?」

 うるさいアイリ。言ってからちょっと恥ずかしくなったわ。


「え、てことはかりんちゃんのお兄さんなんだ。すっご、超美男美女兄妹! こういうのってほんとにいるんだね……うわぁ。そんでアイリ……ちゃんがその彼女なわけ?」

 唯さんちょっと慌てすぎです。そんでアイリはお兄ちゃんの彼女じゃないです。


「ふふ、そうなんです」

「ぬけぬけとでたらめ言うな!」

 アイリの首絞めて言ってやった。いや若葉じゃあるまいし手加減はしてるよ?

「もう、冗談だってば。このぐらいで取り乱さないでよ、はしたない」

 そういう冗談はふたりのときだけにしろよな、と思うわたしの手をアイリは雑に引き離す。


「あ……びっくりした」

 振り返ると今日子さんが血の気の引いた顔で、文字通り胸をなで下ろしてた。ごめんなさい驚かせてわたしほんとは乱暴な子じゃないんです。ぜんぶお兄ちゃんが悪いんです。

「わたしだって冗談だっつーの。聞いてください、最近アイリひどいんですよ」

「ひどいのはあなたでしょ? 先に嘘ついたのだってそっちじゃない」


「ふふ。ほんとに仲良いんだね。アイリにそういう友達が出来て良かった」

 今日子さんは慈しむような眼差しをアイリに向けてる。そいやこのひとアイリの先輩、って学校のだよね。

「あ、話変わりますけど、今日子さんとアイリってどういうつながりなんですか? 中学の先輩後輩だろうなとは思うんですよ、でもアイリ部活とかやってないはずだし」


「うん、それはね」

「やだ先輩それやめてください!」

 あら取り乱してるわこの子ったらはしたない。面白いなこれ。

「ぜひ教えてください、いまこの場で」

「かりん!」


「じゃさわりだけ言うと、アイリもわたしと同じ文芸部だったの。モデル始める前の半年ぐらいだけどね。それ以上はいやがってるから可哀相かな。ごめんね」

 それ初耳。待ち合わせするとたまに本読んでるなーと思ってたけど、この派手なのがそういうイメージないし……いや決して地味とかディスってるわけじゃなくて今日子さんは可憐な文学少女のイメージぴったりです……あれ?


 またなにか頭に引っかかったところで、唯さんの声がかかった。

「やー、今日子ちゃん大人気だね。わたしもちょっとは構って欲しいけど、今日子ちゃんだし仕方ないか。ところでお兄さん」

 お兄ちゃんのこと引っ張り出してくれるんだ。ごめんなさい、無視するつもりはなくても、なんとなく今日子さん中心になっちゃうんですよ。


 もちろん本気で拗ねてる様子には見えないし、なんだかんだで大人なんだな、とかのんきなこと考えてると、

「アイリちゃんとは付き合ってないんですよね、じゃこちらの今日子ちゃんとかどうですか?」

「ちょっと唯さんなに言ってんですか!」

「だめですそれは先輩でも!」


 ……今日子さんもアイリもすごい剣幕だったのでツッコミ損ねた。唯さん、それは唐突にもほどがあんだろと。

 でもどうなんだこれ、お兄ちゃんとくっつけばわたしのお姉ちゃん……それ魅力的な提案だけど……いやいやだめでしょ、だってそんなの今日子さんに悪いもん。

 ……あ、そっか。


「ていうか、むしろわたしが今日子さんの妹になればいいんじゃないですかね」

 というわたしの声は、さっきの唯さんのと同じようにBGMが切り替わる隙間と重なって、その場にくっきりと響いた。


 ……あれ? なんでみんな固まったの?

「あの……華麟ちゃん?」

「……天然だとは思ってたけど……」

「す、すっごい斜め上行ったね」

 なんかわたしおかしなこと言った、かな……ああ、うん、言ったね。


「いや別にお兄ちゃんがだめって意味じゃないよ?」

 慌ててフォローしようと思って見ると、なんか明後日のほう向いて肩が小刻みに震えてる。

 もしかして泣かせちゃった……? 違うんだよ? シスコンのお兄ちゃんにはいまのがショッキングな発言に聞こえちゃったかもしれないけど、そうじゃなくて。

「……く……ふ……ぐふっ……」

 どうしよ……まじ泣きとか引くわ……じゃなくてあとで謝らなきゃ……。


「ふ……ぶっ。ぶあはははははははははははははははははは!」

 って爆笑かよ!

「はぁ、やばい面白すぎて脇腹痛ぇ……。かりん最高。愛してる」

 そう言ってお兄ちゃんは椅子に深く腰かけ直し、すっかりリラックスした様子でコーヒーに口をつける。飲んでる途中でまた吹き出しそうなのが腹立たしい。


「あ、あんたな、まぎらわしいから! つーかさらっとなに言ってんだ!」

「え? 愛する妹だっていつも言ってるのに。かりんこそいまさらなに言ってるんだよ」

 言われてるけど! そのタイミングおかしいだろ!


「あの、えーと? いまのは?」

「こ、虎次郎さんて……」

「……お兄さんすごいね……」

 ほらみんな呆れてるわ。……でもまぁ、調子出てきたと言えなくもないか。

「さて、そういうわけで」

 お兄ちゃんはカップを置いて今日子さんに向き直り、口調も落ち着き払ったものに変わる。ただ心配しといてなんだけど、これはこれで違う心配があるんだよな。


「悪いけどかりんを譲るわけにはいかないんだ。もちろん、十六夜さんのほうからかりんのお姉さんになってくれる、というなら話は違うけどね」

 ほらな! いきなりなんてこと言いやがったいろんな意味で!


「そういうわけってどういうわけだ!」

「聞こえなかったならもう一度言おうか?」

「言わなくていい!」

 もう一生黙ってればいいのに!

 今日子さんは絶句したまま俯き、お兄ちゃんはそれを楽しそうに眺める。


 その視線を遮るようにアイリが身を乗り出した。

「ちょっと虎次郎さん? 今日はわたしとデートだったんじゃないですか?」

「そのつもりだったよ。でもアイリが十六夜さんとデート始めちゃったから」

「なっ……だ、だってそれは」

「別にアイリとデートじゃないし!」

「うーん、賑やかだね。今日子ちゃん返事しなくていいの?」


 がたん、と椅子が鳴って。

「よ、用事を思い出したんで帰ります!」

 今日子さんは猛烈な勢いで荷物をまとめ、唯さんに千円札を押しつけて行ってしまった。

 てか顔すっごい真っ赤だったけど……うん、アイリみたいに受け流せるほうがおかしくて、あれがきっと普通の反応だよね。あとでお兄ちゃん脇腹もう1発殴る。


 唯さんは出口のほうを面白そうにしばらく眺めてから、わたしたち3人を見渡して口元をゆるめる。

「じゃ今日子ちゃんも帰っちゃったことだし、わたしも行くわ。お兄さん、なかなかやるね。かりんちゃんと、アイリちゃんもまたね。ごゆっくり」

 言い残して唯さんも店を出ると、今度はアイリが荷物をまとめ始めた。


「ちょっと待ってよ。あんたまで帰っちゃうの?」

「だって、今日のところは振られちゃったし。でも」

 それからお兄ちゃんに目いっぱい鼻先を近づける。

「これで済むと思わないで。わたし男のひとからこんな扱い受けたの初めてなんですから」


 あれ? いや確かにこいつはろくなこと言わないアホだけど、わたしにはどっちかと言えばあんたのほうが途中から微妙に突き放したように見えたけどな。お兄ちゃんも似たようなこと言ってたし。違うのかな。


 お兄ちゃんは顔色を変えずに答える。

「じゃ期待する。おれはこの1日でアイリがかわいくて仕方なくなったよ」

 こ……こいつ、いい加減にしろよな……。

 見ればアイリも、わずかながら今度こそ頬を染めてた。

「か、帰ります。それじゃまた」


 そうしてあとには、わたしとお兄ちゃんのふたりだけが残された。

 さっきまでの騒がしさが嘘みたいに広さを持て余したテーブルに、ハウスだかラウンジだかおしゃれっぽいBGMがやけにうるさく響き、わたしは少し寂しいような、ほっとしたような難しい気分で冷めかけのチャイに口をつける。

 あとでアイリにフォロー入れなきゃ。このバカのせいで怒ってるかもしれないし。ついでに今日子さんの連絡先とか聞くし。


「そういえばかりん、飯まだだったよね。おれもちょっと腹減ってきたし、なんか注文しようか」

「あんたほんと最低だな!」

 なんでこの流れで普通に飯が食えんだよ?

「でもかりんは最高だよ。言ったろ? それに腹が減っては戦は出来ぬってな」


 誰と戦すんだよ。まじ意味わかんねぇよ。


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