表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

10

 体育の授業が始まる。

 意外な事に体育は男女別らしい。

 説明によると何処ぞの親が学園に対し「男女を別にしろ!」と訴えた人が居たんだとか。

 おかげで体育は鷲宮がいないから沈黙状態だ。


 いやはや、鷲宮が持つ権力の魅力とイケメンっぷりには恐ろしいったらありゃしないね。


「はい、体操終わり。いまから五十メートル走やるので出席番号順に四列で並んでー」


 ふむ、五十メートル走か、前世じゃ女子学年1位だったな。

 うふふふ…。


「それじゃーいくわよー。位置について、よーい、ドン!」


 おお、みんな意外と速い速い。

 これは全力で頑張らないとね。


「あ、次日陰ちゃんだね!頑張って!」

「頑張る」


 さぁ、私の全力を見せてやろう!


「次!位置について、よーい、ドン!」


 うおおおおおおおお!!!

 …………………………ドサッ


「日陰ちゃん!?」

「日陰ちゃん!大丈夫ですか!?」


 ……………あ、


「…私…部屋から…出た……こと……なかった………ん…だった…………」

「日陰ちゃーーん!!!」


 美春ちゃんの声が…遠のいていく……。



 う…あったまいったーい…。

 あー、そうか、倒れたんだった。

 足が物凄く遅かったし、30メートルくらいしか走れてなかったな…。

 ふぅ、とりあえず、目を開けたらあれ言わないといけない(気がする)。


「知らない天井だ」


 うん、言ってみたかった。

 後悔はしていない、満足はしている。

 冗談というかおふざけはこれくらいにして。

 えっと、今の時間は…あれから20分か。

 まだ体育の授業は終わってないな。

 1人で着替えるのは嫌だから早く戻ろう。


「起きたの?ここは保健室よ。日陰ちゃん…だったかしら?大丈夫?」

「あ、はい。大丈夫です」


 おー、美人さんだー。

 眼福眼福。


「日陰ちゃんを美春ちゃんが保健室まで連れてきてくれたのよ」

「そうですか、後でしっかりお礼します」


 いやー、日陰が運動していなかったこと、すっかり忘れていたよ。

 …普通レベルになれるように、なんとかしなきゃな。

 前世から考えて、運動神経がない可能性は低いだろうし頑張ればなんとかなる…はず。


「気分も良くなったので体育館に戻ります」

「もう無茶したらダメよー」

「う、はい」


 むー、次はない…はずだ、よ?

 はぁ、まさか一番の敵が自分の体力のなさだとは…憂鬱だぁ…。



「もう、日陰ちゃん、心配したんだからね!」

「ごめん、私も体力のなさがここまでだったのは予想外だった」

「次から気を付けなよ?」

「おーけー大丈夫大丈夫ー」

「…うわぁ、信用できない」


 実際に体力のなさがどこまでなのか分からないから仕方ない。

 仕方ないよね?




======================




 その後は特に何もなく放課後だ。

 というより、疲れて何もする気が起きなかったが正しいかもしれない。

 …体力なさすぎだよこの体…。


「どーしよっかなー」


 このままじゃ面倒な事態になった時に走って逃げ出すことが出来ない。

 私は女である以上、どう頑張っても力で男には敵わない。

 今は初等部だから力で捩じ伏せられる事はないが、いずれ肉体的に男に劣る。

 庶民になりあの攻略対象者共を相手に生きていくならば、なんとしても回避能力や走力は必要になってくる。

 腕掴まれたらオワコン、これが私の中で乙女ゲームにもつ偏見ね。

 ちなみにこのゲームでは四人が腕を掴む。

 ………腕にナイフでも仕込もうかな?

 美春ちゃんが危ないから無理か、ならやっぱり回避して逃げに徹するに限る。

 …………で、結論はやっぱり体力向上させなきゃならないわけで。


「どーするー?」


 もう、どうでもいいか!

 うん、どうでもいいよ!

 私は!これ以上!努力したくない!


「やめよ」

「…先程から何やら考えているようですが。どうかしたのですか?」


 ………いつの間にか車に乗っていたのか。

 由香里さんが訝しげに私を見てる。

 あんまり仲良くない人と雑談とか楽しくないからしたくないんだよね。


「色々と考えてたけど、やめた…だからなんでもない」

「そうですか」


 その後は特に会話もなくマンションに到着する。

 …あー、このマンション見ると嫌でも前世より金持ちだと感じてしまう。


「ねー、たしか近くに商店街あったよね?行ってもいい?」

「何か気になる事でも」

「商店街なんだから買い物に決まってるでしょ」

「…ついて行きますから行く時には必ず呼んでください」

「じゃ、着替えてから歩いて行くよ」

「はあ」


 由香里さんには悪いが前世の当たり前にに浸りたいんだよね。

 心身共に疲れてるけど精神的な方がヤバ気な悲鳴あげてるからなー。

 マンションに帰りぱぱっと着替えて財布と携帯(ガラケー、美春ちゃんと連絡先交換してある。ちなみに学園には持っていきません)をぽっけにしまい、外で待っている由香里さんと合流する。

 筋肉痛の様な痛みと疲労感を感じながら商店街に向かう。


 2分位で商店街についた。

 思ったより近かったな。

 由香里さんはどこかに電話した後私から少しだけ離れた場所にいる。

 何を話しあったか気になるがあんまり考えしたくないダルい。

 …よし、楽しんで忘れてやる。


「とりあえず、財布中身は…27万…。」


 ………………………なんで前世に浸りたいのに前世の手取り金より多く金が入ってんだよ!!!

 ああああ!庶民のハズだよねぇ!?

 私、今は庶民だよねぇ!?


 いや、マンションビル持ちで庶民はないか。

 そーいやあのマンションビルの公開は来月だっけかー?

 うん、もう考えるのやめよ。

 …………生活を庶民的にすればいいんだ。


「まずはお買い得商品が分かるチラシチラシ~♪」


 お、スーパーの前にチラシ見っけ。

 ふむふむ、今日は肉じゃがとなめこの味噌汁だな。

 …前世気分でメニュー考えたけど、由香里さんに作ってもらわないといけないんだろうな…。

 お次は商品の確保とオバちゃん集団の仲間入りは…こんな子供は無理かなぁ…?


 カートを押しながら庶民気分に浸る。

 肉じゃがの材料となめこの味噌汁の材料は確保、ついでに調味料も買う。

 ………本当は明日とかを考えて魚や肉とかも買うんだけど冷蔵庫がないんだよなぁ…。

 それにフライパンとかもない。

 そこら辺も後日買うとしよう。


 …うん、買いたいものはもうない。

 あとはオバちゃん集団なんだけど…あー、3つあるなぁ…。

 会話を盗み聞きするか。



 ひとつめは…四人か…


「それでね、旦那が突然バカ高いお酒買ってきちゃってびっくりしたのよー」

「あらぁ、そうなのぉ?そういえばうちの旦那も高級なワイ…」


 リア充かよ。

 旦那の愚痴言えるのは幸せって事なんだぜ奥さん。

 個人的に旦那を褒める人やあまり話さないは大抵碌でもないからなー。

 かなりの偏見だけど、本当に仲良しな夫婦ってのはお互いを完全に理解し合っていないものだからねー。

 分からないから傍にいたい、分かりたいから。

 分かってしまえば続かない、そういう人だと愛が減っていくから。

 だからお互いに理解できないって愚痴が言えるのは幸せなんだよ。

 これ、前世で教えられた。

 ………………………結婚した奴等に…。

 結婚出来ない私に対する嫌味か!


 ………はぁ、せっかく可愛く転生したんだし、良い人と結婚したいなぁ…。



 まあいい、ふたつめは…あー…これは…


「あら、飯塚様、今日もとても綺麗ですわね」

「飯塚様、今日は…」


 はい、次。



 みっつめ…3人か…あれ?3人とも結構若いな…


「あー、また合コン失敗したわー」

「またぁ?」

「だってさー…」

「だってじゃないよ、どうせまた酒飲んで暴れたんだろう?酒は飲んでも飲まれるなって言うじゃない」

「うぅー…」


 よし、独身がいるグループか。

 さあ、私と庶民な会話をしようじゃないか。

 設定は小3にしよ。


「こんにちわ」

「…あら?こんにちわ、お使いかな?」


 真面目な感じのお姉さんって感じかな?

 目付きが悪いけど、この無表情で死んだ目な私を見ても普通に相手してくれるから良い人っぽいな。


「そんな感じです。…実は最近引越してきたばかりで…この辺の事知らないから優しそうな人に聞こうかなって…」

「へぇ、しっかりしてるねぇ…いくつぅ?」

「小3だから…8です!」

「ふーん、目が死んでるけど大丈夫ー?」

(ちょっとそれは言わないほうが…)


 あー、やっぱり気になるよねー。


「今は幸せなので大丈夫です!」


 不幸な過去って役に立つよねー。

 日陰には悪いけど利用させてもらうよ。


「っ!そ、そっか!あ、そうそう!この辺が知りたいんだよね?」


 分かり易い…。

 ま、過去の話ししたっていい事ないから話を戻そう。


「うん!教えてくれる?」

「おっけー!教えてあげよう!」



 という感じでお姉さん達と仲良くなりました!(意外と話が合って連絡先を交換する位には)

 いやぁ、前世があったから話を合わせれたから比較的楽なんだろうけど、私頑張った!

 連絡先は「友達、まだ一人しかいないし、気軽に話せる相手がいないから…」と無理矢理手に入れましたー。

 顔の筋肉の全神経を集中させて悲しそうな顔したらオドオドしていたなー。

 あ、3人の名前だけど…

 しっかり者の菊池(きくち)さん

 合コン失敗した谷中(やなか)さん

 元ギャルだという石川(いしかわ)さん

 3人は同じ会社の同じ部署に働いている同期なんだって。

 同じ部署に同性の同期がいるっていいよねぇ…。


 で、3人と別れた後に会計をしたら由香里さんが来てタクシーまで荷物を運んでくれた。

 沢山買ったから助かる。

 というかいつの間にタクシーが?

 ま、いいや。


 その後は由香里さんに買って来た食材で夕食をお願いして家に帰る。

 ………やっぱり最上階は高いなー。

 で、夕食を食べて(自分で作ってないからなんかこれじゃない感したけど作ってもらった以上文句はない)から冷蔵庫等を買いに行く約束をする。

 夕食が終わった今は1人の時間だ。

 とりあえず真っ先に盗聴や盗撮されていないかを確認して(なんとなく)から宿題以外やる事は特にないので宿題が終わって後はすぐに寝た。


 …一人暮らしは前世で経験あるから大丈夫だって思ったけど案外辛いなー。

 大人だからビールとかDVD鑑賞とかで夜も楽しめたけど、子供じゃビール飲めないし、早寝早起きしなきゃ学園生活がきついからなー。

 …ゲーム買ってやりたいけど由香里さんがいる間はきっと出来ないし(乙女ゲームをやる小1は…ね?)。

 明日はパソコンでも買いますか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ