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茶師の姫君〜異世界で紅茶事業を始めました〜  作者: 斉凛
第1章 ロンドヴェルム編
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プロローグ

「マリアはちゃんと言いつけを守るいい子ね。でももっとワガママ言っていいのよ」


 母は私をそう言いながら頭を撫でる。まあワガママ盛りの5歳時にしては、聞き分けがよすぎるかもしれない。

 でも仕方ないじゃない。



 だって人生二度目ですから。



 私はなぜか前世の記憶を持ったまま転生した。前世では日本のアラサー女子だったので、今更子供らしく振る舞えというのもどうしていいかわからない。

 でも今の両親の事は好きだから、精一杯子供らしく過ごしている。


「母上。ではお茶が飲みたいです」

「あらあら。困ったわね。夜お茶を飲むと眠れなくなるから、明日にしましょうね」


 子供には当然の忠告かもしれない。しかし納得いかない。前世では一日中がばがば茶ばかり飲んで過ごしていたが、ものすごく寝付きはよかった。

 私が不服そうに母を見上げると、母は困った顔をして微笑を浮かべた。


「少しだけですよ」


 父も母も長年待ち望んでやっと産まれた一人娘にベタアマである。大抵の無茶は聞いてくれる。でも待って欲しい。


「どうしたの?マリア」


 母が茶の用意をしようとした所を、私が必死に止めた。


「砂糖とミルクは入れないで」

「まあ! マリアはそのままで飲むと言うの?」


 この世界の常識なら砂糖とミルクを入れるのは当たり前かもしれないが、日本人としての前世の記憶がある私には、緑茶に砂糖とミルクは辞めて欲しい。

 紅茶にならいいけどこの世界には紅茶は存在しないのだ。


 そう、ここは地球とはまた違う異世界。私はガイナディア帝国という国の地方都市ロンドヴェルムの領主の娘に産まれた。

 何不自由のない生活と、優しい両親。美しい山と海に囲まれ、美味しい物も豊かで温暖な土地柄。恵まれた転生と言えるだろう。

 それでも一言文句を言いたい。



 紅茶のある世界に転生させて欲しかった。



 この世界に私を転生させたあの3婆達にまた会えるなら、そこだけは文句を言いたい。小さい事と言わないで欲しい。

 私は無類の紅茶好きなのだ。

 前世では紅茶の輸入販売の仕事をしていた。好きを仕事にしてたから仕事漬けの毎日さえ楽しかった。戻れるならあの世界に戻りたい。


 紅茶と仕事を下さい。


 5歳児にしてワーカーホリックである。

 この物語は紅茶狂の一人の少女が、悪戦苦闘しつつ紅茶を作り出し、そのついでに恋愛なんかしたりしなかったりする物語である。


 ……たぶん。

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