あとがき
作品公開が2013年8月3日。それから途中2年の中断を経て、ようやく完結致しました。ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
多くの読者の方がいたからこそ、最後まで書ききる事ができました。重ねてお礼申し上げます。
この話は私の今までの作品の中で、もっとも多くのブックマークとポイントをいただいた、一番読者の多い作品です。そこまで愛して頂きながら、2年も中断してしまったのは申し訳なかったのですが、それでも最後まで楽しんで読んで頂けていたら嬉しいです。
3章と4章の間の2年も間があいた事と、大きな方針転換により、当初の雰囲気を楽しんでいた方々にご満足いただけるラストになったのか、不安もありますが、それでも最後まで読んでくださるった皆様に、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
この物語はアリアンローズ賞という公募の為に書きはじめました。その公募のテーマは「異世界で働く女性」だったので、何の仕事をする女性がいいか……と考えて、私が大好きな紅茶の仕事をする女性が書きたいと思って筆をとりました。(公募は2次落ちでした)
正直に申し上げれば異世界物は得意ではないのですが、自分の好きなお茶の話であれば、お茶愛だけで書き進められるかなと思いまして。
公募の条件に、締め切り時に一定文字数に達していない場合、今後の予定をプロットにして提出するというのがあったので、私の作品にしては「珍しく」初期のプロットが残っています。
「珍しい」というくらいプロットを作らないのもどうかと思いますが、今見返すと2章以降の展開がまったく違う。マリアの魔法や物語の終わりかた以外、プロットとの共通点を見つけるのが難しいくらいに全然違う話でした。
2章から当初の予定と、どんどん離れつつ盛り上がって行き、3章のラストは自分でも気に入る盛り上がりを見せて嬉しかったのですが、同時に予定とまったく違う物語であり、それでも物語の終わりかたを変える気はなかったので、どうやって予定の終わりに繋げていいのか、道を失ってしまいました。
さらに3章の皇室茶会でのマリアの活躍ぶりが凄過ぎて、これはパワーインフレだなとも思ったのです。日本一強い敵を倒せば、次は世界一、宇宙一……と主人公の力がどこまでもインフレしていくバトル話の如く、お茶世界最強のマリアの印象ができたので、ここからさらに活躍させる方法が思いつかなくなってしまったのです。
そこでつまったあと、色々ありスランプになり、そろそろ2年という頃、流石に不味いと焦りました。何人もの方から「続きを楽しみにしています」と応援のメッセージをいただいてるのだから、書けなくても書かなければと4章の前半を書きはじめました。マリアが一度実家に帰り、魔法の謎が明かされるのは予定通りだったので。でもその先はまだ真っ白でした。
昨年6月。長年の夢であったスリランカ旅行に行く事ができました。初海外でスリランカというと「なぜ?」と皆さんに言われるのですが、世界有数の紅茶生産国ですから。
しかも日本が輸入する紅茶のトップはスリランカ紅茶。日本とスリランカは意外に馴染みのある場所なのだと思います。その旅行体験はカンネのエピソードで生かされました。
旅行に行く前はお茶を「買う」「飲む」「売る」この視点だけで書いていましたが、生産地に行って「お茶を作る」為に多くの人が協力し、多大な努力の積み重ねで生み出されている事を知り、マリアの生涯の仕事がやっとわかりました。
物語の序盤、だらしのないヒモ男のジェラルドに、イライラされた方もいるでしょう。マリアとなぜ付合うのか未来が見えないと。でも……私が「バリバリのキャリアウーマンが求める理想のパートナー」は仕事に何も口出しせずに、そっと見守って、時には愚痴を聞いたり、背中を押したり、そんな友達のような穏やかな関係かな……と思ってこうなりました。
女性が恋と仕事を両立する事は非常に難しいですが、それでも不可能ではないですし、マリアのようにどちらも手にしたまま、幸せな生涯をおくれる女性が増えたらいいなと思います。
私のお茶好きの趣味をたくさんつめこんで、でも蘊蓄の押しつけでなく読者に楽しんでもらうにはどうしたらいいか? それをずっと考えて書いていました。今回は異世界物でしたが、また別の機会に、現代物で紅茶のお話を書きたいなと思っています。
最後にもう一度、読んでくださってありがとうございました。
連載開始時は、こんなにたくさんの方に読んで頂けると思っていませんでしたし、多くの読者に注目して頂ける作品ができて、本当に嬉しいです。
外伝や短編なども少しだけ書きたいと思っていますが、いつになるか未定なので、今はここで完結させていただきます。
斉凛より、読んでくださった皆様に感謝をこめて