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すいません!インフルエンザでした、皆様気を付けて。
――――――ピピピピ!!!
「うっせー!!!」
おっはー!日陰ちゃんだよー!
今日から晴れてお一人様のピカピカの1学生です!
「あー、ダルい、眠い…。ん?どこだここ?」
目を覚まして辺りを見回す。
「ああ、たしか一人暮らし始めたんだっけ?」
ベッドから降り、寝室を出る。
うわぁ、結構広いなー。
「とりあえず二度寝で「おはようございます」…おはようございます…」
由香里さん…タイミング悪いよ。
いや、二度寝を止めたから良いのかなぁ?
「朝食の準備は出来ております。朝食を食べ終えたら車で学園まで送ります」
「ありがと」
「仕事ですので」
…仕事じゃなきゃこんなガキの世話なんてやってらんないよねー。
はぁ、早く食べて学園に行こう。
朝食を食べ車で学園に向かう。
ちなみに由香里さんとはあの後から話していない。
だって面倒くさいし。
学園に着きましたー!
あの時は色々と必死で学園をあんまり見てなかったけど、改めて見るとめちゃめちゃでかい!
ゲームのパッケージだとあんまりでかく感じなかったのに、現実で見るとハンパねぇ…。
私が小さいってのも理由かな?
ま、とりあえず教室に………
「やあ、姉さん。待ってたよ」
いやあああああ!なんで 陽向が目の前にいるのー!?
しかも待ってたですと!?
きめぇよ!まじきめぇよ!!ありえないよ!!!
「あら?白鳥様、おはようございます、失礼します」
「ちょっと待って、少しお話しよ?ね?」
こっちに話したいことなんかねぇよ…。
って考えてる間に無理やり目立たない場所に連れて行かれちまった…。
ちっ、今はコイツ相手に下手に動けない。
…仕方ない、5分ぐらいなら聞いてやろう。
白鳥家に睨まれるにはまだ早すぎる、奴に迂闊な行動は致命的だしね。
「…5分で終わらせて」
「とりあえず、お父様が姉さんに酷い事したみたいでごめんね?」
「続けろ」
「でも大丈夫!僕が必ず姉さんを白鳥家に連れ戻してみせるから!」
「……………………は?」
いや、意味がわからないから。
「前に約束したじゃないか、姉さんを助けてあげるって、忘れたの?」
……………ちょい待てこら、お前私が辛い環境にいた時に1度も助けてもらった覚えが……あ、なんか思い出してきたぞ…。
あー、これが 日陰があの環境で文句言わずに従っていた理由か、思い出させてくれてありがとうくたばれクソ野郎。
「………」
思い出した記憶を簡単に説明するとこうだ。
日陰は辛い環境で苦しんでいた、 クソ野郎はそんな日陰に「姉さんを僕が必ず助けてあげる!だから僕の言う通りにしてね?」って言ったんだ。
それで日陰はコイツに縋って生きてきたと、外にも出なかったから救いはコイツだけだと、そんで日陰はそれを信じて耐えていたってわけだ。
で、その希望に縋る日陰をクソ野郎が利用していたと。
ふざけんなよコラ、日陰を、人の事を何だと思っているだ。
許さねぇ、日陰の敵は学園卒業までに必ず取らせてもらうからな…。
だから今はこの怒りを拳握って耐えてやる。
「忘れたの!?ならまた約束しよっか?姉さんの味方は僕だけだよ」
美春ちゃんがいるわボケ。
「忘れてないよ、でも私は自分で私を救うから大丈夫」
お前ら白鳥家から日陰を救う。
そのために私は白鳥家を許さない。
白鳥家を潰しはしないよ、ただ、無駄にある権力と白鳥家という名の価値をなくす程度さ。
いつまでも白鳥家という名に固執して無様な姿を晒す姿を上から見下ろしてやるからな。
私に、日陰に二度と関われないように。
「何を言ってるん…」
「あ、そろそろ教室に行かなきゃ」
「あ、待っ」
うるせぇ、これ以上は限界だ。
本当は今すぐ殴りたい。
でも今の私は白鳥家の名を持っている庶民、殴ってしまえば相手の思う壺だ。
暴言も盗聴されていたら厄介だしね。
…下手したらあのマンションビルを奪われるか連れ戻されてしまいかねない。
ああ、朝から辛すぎ…。
「日陰ちゃんおはよー!あれ?なんか暗いけどどうしたの?」
「美春ちゃーん!」
ああ、美春ちゃんの笑顔に癒される…。
「大丈夫?」
「うん、あれはゆっくりと沈める。気付いたら手遅れの状態にまでね」
「なんか日陰ちゃん怖いよ!?」
しまった、ついブツブツ言ってしまった。
「おらー、お前ら早く席につけー!出欠確認すんぞー」
美春ちゃんとじゃれあっていたら先生が来た。
先生、一応お金持ちが沢山いる学園なのにそんなんでいいの?
「よし!全員いるな!そんじゃ10分後に授業をはじめるから準備しとけよ!以上!」
先生はそう言って教室から出ていく。
ちなみにこの学園は初等部から先生は教科ごとに変わる。
それぞれが厳しい試験を超えたエリートが担当するらしい。
…あの先生も意外とやり手かもしれないな。
私は授業準備をしながらそんなくだらない事を考えていた。
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学園生活最初の授業が始まる。
1時間目の授業は算数だ。
やっぱりみんなは学園に入学して最初の授業気合いが入っているなー。
………あーあ、私には退屈だ。
流石に足し算引き算くらいは出来るし、一応周りから下手に浮かないように黒板に書かれた事はしっかりノートに書いている。
本当は話したりしたいんだけど、誰も話さないから話せない。
まぁ、授業を真面目に聞いている人の邪魔したりしないけどね。
美春ちゃんも頑張っているし。
というか一応は名門だから授業が難しいかと思えばそうでもないな。
大抵の奴は礼儀作法を重点的に学んだんだろうなー。
既に混乱しちゃった人がいるし。
…美春ちゃんとか。
「………んじゃ次の問題は、白鳥!答えてみろ」
あ、呼ばれた。
えーと、8+7か。
「15です。後私は日陰と呼んでください。その呼び方は物凄く不快です」
「…そうか、分かった………あ、それと正解だ、座っていいぞ」
ふぅ、白鳥と言われない様に他の教師にも言わないといけないな。
「日陰ちゃん、算数得意なの?」
美春ちゃん、算数苦手…みたいだね……。
1時間目なのに満身創痍な顔になってるよ…。
後で教えてあげよう。
前世にクラスの友達に勉強教えていたから自信はある。
そーいや教えた奴等みんな結婚していたなー。
…くそっ!妬ましい!
「ひ、日陰ちゃん?なんか怖いよ?」
「ああ、ごめんね美春ちゃん。私は全教科得意だし教えられるからいつでも頼ってね」
「う、うん(さすが日陰ちゃんだー)」
そんな感じで授業時間を過ごして(国語の先生にお願いして全ての先生に日陰と呼ぶように伝えて、とお願いした)お昼の時間。
「ああ…お昼ご飯の時間だー…」
「美春ちゃん、大丈夫?」
「うん、ギリギリ大丈夫、かも?」
「なんで疑問形」
ちなみに現在私達はお昼ご飯の時間なので、お弁当を食べている(私のは由香里さんが作ったもの)。
この学園は給食ではなく食堂かお弁当なんだとか。
…金持ちは好き嫌いやワガママ多そうだもんねー。
私達は席が隣同士だから教室で食べる事にした。
いやーわざわざ移動しなくて済むから楽だねー。
もちろん食堂で食べる事も出来るけど、なんか面倒くさい事になりそうだからこれからもお弁当にする予定。
ただ、ひとつだけ予定外が…。
「鷲宮様!教室でお弁当なのですか?私もお弁当です!一緒に食べませんか?」
「鷲宮様、今日の私のお弁当は三ツ星レストランのシェフに作って頂きましたの。一緒に食べませんか?」
「…ふんっ」
なんでいるんだよ鷲宮ぁ!
黙って食堂にいけやゴルァ!!
「あー、日陰ちゃん、食堂か外に行こうか?」
「いや、早く食べて図書館に行こう」
「なんで図書館に?」
「うるさくなる元凶、イケメンが入れなさそうな場所だから」
「…うん、図書館いこう」
分かってくれたみたいでなにより。
本当は食堂とか外に行きたいが他の攻略対象者に会いそうで嫌なんだよな…。
教室にしたのは鷲宮が他と違って今のところは無害なのと他の三人と仲良しって感じじゃないからだ。
さすが俺様系、孤高気取りやがって、キモーい。
ちなみに思考中に鷲宮を見ていない。
攻略対象者を考えながら貶したり感想を少しでも抱けばフラグになりかねないからなー。
「ごちそうさま」
「日陰ちゃん早くないっ!?」
「早食いには自信があるの」
前世で歯並び悪かったから普通の人より食べるの遅かったんだよね。
で、遅れないように頑張ったんだよなー。
そしたらいつの間にか他より早くなったんだよね。
その代わり、あんまり味わってないけど。
ちなみに今は歯並びがすんばらしぃ!から速度上がっております。
いえーい。
「うぬぬ…すぐ食べるからちょっと待って!」
あー、別にずっと待ってるから急いで食べなくても大丈夫なのに。
もぐもぐしてる美春ちゃん可愛いのにー。
あ、急いでる美春ちゃんも可愛い。
「うぐぐっ!?」
「急いで食べなくても大丈夫だよ」
とりあえずお茶飲もうか?
「っ!………かはぁ…死ぬかと思った」
「私、待ってるから急がなくていいんだよ」
「もー、それ先に言ってよー」
「ごめんごめん」
という感じでお弁当を食べてから、お昼休みは図書館でのんびり過ごす。
ちなみに通う学部ごとに図書館があって、初等部の生徒は借りるだけ、監視ありなら中等部や高等部の図書館にもいける。
自分のいる学部より下の学部にはいけないので注意。
で、現在は美春ちゃんと絵本読んでます。
絵本をキラキラした目で読む美春ちゃん。
あー、癒されるー。
「…昼休みがそろそろ終わるね、教室に戻ろう」
「あ、もうそんな時間?よし!次の時間は体育だから早く戻って着替えよう!」
あー、そうか、着替えは女子更衣室(あ、この学園にプールはないよ)で着替えるんだっけ?
更衣室には鍵付きロッカーがあって防犯対策はばっちりだったりする。
ロッカーに荷物をしまったら女性の先生にロッカーの鍵を預けるから無くすとかの心配もない。
このシステムを最初に聞いた時は拍手したくなったね。
前世の私は体育ある日は最初から体育着だったり教室で着替えていたなー。
…うん、男子の存在が気持ち悪くなりそうだから忘れよう。
教室に戻って着替えを手に更衣室に向かう。
更衣室に着いて着替えようとした時に昼休み終了のチャイムが鳴る。
うん、鷲宮が教室に女子を集めてくれているおかげで楽に着替えれるよ。
「日陰ちゃん着替えたー?」
「うん、着替えたよ」
「よし!体育は得意だからね!みんなが来る前に早く校庭行こう!」
ロッカーの鍵を預けて校庭まで走る。
………私は走っていた時に気付けばよかった。
今の体は、前世の影響が皆無なんだと。




